「……あの」
「……うん」
「男物が少なすぎやしませんか?」
「ごめんね……ほんと」
……多々良葉風楽は戸惑っていた。キヴォトス……トリニティに売っている男物の日用品、洋服が少なすぎることだ。基本的にトリニティはお嬢様が集まる場所だ。
必然、女子が多くなる。
トリニティ自治区の端の方に行けば多少はあるが、それでも徒労に終わる可能性が高い。彼の背丈は160cm程度であり、大人とはいえない背丈だ。大人ものを着るわけにもいかない。
多々良葉風楽は男である。
男性の洋服が少ないとなると、必然的に──
「……風楽さん」
「……はい」
「……その、もしよければ……私の服とか……」
「わー!わーー!」
「……っすよねぇ……やっぱ恥ずかしいんすか?」
「当たり前ですよ!!好き好んで女装とか……」
……嘘。本当はちょっと気になってる。
「……下着も、売ってないっすから……日用品自体は買えたし、一旦家に行きますか?」
「……はい」
結局、服は買わなかった。
・・・・・
現在、イチカさんの家。……やばいこころなしかいい匂いが……。
「……とりあえず、今は風楽さんが来た時の服でいいっす。でも、替えの服が……」
「……どうしよう」
「着ます?」
着……たい気持ちはあるけど。それはそれとしてその……イチカさん、服捲るのやめてくれませんか!?!?!?
「……い、や。えと、その……」
一瞬見えた彼女のすらりとしたお腹に、しどろもどろになる。顔も赤いと思う。
「……あっ、ごめんなさいっ!?」
「いえ、全然だいじょうぶです!?」
……お互い真っ赤になってしまった。
「ふう……とりあえず!私の私服、あんまり、その。女の子っぽくなくて。多分風楽さんが着ても問題ないと思うから!!」
「……えっ」
「だから、その……わ、私の服着ていいっすから!」
「女の子がそんなこと軽々しく言っちゃダメでしょうが!?」
「いやでも、それしかない……」
「俺の理性が無理だって!!」
「……え?」
「……あ」
やっちゃったやっちゃったやっちゃったやっちゃったやっちゃったやっちゃった。
あーこれ絶対嫌われたじゃん……同い年の女の子にセクハラとか何やってんだ俺……。
ほら、もっと顔が真っ赤になっちゃったよイチカさん。どうやって責任をとろう……。
「風楽さん」
「はいっ!?」
「……私は……別に嫌じゃないっすよ?」
あっまってそんな上目遣いなんてされたら──
「……あれ?固まっちゃった?……おーい?おーい!?……もしや、気絶した?嘘、え、私やりすぎちゃったっすか……?」
俺の意識はそこで途切れた。
・・・・・
「……結局、こうなるんだなぁ」
俺が着ているのは、イチカさんの服。ああ、いい匂いだなあ……ははは。