頂上戦争   作:ミカ

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第三章:炎の恩人

風が静かに戦場を撫でる中、回想は静かに始まった。

少年は濁流に呑まれそうになっていた。水の勢いに翻弄され、手足は震え、絶望の声が漏れる。だが、赤い髪の女性――ルージュがその少年を抱き上げる。胸に息を整えさせると、深く目を見つめ、静かに言った。

「あなたは家族を守る子。だから生きなさい」

少年の胸に刻まれた恩義は、その時まだ理解できない力だった。だが、この小さな命の恩人の存在は、未来で大きな炎を生むことになる。彼の心には、誰かを守るための意思が芽生えた瞬間だった。

――現代。

戦場の片隅で、沢田綱吉は静かに周囲を見渡していた。砲撃が飛び交い、海兵が群れをなして動く中で、彼の心は回想の景色に飛ぶ。

「この戦争、誰のために戦っているんだ……」

目の前で、白ひげ海賊団が突入する。だが、それ以上に圧倒的な存在感を放つのは、すぐそばに立つアトランティス海賊団の船長と幹部たちだった。

ザナギアスは双剣を振り、前線に切り込みを入れる。

リヴァルの巨体が砦の壁を揺るがす。

オルディーニスの覇王色が空気を震わせ、戦場全体を圧する。

ルシフォルドの炎翼が空を覆い、ゼロの氷と光の結界が進軍を封じる。

戦場は、単なる戦闘の場ではなく、「守るべき者を守る戦場」へと変化していった。

綱吉は拳を握り、思わず口を開く。

「…ルージュさん、あの時の恩を、俺は無駄にしない!」

その声は戦場に届くことはない。しかし、彼の胸の炎は確かに燃え上がった。エースが戦場で覇王色を発動する瞬間、彼の心の炎も共鳴する。

戦場の片隅で、幹部たちが静かに連携を始める。

ザナギアスはフロムと目を合わせ、突破ルートを確認。

リヴァルとアルバードは前線を押し広げるための合図を送る。

オルディーニスは戦況を俯瞰し、ゼロとルシフォルドに指示を出す。

ヴィーナスとスカンディナビアは後方で負傷者の手当を始める。

小さな手で治癒の魔法を繰り出すヴィーナスの眼差しには、慈愛が宿る。

この瞬間、戦場の時間は二重に流れた。

一つは、世界政府の想定した戦争。

もう一つは、誰かを守るために生きた者たちの意思の戦争。

そして少年の記憶と、今戦う者たちの意思が、戦場で静かに重なる。

「生きるために、守るために、戦う」

綱吉の心の炎は、まるで戦場の空気を変えるかのように揺らぎ、エースの覇王色の火柱と共鳴した。

それは戦場の中で、静かに、しかし確実に、次代の王たちの誕生を告げる鐘のようだった。

 

 

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