仲正イチカはトラウマを克服できない。   作:ただねこ

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多々良葉風楽は銃を買う。

「ここがトリニティの中でも大手のガンショップっす。私の銃や正実の皆の銃はここで調達してるから、信頼できるっすよ〜」

 

戸を開け、中に入る。中には数多の銃が飾られており、弾薬も沢山ある。こういったガンショップは、キヴォトスにはありふれているものと聞いていたが……ここはやはり、かなりの規模だ。

 

「お、イチカちゃんか。メンテナンスはまだだったと思うけど……」

 

「今日は……風楽さんの銃を見繕いに来たんです。反動の少ない銃ってありますか?」

 

「ふむふむ……風楽くんだね。君の持ってるそれは……イチカちゃんの予備銃か。よし、こんなのとかどうだい?」

 

差し出されたのは、スナイパーライフル。……これ、見覚えがある気がしなくもない。

 

「……ひいじいちゃんが昔使ってた銃?」

 

「そうなんすか?」

 

「いや、見覚えがあるというか……記憶の中で朧げなんだよね」

 

ひいじいちゃんは軍人で、2階級特進した人だった。その時に置いていった銃が、今も家に残っていたはずだ。確かこんな形をしていたような気がする。空似のようなものだろうか?

 

「……とりあえず、撃ってみるかい?」

 

「はい……」

 

「こっちだよ」

 

 

・・・・・

 

 

案内されてきたのは、試射場。50m先に的があり、その的は結構大きい。

 

「っと……意外と軽いな?」

 

「その銃は反動が小さくなってるが、その代わりに相当軽くなっててな。まあ、威力はないが射程があるし、牽制として使えるはずだ」

 

息を整える。ゆっくり、ゆっくり。「銃を撃つ」という行為そのものが初めてだったから、少し腕が震えている。……本音を言うと、ちょっとだけ怖い。

 

「──大丈夫っすよ」

 

それでも、そっと肩に置かれたイチカさんの手が、妙に安心感を生んでいた。

 

銃声が鳴る。鼓膜が弾け飛びそうだけど……なんとか耐える。思いの外すぐに着弾したようで、的からは……外れてしまった。

 

「あ、でも初めてにしてはそんなに逸れてないっすね。意外と才能あったりするんすかね……?」

 

「血縁に軍人が居るってのもあるんかねえ……で、どうだ兄ちゃん。買ってくかい」

 

……この銃は、妙に手に馴染んだ。黒いボディに若草のLINEがよく映えて、春を知らせるウグイスのような感じがする。

 

「……ほしいな」

 

「そうっすか!店主さん、お会計お願いします!」

 

「あいよ!」

 

 

・・・・・

 

 

結局お金は持ってなかったからイチカさんに払ってもらって、店を出た。

 

「そういえば、名前つけないんすか?」

 

「名前?」

 

「キヴォトスの皆は、愛銃に名前をつけるんす。私のは「レッドドラゴン」!カッコいいっすよね〜」

 

……名前。考えたこともなかった。自分のものに名前をつけるなんて。

 

よほど、銃というものが生活と結びついている証拠だな。

 

にしても、名前か。……ウグイス。えっと、確かウグイスは英語で──。

 

「ナイチンゲール」

 

「え?」

 

「この銃の名前。今つけた」

 

「えっと……うぐいす、でしたっけ?」

 

「うん。なんだか、この緑のラインが若葉みたいでさ。今の季節、春でしょ?春を知らせる鳥っていったらウグイスだし」

 

「……いい名前っすね!」

 

「……ありがとう」

 

新たに生活の一部へと加わった「ナイチンゲール」をお供に、日用品を買いにショッピングモールへ向かった。

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