頂上戦争   作:ミカ

18 / 26
王の追憶~原点~

 

妹を賭けた――

あの男との戦い。

 

---

 

# 王の追憶 ― 海賊王との死闘

 

若き日のネレウスは、まだ王ではなかった。

 

ただ、力を持つ男だった。

 

そして妹――

ポートガス・D・ルージュを守る兄だった。

 

---

 

## 出会いは最悪だった

 

港町の酒場。

 

嵐の前触れのような男がいた。

 

赤い外套を翻し、豪快に笑う。

 

ゴール・D・ロジャー。

 

ネレウスは一目で悟る。

 

「危険だ」

 

強さではない。

 

“流れ”を変える男だと。

 

その視線の先に、ルージュがいた。

 

笑っていた。

 

あの男に。

 

その瞬間、ネレウスの覇気が空気を裂いた。

 

酒場の床が軋む。

 

ロジャーは笑みを深める。

 

「兄貴か?」

 

「そうだ」

 

「なら、挨拶は拳でいいな」

 

---

 

## 宣戦布告

 

ネレウスは冷たく言った。

 

「妹に近づくな」

 

ロジャーは即答する。

 

「断る」

 

静寂。

 

次の瞬間、覇王色が衝突する。

 

天井が砕け、空が割れる。

 

周囲の海賊は一瞬で気絶した。

 

ルージュだけが立っている。

 

二人を見ていた。

 

---

 

## 海を割る戦い

 

舞台は沖合へ移る。

 

海上。

 

船もいらない。

 

二人は波の上に立つ。

 

ネレウスは海を従え、

 

ロジャーは剣を抜く。

 

初撃。

 

海が縦に割れた。

 

覇気と覇気がぶつかり、雷鳴が走る。

 

ロジャーの一閃は重く、速く、真っ直ぐ。

 

ネレウスの水圧は巨大で、柔軟で、絡め取る。

 

互角。

 

いや、紙一重。

 

ロジャーは笑う。

 

「楽しいな!」

 

ネレウスは笑わない。

 

「遊びではない」

 

「命を賭けている」

 

ロジャーの目が変わる。

 

本気になる。

 

空が裂ける。

 

雲が吹き飛ぶ。

 

数時間に及ぶ激突。

 

互いに血を流し、立ち続ける。

 

決着は、わずかな隙。

 

ロジャーの剣がネレウスの肩を裂く。

 

同時に、ネレウスの水刃がロジャーの脇腹を抉る。

 

両者、膝をつく。

 

沈黙。

 

波だけが揺れる。

 

---

 

## 勝敗なき決闘

 

ロジャーが先に立ち上がる。

 

だが剣を下ろした。

 

「俺は奪わねぇ」

 

ネレウスは睨む。

 

「何をだ」

 

「妹さんを」

 

ロジャーは真っ直ぐ言う。

 

「俺は選ばれたいだけだ」

 

「賭けじゃない」

 

ネレウスは拳を握る。

 

だが理解する。

 

この男は奪う男ではない。

 

選ばれる男だ。

 

「もし妹が泣いたら」

 

ネレウスの声は低い。

 

「次は殺す」

 

ロジャーは笑う。

 

「ああ。その時は全力で来い」

 

---

 

## ルージュの答え

 

浜辺。

 

ルージュは二人を見ていた。

 

血だらけの兄と、傷だらけの男。

 

「兄さん」

 

「私、賭けられてないよ?」

 

その一言で、ネレウスは凍る。

 

「私は物じゃない」

 

ロジャーが吹き出す。

 

「だとよ」

 

ネレウスは深く息を吐く。

 

「……分かっている」

 

守ることと、縛ることは違う。

 

その違いを、妹に教えられた。

 

---

 

## 王になる理由

 

その夜、ネレウスは決めた。

 

奪われない力を持つと。

 

誰にも。

 

世界政府にも。

 

天竜人にも。

 

妹の選択を否定させない力を。

 

それが後の“王”ネレウスの始まりだった。

 

---

 

## そして現在

 

戦争を経て。

 

エースは生きている。

 

あの時、ロジャーを殺していたら。

 

ルージュを縛っていたら。

 

この未来はなかった。

 

ネレウスは海を見つめる。

 

「ロジャー」

 

あの死闘は、敗北ではない。

 

理解だった。

 

妹は賭けの対象ではない。

 

意志を持つ存在だった。

 

そしてその意志は――

 

ポートガス・D・エースへと繋がった。

 

王は静かに呟く。

 

「俺は守る」

 

奪うのではなく。

 

縛るのでもなく。

 

選ばれた未来を、守る。

 

海は荒れていない。

 

だがあの日の衝突は、今も空に刻まれている。

 

ロジャーと殺し合った日。

 

妹を賭けた、若き愚かさ。

 

そして理解へ至った日。

 

それが王の原点だった。

 

――追憶、了。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。