頂上戦争   作:ミカ

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第七章:炎と溶岩の臨界点

砦の空が裂けていた。

溶岩の雨が降り注ぎ、海は蒸発し、空気は焼け焦げる。
その中心に立つのは、海軍本部大将――サカズキ。

「正義は、退かん」

低く唸る声とともに、大地が再び隆起する。
地中から噴き出すマグマが、砦を包囲する円環を描いた。まるで逃げ道を断つ檻。

対するのは、炎を纏う男――ポートガス・D・エース。

鎖は断ち切られた。
だが、解放とは同時に“標的”になるということでもある。

赤犬の瞳が細まる。

「貴様が生きる限り、時代は濁る」

その瞬間、溶岩が奔流となって一直線に襲いかかる。

――速い。

質量も、温度も、破壊力も、桁違い。

だが。

「させねぇ!!」

横合いから割って入る影。

麦わら帽子を握りしめた少年――モンキー・D・ルフィ。

ゴムの身体が限界まで伸び、溶岩の軌道を強引に逸らす。
焼ける。皮膚が焦げる。だが退かない。

「エースは俺の兄貴だ!!」

その叫びが、戦場を震わせる。

溶岩が弾け、爆炎が広がる。
だが、そこへ同時に風が巻き上がった。

アルバードの突風が熱を分散させ、ゼロの氷結界が流路を変え、ルシフォルドの炎翼が上空から溶岩弾を迎撃する。

アトランティス幹部たちは一瞬の乱れもない。

オルディーニス・カタストロフィは静かに目を閉じる。

覇王色が、再び戦場を覆う。

それは威圧ではない。
支配の再定義。

赤犬の“絶対正義”という思想圧力に対し、
“生存と連携の秩序”をぶつける。

空気が震え、海兵たちの膝が揺らぐ。

赤犬は奥歯を噛み締めた。

「……戯れ言を」

両腕が完全に溶岩化する。

次の瞬間――

巨大な火山の顎が開いたかのように、超高密度のマグマ塊が形成される。

「大噴火(だいふんか)」

空間ごと焼き尽くす、極限の一撃。

それはもはや拳ではない。
“災害”そのもの。

エースは前へ出る。

ルフィが叫ぶ。

「無茶すんな!!」

だがエースは振り返らない。

炎が、静かに変化していた。

激情ではない。
爆炎でもない。

芯のある炎。

「俺は逃げねぇ」

足を踏みしめる。

その背後で、ザナギアスとリヴァルが構える。
スカンディナビアが地形を操作し、衝撃の流れを分割する。
ヴィーナスが負傷兵を下げ、フロムが全体の陣形を再計算。
ドラクスが盾を構え、前線を固定。

すべてが、エースの“覚悟”に同期する。

赤犬の溶岩が落ちる。

衝突。

世界が白く弾ける。

轟音が遅れて到達する。

マグマと炎が噛み合い、押し合い、削り合う。

赤犬が押す。
圧倒的な熱量。
炎を飲み込む質量。

だが、その炎は消えない。

「……血なんて関係ねぇ」

エースの声が、爆音の中で響く。

「俺は、俺の意思で生きる!!」

炎が収束する。

拡散していた火が、一点へ。

まるで槍のように鋭く、純度を増す。

その瞬間。

オルディーニスが覇気の圧力を“解放”した。

戦場全域に張り巡らされていた統率の糸が、
一点に集約する。

幹部たちの力が、エースの炎へと流れ込む。

赤犬の瞳が見開かれる。

「……なに……!?」

炎が、溶岩を押し返す。

純粋な熱量ではない。

意志の密度。

溶岩の奔流に亀裂が走る。

ルフィが歯を食いしばり、拳を握る。

「いけぇぇぇぇ!!!」

その叫びに呼応し、炎が爆ぜた。

巨大な爆発が上空で起きる。

衝撃波が海を割り、雲を吹き飛ばす。

そして。

煙が晴れた時――

赤犬は数歩、後退していた。

わずかだが、確かに。

戦場が静まり返る。

海兵たちが凍りつく。

大将が、押された。

赤犬の肩から、溶岩が滴る。

その表情は怒りでも焦燥でもない。

「……そうか」

低く呟く。

「貴様らは、群れではない」

視線がエースとルフィへ向く。

「思想だ」

エースは息を荒げながらも立っている。

ルフィが隣に並ぶ。

兄弟が肩を並べる。

背後には、国家のように整然と構えるアトランティス幹部。

遠方では、白ひげの薙刀が再び振り上げられる。

時代が、軋む。

赤犬はゆっくりと拳を構え直す。

「ならば――正義もまた、思想で貫くまで」

マグマがさらに濃く、赤黒く煮え立つ。

次の衝突は、
単なる攻防では終わらない。

絶対正義と、兄弟の意志。

その臨界点が、今まさに破裂しようとしていた。

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