「おはよう、イチカさん。朝ごはん出来てるよ」
「おはよっす、風楽くん……っえ?えっと、ごはん作っててくれたんすか……?」
彼が私の家で暮らし始めて、3日。風楽くんを撃ってしまったことに関しては、「気にしなくていい」と言ってくれた。それでも、まだ負い目が残っている。素の私で接してほしいと言われたので、素の自分で接しているが……はたして、いいのだろうか。いや、絶対によくはない。彼の優しさに甘えているだけじゃあ、絶対にだめだ。
「うん。名目上は保護されてるんだし、あまり外を出歩けないし。……それに、イチカさんにはこれから世話になるから、何か恩返しできないかなって」
「……そりゃあ、願ってもないことっすけど……でも、料理は私がやるっすよ!」
「そしたら、洗濯やりますよ」
「いや、洗濯は……その、下着とか見られたくないから私がやるっす!」
「そしたら掃除……」
「掃除もやるっす!風楽くんは居るだけで大丈夫っすから!」
彼の優しさは、多分先生と同じタイプだ。無償の愛とでも呼ぶべき、博愛。
風楽くんや先生のいた”キヴォトスの外”からしたら、私たち生徒の容姿はかなり整っていると聞いた。
それなのに、彼から邪な視線や欲は全くと言っていいほど見えない。私でも時たま”そういう”時があるというのに、彼がそういうことをしたような痕跡は残されていなかった。
……勝手に私生活を覗き見ようと画策したことは悪く思っている。それでも、ほんの少しだけ気になってしまった。
「……イチカさん」
「ん?ごめん、考え事してて聞いてなくて……」
「せめて、料理くらいは役に立ちたいです。イチカさんは正義実現委員会のほうで忙しいし、ツルギさんが「朝ごはんを食べる時間が取れていない」って言ってましたし。だから、ちょっとしたメイドみたいな感じでいいので」
「……風楽くん」
”風楽くん”という呼び方も、彼が私と歩み寄って、心を通わすために考えてくれたことだった。何事も小さなことの積み重ね。少しづつ心を通わせていけば、私の抱えている罪悪感も晴れていくだろう。そういった希望を抱いてのことだった。
──それなのに私は、”キヴォトスの外の人だから”。”私が撃ってしまったから”。”罪を償わなきゃ”なんて……過保護に、檻に閉じ込めようとしていた。……彼の良心を無碍にしてしまうところだった。
「……ごめんなさい。料理は……申し訳ないけど、お願いするっす。掃除も……キッチンとか、ベランダとかそういったところを。洗濯は……下着以外なら大丈夫っす」
「……!!ありがとう、イチカさん!」
「……ふふ」
そういえば、彼の笑顔は初めて見たかもしれない。……どちらかというと、可愛い系だろうか?「嬉しい」を全面に出してくるような、純粋な『歓び』。……気づけば、笑っていた。
「……ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
「それじゃあ……改めてお願いします、風楽くん」
「承りました、イチカさん!」
トリニティに私がいても、許されるのかわからない。すこしだけ、こわい。それでも黒いセーラー服に身を包んで、家を出た。
……R18欲しい?