名探偵プリキュア! 〜そよ風が幸福を運ぶ〜   作:ゆぐゆぐ

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知り合いの作品が皆めっちゃくちゃに評価されまくってて嫉妬の舞()

ただ、いつも私の作品にお気に入りしてくれる方もいらっしゃったりして、大変励みになっております……。


#11 奇跡のプリキュア

 

「「オープン! ジュエルキュアウォッチ!」」

 

「「プリキュア! ウェイクアップタイム!」」 

 

「どんな謎でもはなまる解決! 名探偵キュアアンサー!」

 

「重ねた推理で笑顔にジャンプ! 名探偵キュアミスティック!」

 

「「名探偵プリキュア!」」

 

「私の答え、見せてあげる!」

 

 プリキュアに変身したアンサーとミスティック、戦闘態勢に入ったジャック・スパイダーは2体のハンニンダーを睨む。

 前回の戦闘からして、スパイダーはともかくアンサー達が息の合ったコンビネーションを魅せなければ、このハンニンダーを倒すことはまず難しいだろう。何せ向こうがその連携を上回っているのだから。

 

「行け、ハンニンダー!」

 

『ハンニンダー!!』

 

 ニジーの合図により、戦闘開始。

 1体のハンニンダーが地上のプリキュア目掛けて突進し、もう1体は──その場から動いておらず、一面に広がる海水を見つめている。

 

「「はあっ!」」

 

 二人は息を揃えて空中へ回避する。

 

「っ、違う!」

 

『ハンニンダーッ!』

 

「「っ!?」」

 

 その回避は、物の見事に誤算だった。

 もう1体のヤツは、空中で隙だらけになる瞬間を捕えていたのだ。

 攻撃をまともに喰らったアンサーとミスティックは、そのまま海水に落下していく。

 空中や水中では当然、動きは鈍くなり行動範囲を封じられる。

 この場所を戦場にしたのも、ちゃんと策があってのものだったようだ。

 

「クソッ──!」

 

 何故、こんな簡単な策を見破れなかったのか、とスパイダーは後悔し、捕縛布を投げ二人を救助しようとする。

 ──だが、それは杞憂のようだった。

 

「「はあああああっ!」」

 

 海面が紫に光り出した瞬間、二人はプリキットライトで足場を作って脱出し、上空を駆け上がっていく。

 

「足場を作ったと言うのか!?」

 

「……フッ、やりやがる」

 

 海に放り出された後、瞬時に危機的状況を脱する事が出来たとは、今回は頭が冴えているようだ。

 

「アンサーアタック!」

 

 溜め込んだエネルギーを握った拳に集中させ、ハンニンダー目掛けて殴り飛ばす。

 

「ミスティックリフレクション!」

 

 アンサーの隙を狙って迫ったハンニンダーの猛追を、ミスティックが展開したバリアで阻止する。

 

「はあああ──っ!!」

 

『ハンニンダーッ!?』

 

 カウンターを喰らったハンニンダーが吹き飛ばされ、海に沈んでいく。

 アンサーとミスティックは足場から堤防に佇むニジーを見下ろした。

 

「マコトジュエルを返して!」

 

「ツバメの像を返しなさい!」

 

「……ハハハ、まだ幕は上がったばかりさ」

 

 ニジーが指を鳴らした瞬間、2体のハンニンダーが大きく飛び上がる。

 眩い虹色に輝く光と共に、二つのシルエットが重なっていく。

 

『ハンニンダーッ!!』

 

 やがて1体のハンニンダーへと合体を遂げた。

 

「力を合わせるとは、こういうことさ!」

 

 真っ直ぐアンサーとミスティック目掛けて接近する。動きは単調だが、明らかに加速力が二倍に増している。

 大きくなった身体で攻撃範囲が広くなったこともあり、二人にとっては足場を使って避けるので精一杯だった。

 

「「……っ!」」

 

『ハンニンダ──ッ!!』

 

 追撃。

 大きく広がった両翼から、禍々しい漆黒の羽がアンサーとミスティックを襲う。

 足場が次々に壊されていき、抵抗する術もなく彼女達は砂浜へと叩きつけられた。

 そんな二人を嗤うかのように、雷鳴が轟く。

 

「また一雨来そうだね。この空はまるでキミたちの心を写しているかのようだ」

 

 勝利を確信したニジーが、こちらを見下ろすようにしながら口元を歪める。

 

「おい、俺は蚊帳の外かよ」

 

「決してキミを無視していたわけではないさ。ただ、邪魔なプリキュアを排除することがボクの第一の目標だったわけだからね。無論、次はキミを倒す」

 

 ──二人は、今ので体力を消耗したか。

 ならば、とスパイダーは再び戦闘態勢に入った、のだが──

 

「みくるに、傘を届けに行ったんだ」

 

「えっ──?」

 

 静かに呟くアンサーの声を耳にして、彼は動きを止めた。

 

「そしたら、友達といたみくるを見て……邪魔しちゃダメだって。でも何よりも思ったの……この時代で、この世界で、わたしは独りぼっちなんだって……!」

 

 言葉を連ねる毎に気持ちが堪えきれなくなり、ついには彼女の目に涙が溢れていた。

 

「だから、私一人で調査して……ごめんね」

 

「……っ!」

 

 ミスティックは、思いつきもしなかった。

 嘘で覆われた世界を阻止するために自分のことを後回しにした彼女を、勝手に強い子なのだと思い込んでいた。

 だが、現実は違っていた。意図せず別の時代に飛ばされ、どうするべきかも分からず彷徨っていた彼女にとって、小林みくると久遠祥太は唯一の身近な存在で依存する以外の選択肢が許されていなかったのだ。

 

「そうだよね……1999年に、この時代に来て……心細いよね。不安だったよね。なのに、私……!」

 

 なんとか地面に手をつき、アンサーの方へと手を伸ばそうとするも、やはりその場に倒れ込んでしまう。

 

「私こそ、ごめん……!」

 

「ミスティック……」

 

 ミスティックも、同じくして涙を流していた。

 当然のようにして、気持ちは通い合っているということだ。

 

「さて、そろそろショーも終わりの時間だよ。プリキュア……!」

 

 そうした懺悔の時間を奪うようにして、敵が無慈悲な宣告をしてきた。

 それがブーメランとして、敵側にも邪魔が入ってくることも知らずに──。

 

「ポチ〜!」

 

 学校での戦闘時と同じ光景。

 声をした方に振り向いてみれば、今まで姿を見せなかったポチタンとジェットが、そこに存在していたからだ。

 

「ここで登場か、ベイビー妖精⋯だが、舞台には上げないよ?」

 

「あいつら……!」

 

 何故ここに来たんだ、という眼差しを向けるも無慈悲に、ハンニンダーは先ほどの禍々しき無数のエネルギーを放出させる。

 プリキュアでも受けきれなかった攻撃を、力のない者が被弾すれば致命傷になりかねない。

 あれこれと考えている場合ではない。スパイダーは単身で飛び出したポチタンを護ろうと駆け出して行く。

 

「ジェット君は……どうにか耐えろよ……!」

 

「おっとこれは都合がいい。キミもろとも退場してもらおうか!」

 

 無数のエネルギーはポチタンに向けられた。ソレが接近する直前にスパイダーがポチタンを抱えたことで、何とか直撃は免れそうだが、代わりにスパイダーの背中が犠牲を負うことになる。

 ──致命傷は妨げられないが、俺は俺でどうにかするしかない。

 

アルカナスターレイン

 

 そうして瞼を閉じた瞬間。

 紫色の閃光が数多に伸びていき、一瞬にして無数のエネルギー弾を亡き者にした。

 

「ぐっ……!」

 

 バランスを崩したスパイダーはポチタンを抱えながら砂浜を転がっていき、海に放り出される直前で止まった。

 

「……無事か?」

 

「ポチ!」

 

 いつものように、というより、いつしか元気を取り戻していたポチタンが返事をしたことで安堵する。

 

「さっきの技、まさか……」

 

 出処を探るべく振り向くも、ジェット以外は誰もいない。ただ、そこにいたはずの誰かの痕跡だけが残されていた。

 

「そんなはずは……ないな」

 

 ただ、それでも。

 ──トクン。トクン。

 心臓の鼓動が、この時だけいつもよりも早く感じていた。

 

「……明智、小林。二人にもう一つ伝えておきたいことがある」

 

 そんな中で身体を起こし、服に付いた砂を払ったスパイダーは、ポチタンを小脇に抱えながら二人に近づいていく。

 

「……俺は二人を実質探偵としては認めていても、名探偵にはなれないと思っていた。もっとも、困った人達を助けるなんて意気込み出してから、本当に名探偵という逸材になれるのかを見極めてやらなきゃと確信してしまった」

 

 ──なぜなら。

 

「明智、君はあくまで元いた時代に還すべき護衛対象として。小林は探偵という夢を追い続ける生徒として見ていたから。二人が他人を護るために自らを犠牲にするなど、俺は許したくなかった」

 

 今日までキュアット探偵事務所の一員として受け入れていたのは、二人が名探偵プリキュアとなったから。名探偵の可能性がゼロでなかっただけの話。見込みがなければいつでも切り捨てる覚悟だった。中途半端に夢を追わせることほど残酷なものはないのだから。

 

「だが、そいつは俺の杞憂だったみたいだ」

 

 静かに息を吐いて、自分の考えを否定する。

 

「目の前で困っている誰かを放っておけない。奪われたマコトジュエルを必ず取り返す。君らを駆り立てたのはただ純粋な心だったと、ようやく分かったよ」

 

 アンサーとミスティックは顔を上げ、息を呑む。

 微かな潮風の匂いが鼻をくすぐる。

 海岸まで伸びた波がスパイダーの歩みを邪魔しようとするが、彼は問答無用に歩き続いている。

 やがてアンサーとミスティックの隣まで歩いていくと、ポチタンを腕から離し、膝をついていた二人をそっと立たせた。

 

「キュアアンサー、キュアミスティック」

 

 ゆっくりと口を緩める。

 ──ここでジェット君の言葉を借りるとするならば。

 

「お前達は二人で奇跡の、名探偵プリキュアだ」

 

 二人の出会いは、決して偶然なんかではないのかもしれない。

 必然、唯一無二の奇跡の二人──奇跡のプリキュアだ。

 

「──ミスティック」

 

 アンサーはその言葉に目を見開いていたものの、すぐにミスティックの手を取り、手を握りしめたまま彼女に語り掛ける。

 

「さっき、1999年に……この時代に来て心細い、不安でしょって言ってくれたけど……私、もう平気だよ」

 

「アンサー……」

 

「だって、私の中にはみくるがいるから!」

 

「……ええ! 私の中にもあんながいる!」

 

 今までもこれからも、互いの中に二人の姿がある。

 

「「わたしたちは、独りじゃない!」」

 

「ポチ〜!」

 

「「先生……!」」

 

「ああ、行ってこい」

 

 彼女達の想いに応え、二人の前に立ったであろうポチタンの頭上から現れたプリキットを手に取る。

 

「「オープン! プリキットミラールーペ!」」

 

「ポチ〜!」

 

 ポチタンの胸元から、新たなマコトジュエルが二つ誕生する。

 二人はそれぞれのミラールーペへと装着し、鏡を展開した。

 

「見て!」

 

「感じて!」

 

「「ナゾを解く!」」

 

 填め込んだジュエルを回していく。

 ウソで覆われたマコトジュエルを浄化するためのエネルギーが充填していき、その光が解き放たれようとする。

 

「「これが私達の、アンサーだっ!!」」

 

 ミラールーペから解き放たれた二つの閃光が螺旋を描いて一つとなり、光り輝く鳥の如く羽ばたいていく。

 

「「プリキュア!! フライング・スペクトル──!!」」

 

 眩い羽を散らしながら突き進み、ハンニンダーの身体を貫いた。

 

「「キュアット解決!」」

 

 ハンニンダーはマコトジュエル、ツバメの像と分離し浄化していく。

 これで、長きに渡る事件は幕引きとなった。

 

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 

「ありがとうございましたー!」

 

 怪盗団ファントムとの激闘後のキュアット探偵事務所。

 あんなとみくるは事件の真相を真理子に話し、依頼は達成となった。

 こちらが朝の時間帯の場合、ロンドンは深夜だから連絡を取り合うのは難しいという読みは当たっており、妹の恵子は寝ていて電話に出なかったとのことだった。

 真相が解明し満足そうに探偵事務所を後にする真理子を、二人は手を振って見送った。

 

「明智」

 

「はい、先生……?」

 

 すると、二階から降りてきた祥太があんなに声をかける。

 左手にはまことみらい学園の女子生徒の制服。右手には学校指定のバッグを手に持っていた。

 

「明日、これ来て学校行くように」

 

「え、でも私……」

 

「俺が見ておくっつったろ。ここで我慢するより小林といた方が断然楽だからな」

 

「でも祥太、お前いつの間に? 手続きとか大変なんだろ?」

 

 遠くから会話を聞いていたであろうジェットが戸惑いの声を上げて祥太に問いかける。

 対して、彼は不敵な笑みを浮かべながら一枚の書類を見せる。

 

「学校に行きたいといつでも言い出してきていいように、予め手続きは済ませておいた。転入許可証も貰ってある」

 

「なんか、やってること裏口入学みたいだな……」

 

 あんなは持たされた制服とバッグを眺めて、胸をときめかせていた。

 

「この制服を着て、みくると学校に行ける……!」

 

「良かったね、あんな!」

 

「うん! これからもよろしくね、みくる!」

 

 あれだけ曇っていた二人の表情が、今や満面の笑みに変わっている。

 まるで長く空を覆っていた雨雲を押しのけ、その先に七色の虹を架けるように明るく輝いていた。

 

 






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