「ハッ、ハッ、!」
僕は走った、走り続けていた。何故こうなったのか、その理由を僕の脳みそが無意識に思い出していた。
「おい、お前、悪魔の指輪ってしってるか?」
「なんですかそれ?」
「今噂になってるお宝だよ、知らないのか?」
始まりは先輩の冒険者から教えて貰ったものだった。噂によると、悪魔の指輪と呼ばれる魔法の指輪がある、それを手に入れた者は悪魔と契約し、その力を扱う事が出来るといったもので200年前にこの指輪を使っていたある冒険者がこの力を危ぶみダンジョンに隠したとされているらしい。
「どうだ?気になってきただろう?」
「気にはなりますけど、いくらなんでも怪しすぎません?200年前に隠したなら、その時からとっくに捜索されてません?」
「そこなんだよ、実はこの話あの伝説の冒険者アラキの手帳に記されていて、そこから広まったんだ。」
「マジすか」
「おおマジ」
アラキと言えば全盛期の魔王が猛威を振るっていた時代に数多の魔族の進行を抑え、勇者パーティーにもその力を買われ同行していた伝説の冒険者。僕たち冒険者の中ではいかにアラキと同じ栄誉を成し遂げるかといった、ある種ゴールの様な人物。そしてアラキが亡くなったとされるのがちょうど200年前だ。
「アラキの子孫が隠し部屋にあった手帳を見つけてこの事が分かったらしい。」
「でもそれが本当だとしてどのダンジョンにあるんですか?ダンジョンなんていくらでもありますけど。」
「そこが分からないんだ、もう数多の冒険者がダンジョンを捜索しているがいまだに見つからないらしい。」
「そうですか。」
「そうですか。じゃねえよ一体誰のために話したと思ってるんだよ、お前カネが必要なんだろ?」
「それはそうですけど。」
「もし見つかればいくらでも高く売れるぞ?百万?千万?一億だって夢じゃねぇ、家族養うために冒険者なったんだろ?」
「先輩はお人好しですね。」
「そうでもないさ、俺はお前が指輪を見つけたら情報提供ってことでいくらか貰うために話しただけだからな。」
「うわ、最悪見直してたのに。」
『悪魔の指輪』とりあえず探してみるか、僕はそう考えてダンジョンに行くことにした。ダンジョンには初級、中級、上級とあって僕が向かったのは中級。いつもは初級だか、さすがに『悪魔の指輪』が初級に隠されているとは考えられず、中級に向かった。でもそれが間違いだった。
「グオオオア!」
「おいおい嘘だろ、何で中級にキングゴブリンがいるんだよ!」
キングゴブリンとは名前の通りゴブリンの中でもトップの強さと頭脳を持つ個体で、ソロでの討伐はまず無理、パーティーでも無傷はあり得ない、上級ダンジョンにいる筈のモンスターに今追われていた。
「ハッ、ハッ、!」
「グワアアゥ!」
「ガッ!」
キングゴブリンの攻撃を貰って僕は横に吹き飛ばされる。口からは血が溢れ、攻撃を貰った脇腹は肉が抉れていて骨が見えている。
(俺はここで死ぬのか?)
死という恐怖が猛烈に迫って来る、恐怖ゆえに動くことすらままならない事に僕はもう諦めの境地にいた。
(みんなゴメン、お兄ちゃんもうみんなに会えない!)
そんな悲しみに浸っているといきなり目の前の景色が変わった、最初は死後の世界かと思ったが、どうやら転移魔法の様だった。
「た、助かった‥のか?」
とりあえず周りを確認しようとすると傷が無くなっていた事に気づく。
「これは‥どういう‥やっぱり死後の世界なんじゃ‥」
僕が混乱していると、
「お前は誰だ?」
声がした。
「だッ誰?!」
「質問に質問で返すか、まぁ良い。まずは私が答えよう、私はお前が探していた悪魔だ。」
「悪魔?‥まさか」
「ああ、悪魔の指輪の悪魔だ。反応を見るに傷は大丈夫そうだ。」
「もしかしてあなたが治してくれたんですか?」
「ああ、そうだ。死なれては困るからな、さぁ、私は答えた。次はお前の番だ。」
「僕はファレス。冒険者です。」
「なるほど、ファレスか、ならファレスお前に契約の機会を与えよう。」
「契約ですか?」
「そうだ、悪魔と言えば契約だ、早速内容に入るが私をこのダンジョンから解放するんだ。そうすればお前に私の力を使う権利を与えよう、どうだ?悪くないだろう?」
混乱していた僕に悪魔が囁く。悪魔をこのダンジョンから解放する、これだけで『悪魔の指輪』の力を扱う事が出来る。しかし、そう簡単なものだろうか?相手は悪魔だ。巧みに此方に不利な情報を隠し、陥れようとしているかも知れない。
「契約する前に質問しても良いですか?」
「問題ない。」
「ダンジョンから解放って事ですけど、あなたは自分で動けないんですか?」
「もちろんだ、だから解放を望んでいる。」
「解放というのは指輪からという意味ですか?それとも指輪ごとこのダンジョンから出たいという意味ですか?」
「指輪ごとだ、私が指輪から出てしまえばこの指輪はただの指輪になる。それではお前との契約を果たせないからな、指輪を持って出てくれ。」
「最後にあなたの力とはなんですか?噂では力の内容までは分からなかったので。」
最後の質問をした途端悪魔が笑った、まるでこの質問を待っていたかのように。
「私の力を聞きたいか!そうか!なら教えてやろう!私の力は催眠と洗脳の魔法だ。」
「催眠と洗脳の魔法?」
理解できずおうむ返しをしてしまう。魔法といえば炎や水ではないのか?催眠と洗脳?一体何を言っているのか?この悪魔は。
「分かってない顔だな、まぁ無理もない教えてやろう、この魔法は言葉のまんま相手に催眠や洗脳をかける事が出来る。この魔法がかかった相手は常にお前の意のままに操ることが出来る、お前は男だ、気になる女はいないのか?そいつに催眠をかけるだけでタダでヤりほうだいだ。もちろん解除すれば記憶は綺麗さっぱり無くなる女は自分が喰われたことも知らずに日常に戻る、それともなんだカネか?カネなら富豪に催眠で終わりだ、いくらでも盗れる。どうだ?都合の良い魔法だろ?」
この質問を待っていたのだろう、悪魔は様々な使い方を教えて来る。しかし熱が入り過ぎな気もする。
「なんならオリジナルの魔法だって作れる!様々な催眠や洗脳で錯覚させれば時を止められたかのように感じたり、次元ごと切られたかのように感じたり、感度3000倍も夢じゃない!」
明らかに熱が入っている、感度3000倍とか意味分からない。というか、最初あった時の威圧感は何処に行ったのか今の悪魔は捨てられまいと焦っているとさえかんじられる。本当に悪魔なのかコイツ?
「どうだ?悪くないだろう!なら契約しろ!さっさと契約するのだ!お前もこんな所居たくないだろう!こんなにイイコトあるんだよ!お願い!早く!もうワタシこんな所居たくないよぉぉぉぉ~!」
悪魔なのかコイツ?