「……うう」
「……俺は別に、貴女に対して何か報復をしたいわけじゃないです。私刑をしてしまったら、俺は正義を振りかざすだけの屑と同じになってしまう」
その言葉は、仲正さんにとっては傷口に塩レモンを擦りつけるような感覚だろう。
でも、違う。
「貴女を責めたいわけじゃないんです。この世界に来た理由もわからない人間で……もしかしたら、遭難で死んでたりしたかもしれない。そういう意味では、人のいる場所に転移したの僥倖でした」
「そん、な……そんなこと、ないですよ……だって、私が」
「撃った瞬間には、俺がそこにいた。一瞬の出来事です。人間が瞬時に反応できる時間は、約0.1秒。それよりも短い……もしくは事柄が起きる前なんて、反応もクソもないですから。仲正さんは決して悪くない」
それでも、仲正さんは自分のしたことを「罪」という形にしてしまっている。それは、彼女の持つ信念、正義感ゆえだろう。
「……それでも、仲正さんが自分を赦さないというのなら……うーん」
自己嫌悪の癖がかなり酷いのか、今も俺とは目を合わせようとしない。ずっと、意識の底にある「罪」が尾を引いているのだろう。
「あ、そうだ」
「……なんですか?」
聞こえたのは、震えた声。これから断罪されるのかという恐怖からなのかはわからないが、俺はそんなことはしない。
「俺、急にここに来て入院して……まあ、当然ですけど住居がなくて」
「はあ……」
そもそもキヴォトスに不動産とか空き家があったとしても、未成年で契約をしたことがない俺はカモになってしまう。そんなことは避けたい。
「というわけで、仲正さん……イチカさんの家に住まわせてもらってもいいでしょうか?」
「へ……?」
「一緒に暮らしましょう」
「あ、いや、言い直さなくても言ってることはわかるんですよ。な、なんで「一緒に住む」に行き着いたんすか……?」
……口調が変わった?こっちが素か。
「いや、家ないし丁度いいなって」
「そんな軽い気持ちで!?」
「……あれ、ダメだった?」
「ちが、ダメじゃなくて……その、家に来るのも全然OKで……」
そのまま、イチカさんが口ごもる。人差し指どうしを合わせて。……この仕草、ほんとうに存在するんだな。漫画の中の話かと。
「……でも、私が多々良葉さんと一緒にいてもいいのか、不安で……」
なんだ、そんなことか。
「本当に怒ってたら、こんな提案しませんし貴女を赦してませんよ。イチカさんが俺の人となりを知って、本当に罪を償わせる必要が無いってわかるまで、俺は貴女のそばを離れるつもりはありません」
「なっ……!?」
「だから、一緒に暮らしましょう」
あれ、顔が赤いぞ。言葉選びミスったか?
主人公はクソボケです。