遠方の軍艦。
煙の向こうから戦場を見つめる影がある。
センゴク。 モンキー・D・ガープ。 ゼファー。
かつて同じ時代を駆け抜けた男たち。
センゴクが低く呟く。
「これは……国家か?」
誰も答えない。
だが答えは目の前にある。
アトランティス海賊団の統率。 エースとルフィの意志。 そして遠方でなお立つ、エドワード・ニューゲートの残影。
世界政府が想定した戦争ではなかった。
本来なら、処刑は終わり、海賊は壊滅しているはずだった。
だが今、戦場を支配しているのは――
意志と連携。
赤犬は拳を振るい続ける。
だが流れは変わらない。
海兵たちの間に動揺が走る。
「……押されている?」
その事実は、世界の常識を揺るがす。
ガープが腕を組み、静かに言う。
「若いな……だが、強い」
センゴクは目を閉じる。
歴史が動いている。
個の暴力が支配する時代から、 意志の連鎖が均衡を作る時代へ。
砦は崩壊し、炎柱が空を裂く。
その中心に立つのは、兄弟と幹部。
赤犬の拳が止まる。
完全ではない。 だが、決定打ではなくなった。
世界政府は認めざるを得ない。
この戦場の均衡は―― 個を超えた意志によって作られている。
煙が晴れる。
炎の柱がゆっくりと消える。
だが、その残光は世界中に刻まれた。
アトランティス海賊団。 兄弟の決意。
それはもはや一戦の勝敗ではない。
世界を揺るがす存在。
歴史はここに、新たな章を刻む。
戦争は終わらない。
だが、この日――
世界は知った。
真の力とは、 拳の大きさではない。
意志の連鎖であると。
炎の残光が消えかけた頃。
それでもなお、海は煮え立っていた。
砦の中央で、サカズキはゆっくりと立ち上がる。肩から溶岩が滴り落ち、地面を溶かす。
「……終わらせる」
その声に迷いはない。
彼にとって正義とは“秩序維持”ではない。 徹底排除だ。
両腕が完全にマグマへと変わる。
空が赤く染まる。
「流星火山(りゅうせいかざん)」
無数の巨大な溶岩塊が空へ打ち上げられた。
それは戦場全域を覆う殲滅攻撃。
「全隊、防御陣形!!」
フロムが即座に指示を飛ばす。
ドラクスが盾を展開。 ゼロが上空に多層氷壁を形成。 アルバードが気流を制御し、落下軌道を分散。
スカンディナビアが大地を隆起させ、 巨大な岩盤ドームを作り上げる。
ルシフォルドの炎翼が空を焼き、 落下速度を鈍らせる。
ヴィーナスが負傷者の治癒を優先。
完璧な連携。
だが。
一つだけ足りない。
突破力。
「エース」
静かに名を呼んだのはオルディーニス。
覇王色が収束する。
「貴様の炎で、空を割れ」
エースは拳を握る。
隣に立つのは、モンキー・D・ルフィ。
「兄貴、やれ」
その言葉に、迷いはなかった。
エースの炎が変わる。
広がる炎ではない。
一点収束。
純度を極限まで高めた白炎。
「炎帝――」
炎が天へ伸びる。
流星火山と衝突。
空が、割れた。
巨大な爆発。
衝撃波が海を二分する。
落下軌道が崩れる。
殲滅は、失敗した。
戦場が静まり返る。
赤犬は理解する。
これは単なる海賊の反抗ではない。
思想対思想の戦争だ。
「……貴様らを生かせば、世界は割れる」
低く呟く。
そして。
一瞬の判断。
標的を変えた。
狙いは――
ルフィ。