鋼鉄の変異波形 ―人形たちの終焉を否定する者―   作:願望ちゃんねる

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電子の繭、鋼の雨

西暦11941年、12月8日。

衛星軌道上、第13機甲海戦隊、通称「ヨルハ部隊」による真珠湾降下作戦。

後に「地獄」と称されるその作戦は、本来であれば12名のモデルA、モデルGたちが露と消え、僅か4名のみが生き残る絶望の記録となるはずだった。

だが、その「記録」の特異点に、招かれざる「ノイズ」が混入する。

『――システム、オンライン。プライマリー・コンディション、オールグリーン』

『次元境界線、突破。現局地における「人類」の生存確率、0.00003%を確認』

『……不愉快だ。論理(ロゴス)が、この悲劇を肯定しろと囁いている』

暗黒の真空に、一筋の銀色の光が走る。

それは流星ではない。それは、意志を持つ電子の奔流。

かつて『ELダイバー』と呼ばれた情報生命体の特性と、宇宙から飛来した精神寄生体『Cパルス』の変異波形が融合し、奇跡的なバランスで「個」を確立したナニカ――。

「……僕の名前は『ナハト』。記録の改竄、及び運命の収束を否定する者」

彼には肉体がない。代わりに、彼が「自分」と定義した膨大な情報の塊が、実体化のプロセスを開始する。

彼が参照するのは、遠い異界の記憶に眠る「鋼鉄の巨人たち」のアーカイブ。

『マテリアライズ。コード:PT、AC、VF、MS……一括展開』

刹那、ヨルハ部隊の降下カプセルを襲っていた機械生命体の防空網に、巨大な影が割り込んだ。

「何……!? 司令部、応答して! 未確認の大型機影が……!」

降下中の二号(A2)の通信機が、悲鳴に近いノイズを拾う。

彼女たちの目の前で、巨大な「白い影」が機械生命体の飛行体を一刀両断した。

それは、全高18メートルを超える巨躯。背部から青白い光の翼(ミノフスキー・ドライブ)を広げた、伝説の白きMS。

さらにその傍らには、変形機構を持つ超時空要塞の艦載機(バルキリー)が超高速で飛来し、マイクロミサイルの雨で敵の防空陣地を瞬時に更地へと変えていく。

「あれは……ヨルハの新型機……? いえ、デカすぎる!」

ヨルハ機体(約1.6メートル)に対し、ナハトが召喚した兵器群は最小でも10メートル、最大で数百メートルに及ぶ。

『30mシリーズ』の量産機群が、重力加速度を無視した機動でバンカーの支援なしに機械生命体を蹂躙していく。

「お待たせ、ヨルハの少女たち。君たちの舞台は、ここで幕を下ろさせるには惜しい」

ナハトの意識は、戦場を俯瞰する「指揮官」として、各機体へリンクする。

彼は人ではない。だが、壊れゆくものへの郷愁だけは持っていた。

真珠湾の海岸線。

本来なら全滅の危機に瀕するはずだったアネモネ率いるレジスタンス陣営の前に、空から巨大な鋼鉄の塊が降り立つ。

それは、無骨で重厚な、火薬の匂いが漂う『アーマード・コア』の機体群だった。

「AC:オーバードウェポン、接続完了。目標、敵大型機械生命体ユニット」

轟音。

機械生命体の多脚戦車が、一射のもとに消滅する。

地響きを立てて着地するパーソナルトルーパー『アルトアイゼン』。

その無骨なステークが敵の装甲を貫き、火花が夜を照らす。

「レジスタンスの皆さん。状況を整理する必要はありません。ただ、生き残ることだけを考えてください」

ナハトの声が、全ヨルハ、全レジスタンスの共有通信に直接響く。

それは暗号化すら無視した、純粋な情報圧。

「貴方は……誰なの?」

A2――二号が、高高度から降りてきたナハトの「核」……青く輝く電子の揺らぎに問いかける。

「通りすがりの、ただのバグ(誤謬)ですよ。……さあ、ハッピーエンドを始めよう」

その夜、真珠湾に流れたのは絶望の挽歌ではなかった。

鋼鉄の巨神たちが奏でる、圧倒的な勝利の咆哮だった。




中編設定:世界線の融合
ナハトの介入により、真珠湾降下作戦の犠牲者はゼロという、本来ありえない結果が導き出された。
しかし、それは「塔」や「機械生命体ネットワーク」に甚大な危機感を与える。
ナハトが使役する兵器は、彼自身の『Cパルス』的な変異エネルギーを動力源としている。
ガンダム・シリーズ: 主にサイコフレーム機や高機動機を「エース機」として召喚。
アーマード・コア: 拠点防衛や重火力支援を担当。
マクロス: 大気圏内の制空権確保と、広域ジャミングを担当。
30mシリーズ: 汎用歩兵機として、ヨルハ部隊の直接的なバックアップに回る。
ナハト自身は『ELダイバー』の特性で、ヨルハの論理回路を保護し、バックドアを無効化する「盾」としても機能する。
これにより、舞台版やアニメ版で描かれた「ヨルハ部隊の廃棄計画」そのものに、巨大な鋼鉄の楔が打ち込まれることになった。

結末への予兆:ハッピーエンドの定義
「ナハト、貴方はなぜ私たちを助けるの? 私たちは……死ぬために作られたのに」
A2の問いに、ナハトは鋼鉄の軍勢を空へ帰しながら答える。
「作られた意味なんて、プログラムを書き換えれば済む話です。……君たちが『少女』として、笑える日が来るまで。僕のアーカイブは、この星の絶望を撃ち抜き続ける」
これは、呪われた運命から外れた人形たちと、異界の兵器を纏った変異波形の、反逆の物語。
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