探偵と疫病神 〜異能蔓延る世界にて、されど探偵は悪と踊る〜 作:Haganed
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俺の名は『
そんな危険な依頼の達成実績ばかりが募っていくこの事務所に依頼がやって来た。電話で場所を指定して話がしたいというので、その場所まで向かって、俺は目の前の
「まさか、協会本部に来るとはな」
「相変わらず無駄に高いネー。首痛くなっちゃウ」
隣に居るのは助手兼居候の『
話を戻し、俺は目の前に
この塔、正式名称は【勇者の集い】というブレイバー育成機関である。ブレイバー育成機関といったが、活動内容は大雑把に人材育成と派遣がメインだ。かつては人手不足の警察の代わりにパトロールとか現行犯逮捕なんかがよく行われていたが、今では殆ど見る影も無い。
協会の人間が一介の探偵に何を期待しているのか知らないが、外部に漏らされたくない話というんだ。ろくな事になる未来が見えそうにない。内心面倒に思いながら、俺と疫病神は協会本部へと足を踏み入れる。
ロビーに出迎えられたあと、受付の女性に自分の名前と電話した相手の名前を伝え、少しの間ソファに座って待っていると、まるで熱血主人公ばりの頭髪をした青年が俺たちに近寄って声をかけた。
「おまたせしました! ソウマ探偵事務所の方ですね!」
元気だなー。元気すぎるんじゃない? おじさん眩しくてサングラス掛けないとやってらんないかも。
「ソウマ探偵事務所の想間実です。こっちは私の助手です」
「東御四禄でース」
「ご丁寧にありがとうございます!自分、『
名前の字面通りの人物だなー。みるからに好青年だし、なんだったら渡された名刺も綺麗な青空みたいで………って、そこまで晴れ渡らせる意味あるか?
名刺交換を済ませ、俺たちは彼の案内に追従してエレベーターに乗り込み、15階にある1部屋に辿り着く。入室した先に、1人の少年が座っていた。 部外者かと思ったのも束の間、案内をした晴々光は少年の隣に立って着席を促したので、 何も言わずに座った。
最後に彼が座ったところで、先程まで元気いっぱいの声量が抑え気味になって話が始まった。
「改めて、御足労いただきありがとうございます。何ぶん外で話すと、 どこから漏れるか分からないものですから」
「依頼を受けるにしろ受けないにしろ、他言無用な話であると?」
「概ね合っています」
俺は少年に目線をやって、また彼に戻す。この言い分だと、確実にこの少年が何かしらに関っているのは間違いなさそうだ。
「では、差し支えの無い範囲でかまいません。どのような依頼か教えてもらっても?」
「要人警護になります」
警護依頼ねぇ。人探し依頼よりかは危険度は低いが、襲擊者が異能者だったら意味のない指標になる。ただ、こうして秘匿性を高めている以上、大っぴらに話せる事も少ないだろう。それでも色々と聞いていかないとならんのが、探偵の面倒な所だ。
「要人警護と仰いましたが、何か脅迫文のような物が送られてきたりしましたか?」
「いえ、そういった物は無いのですが」
無い? 脅迫文のような物が送られてない……何が送られてきた? いやそれ以上に────待て、そういう事か。脅迫文が送られてきたのではなく、
その起きた何かを探る必要はありそうだ。
「失礼。お伺いしたいのですが、脅迫文のようなものが来ていないというのは本当でしょうか? 何かを写した写真であったり、SNS上で脅迫行為を示唆する文を送られた訳ではないと?」
「ええ、まぁ。ただSNSでの事は基本、ブレイバー個人もそうですが協会への悪態等などが多数送られてくるので、それだけでは」
「では何ゆえ要人警護を依頼したのですか?」
「それは……………」
ここで青年の言葉が詰まった。流石にそこまで言える内容ではないとなると、何が思い付く? 確実に隣の少年は必ず関係しているとして、ふむ。確かブレイバーとして活動できるのは15 歳以上からだったよな、そう考えると依頼内容の詳細が多少ハッキリしてくる。
「質問を変えましょう。なぜそこに居るブレイバーの彼を護らなければならないのですか?」
「ッ!? 自分はまだ何も」
当たっていたようで何より。引き出すか。
「他言無用の話に、全く無関係の少年を連れてくるわけが無いでしょう。あぁ、“そこの彼はスタッフである”といった嘘をつくのはやめた方が良い。このような場とはいえ、私服で依頼されるような誠意の欠片も無い応対を、協会の人間がしてしまっている証左になりかねませんので」
「そ、れは」
「話を戻しますが、なぜそこに居るブレイバーの彼を警護する必要があるのでしょうか? ただ漠然と危険だから、といった内容ではこちらも承諾しかねます。脅迫行為を示す文章等が無いと貴方は先程おっしゃいました、では何が送られてきたのですか? もしくは、貴方々協会は何を知ったのですか?」
掛けられる言葉の洪水に青年は何も言えなくなってしまった。やりすぎ? いいや、これで良い。この反応が見れただけでも今回の依頼が持つ背景を予想できる。
「いえ、失礼。私はあの時、差し支えのない範囲でと言いましたね。協会の内情や個人情報保護の観点から言えない事もあったのでしょう。その点に関しましては謝罪します。ですので、最重要事項だけお聞きしたい」
「最重要事項、ですか?」
「この依頼で、私の命が危ぶまれる事があるのかどうかについてです」
俺の携わる依頼の中には、専ら命の1つや2つあっても足りないと思うほど危険が付き物だ。現に先日受けた三上英一捜索依頼についても、その捜索対象が俺を殺しに掛かってきた事実がある。まぁ煽りすぎたってのもあるだろうが、そうしないと相手が逃げてしまう恐れもあるので、あんまり見直す気は無い。
で、さっきの問いに対して彼の出した答えは……首肯。まぁある程度想定はしていた。問題は何を見て、何の因果を感じて依頼してきたかについて。この時点ではまだ何とも言えないし、向こう側も何かしら事情をまだ部外者の俺たちには話せない。ただ────
「わかりました。依頼についてですが、お受けさせていただきます」
「そう、ですよね。拒否され……へっ?」
「お受けする、と言いました」
「いやあの、そう仰られたのは分かったんですが……一体なぜ?」
「何も受けないとは申してませんので」
ズルいと思うか? 面倒臭いと思うか? 結構、それで良い。様々な事情はあれど、依頼人がそれを求めているのは変わりない。先程の問いかけに対して痺れを切らして、勝手に自分たちでやるなんて言ってたら辞退していたが。
それに。この依頼で命の危機がやって来るというのなら、俺もそうだが隣に居る少年にとっても危険だ。1度顔を合わせただけの間柄だが、顔見知りが殺されたってのは寝覚めが悪くなる。なら、受けるまでだ。
「その、ありがとうございます。断わられるものかとばかり思っていたので」
「お礼にはまだ早いですよ。依頼を受けると先程申しましたが、それに伴って幾つか情報共有をしていただきたい。貴方々が何を見たのか、なぜその少年を守る必要があるのか、教えてください」
「……分かりました。ただ自分も把握しきれていない点があるので、あくまで限定的な情報を共有する形となります。どうか、ご容赦いただきたいです」
その言葉に頷き、彼は自身の知る情報を伝え始めた。