ルギア(擬人化)から恩返しを受ける話   作:東雲るぅ

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3.僕と二つの選択の話

 むかしむかしのこと。

 あるところに、一匹のポケモンがいた。

 

 そのポケモンは、物心がついたときから、自分は海の底にいることに気がついた。

 

(寂しい。ここからでなければ)

 

 ポケモンが、一番初めに知った感情。

 胸の中が空洞になっていくような、居心地の悪い感覚。

 それは、孤独による寂しさだった。

 

 その寂しさが嫌で、ポケモンは必死に海の底から抜け出し、天高く空へ飛びあがった。

 

 ポケモンは強大な力を持っていた。

 翼を羽ばたかせれば、嵐を生み出すことができる。

 どんな荒れ狂う海だって、口から風の力を吐き出せば、あっという間に鎮めることもできる。

 

 しかしポケモンは穏やかな性格だったので、ひっそりと生きていた。

 いつしかそんなポケモンの元へ人間たちが集まってくる。

 人間たちはその強大な力に信仰を見出し、崇拝の念を送ってくる。

 そして彼らはポケモンを『ルギア』と名付け、海の神様だと祭り上げた。

 

 ルギアはとても賢い種族であり、テレパシーで人間とも会話できる。

 自分は同族を知らない。

 しかし人間はたくさんいて、数が多い分、面白いやつがいたりする。

 

 だからルギアは人間が好きだったのだ。

 

 しばらく平穏に暮らしていたルギアだったが、ある時、外の人間がやってきてこう言った。

 

「お前は強い存在だ。だからお前を捕まえて使役する。そうすれば、どんな国と戦争しても勝てる」

 

 外の人間たちは、ルギアと仲良くしていた人間たちの村を滅ぼして、彼女の元へ訪れたのだ。

 彼らは、ポケモンを従え、ポケモンたちにルギアを襲わせる。

 ルギアは翼を軽く羽ばたかせた。

 すると暴風が吹き荒れて、襲いかかってきたポケモンたちを吹き飛ばし、人間たちを海の底へ沈める。

 

「……人間はたくさんいる。だから悪い者はいるのは仕方がないことだ」

 

 ルギアは人間を信じていた。

 だから、たまたま運が悪かったのだ。

 ルギアは、必死でそう思い込むことにした。

 

 それからルギアは別の場所へ向かい、そこで移り住むことにする。

 そこでも人々はルギアを信仰し、彼らの祈りを聞き、こたえつづけた。

 

「たしかに人間は過ちを犯すかもしれないが、それでも彼らは素晴らしい」

 

 ルギアはそう思い直した。

 だが人間たちとの関係はすぐに破綻してしまった。

 そこでも、ルギアの力を求めた人間たちは、己の欲に駆られて、襲いかかってきたのだ。

 

「人間にも良い者がいる。あのような者たちはごく一部だけだ」

 

 ルギアは、どうにか言葉を絞り出し、そう口にする。

 だが、その気持ちはしだいに薄れていった。

 

 それから、何度も、何度も同じことが繰り返された。

 

 ある時は人間に裏切られる。

 またある時は襲撃を受ける。

 そのたびに、関わった周りの人間たちやポケモンは傷つき、死んでいく。

 

 何度も、何度も。

 

 ある時、ルギアは独り言をこぼした。

 

「もう人間を信じられない」

 

 ルギアは疲れ果ててしまったのだ。

 

「人間なんて嫌いだ」

 

 しかしそれでも、人間にどこかで信じたい気持ちがあったのかもしれない。

 

『清らかな心を持つ者の訪れを待っている』

 

 去り際、そんな言葉を言い残して、<うみなりの鈴>をその場にいる人間に手渡した。

 

 それからルギアは、海の中心にぽつんとある、人のいない孤島で暮らすことにした。

 その奥地で、ルギアはじっと過ごす。

 人もポケモンもいない。孤独な空間。

 ルギアは、自分で望んでそこで過ごす。

 もう何かを信じるのが怖くなって、ひとりでいたくなった。

 

 どれだけ長い間一人で過ごしていたのだろうか。

 

 ────寂しい。

 

 そう思った。

 

 その気持ちは、時間が経つにつれて、強まっていく。

 それでもルギアは、そこから出ない。

 

 自分はもう人間が嫌いなのだ。

 人間とは一切関わらない。

 人間なんて信じない。

 

 そう思えば思うほど、ルギアは寂しさを堪えきれなくなって────

 

 ある嵐の夜、ルギアは、ついに我慢ができなくなって、自分の住処から外に出た。

 

 そこでも、ルギアは現実を突きつけられた。

 できれば、あの時のことを思い出したくもない。

 

 突然自分は、背後から奇襲を受けた。

 敵は、紫色の人型ポケモンだった。

 そのポケモンは、ルギアに匹敵するほどの強さを持っていた。

 激闘の末に、どうにか相手を退けることはできた。

 しかしその代償として、ルギアは命に失いかけるほどの重傷を負ってしまったのだ。

 

「引け、ミュウツー、あれを手に入れるのはまた後でいい」

 

 そのポケモンを従えていた男は、帽子を深く被りながら去っていった。

 

 ルギアには追撃する余力もなかった。

 そのまま、自分の巣に戻ったルギアは、その場で倒れこんだ。

 

 自分は死ぬだろう。この洞窟の奥で朽ち果てるのだ。

 

 ルギアは、心の中でつぶやく。

 

 誰か助けて。

 ひとりで死にたくない。

 

 寂しくてたまらない。

 胸の中が空っぽになって、うみなりがどんどん遠のいていく。

 

 かつかつ、と足音が聞こえた。

 誰だろう、とルギアは思って、足音がした方向へ顔を向ける。

 

 そこでひとりの人間と出会った。

 

「大丈夫、僕は君を傷付けない。だから攻撃しないで」

 

 その人間は手を差し出してくる。

 ルギアは疑いの目を向けた。

 どうせ、この人間も自分を裏切り、利用しようとしてくるだろう。

 

「痛むかもしれないけど、我慢して」

 

 なぜだ?

 

「たぶん、何も食べていないよね? 食べなよ」

 

 なぜ、この人間は自分を捕まえようとしない?

 

「翼を触ってもいい?」

 

 強大な力を持つ自分に、なんの見返りも求めない?

 

「一度でもこうしてみたかったんだ」

 

 ルギアは垣間見た。

 彼はどこにでもいそうな少年だ。

 特別な何かがあるわけでもない。

 ただ、自分に善意を向けてくれている。

 

 少年が訪れる時間、ルギアの中にあったはずの寂しさが、ふっと消える。

 それにルギアは彼といる間、居心地の良さを感じていた。

 そんな感覚を味わうのは、はたして何百年ぶりだっただろうか。

 

 少年が去った後、ルギアは胸が痛くなるような寂しさに襲われる。

 それは死んでしまいたいほどの苦しみだった。

 

 もう一度、あの人間と一緒にいたい。

 

 だからルギアは、自分の姿を美しい人間の女に変えて、彼に近づくことにした。

 

「これは命を救ってくれた恩返しだ。だから人の身となり、カナタというあの人間を傍で守ろう」

 

 そう、建前を言い放って。

 

 本音は違う。

 孤独になりたくない。

 ただ、それだけのことだった。

 

 

 ★

 

 

「こうなることなんて、わかっていたはずなのに……」

 

 うずまき島の奥底にある、滝つぼ。

 そこに、和服を身に纏った美しい白髪の女性がたたずんでいる。

 天井に垂らされた鍾乳石から、水滴がしたたり落ちて、彼女の肩を濡らした。

 

 ────どうして? 自分はあんなことをしてしまったのだろう。

 

 ルギアは思い返した。

 人間の姿となり、カナタという少年の元へ訪れてから、日々のことだ。

 

 はっきり言って、自分の計画はずさんなものだった。

 自分はポケモンなので、人間社会の常識も知らない。

 そもそも数百年、地上に上がっていないので、人間の文明がどのように発展しているのかすら知らない。

 

 きっと人間となった自分は、さぞおかしな存在だっただろう。

 しかしそんな自分を、カナタは迎え入れた。

 

「あんなことは、初めてでした」

 

 料理の作り方を教えてもらった。

 人間の体で細かい動きをするのには慣れていないから、ひどく不器用だった。

 それでも彼は優しい目で、失敗しまくる自分を見守ってくれた。

 

 こーひーという飲み物や、しろっぷという甘い液体のこと、げーむというからくりのことも。

 ルギアが知らない、人間社会の様々なことを教えてくれた。

 

「楽しかったのです。あんな気持ちになったのはいつ以来でしょう……」

 

 彼と過ごした時間は、4日だけだった。

 数千年生きたルギアにとって、4日など、人間の時間感覚でいえば、まばたき3回ぐらいの体感だろう。

 しかし、ルギアの脳裏には、その時の思い出が焼き付いている。

 

「だから、ずっと一緒に居たいと思うのはおかしいことなのでしょうか?」

 

 カナタといるとき、ルギアは孤独感を感じなかった。むしろ、何かが強く満たされる。

 

 だから、もっとカナタとの時間が欲しかった。

 あと1週間。もっと1か月先まで。いや、1年……5年……10年……。

 

「あの方の伴侶となって、生涯死ぬまで傍で守り続けたかった」

 

 それはポケモンという種族として、歪んだ在り方だった。

 人間という異種族と番になり、交わるなど、それは果たして生物の本能として正しいことなのか。

 

 自分は頭がおかしいことをしている。

 彼が自分を怖がったのも、あたりまえだ。

 

「しかし、もう全て終わったことです」

 

 自分は、彼の期待を裏切ってしまったのだ。

 

 ──「僕は、元の姿の君が好きだった」

 

 彼は自分が海の神であることを望んでいたのだ。

 かつて人間たちが自分へ信仰を見出した、気高く、強大な海の神に。

 

「……そうですね、わたくしは間違っています。この姿は仮そめ……こんなものは人間たちが信仰する神の姿ではないのでしょう」

 

 本当は、そんな大層な存在じゃないのに。

 ただ強い力をもっただけの、孤独な存在なのに。

 

 人間の姿だったら、海の神ではない、ありのままの自分を見てくれると思った。

 だから、人間の姿に変身して、彼に近づいたのだ。

 

 しかしそれは自分のエゴで、その間違った選択が決裂を生んでしまったのだ。

 

 ルギアは、目を閉じた。

 彼女の中にうずまくのは、後悔と孤独感だけだった。

 そしてルギアは元のあるべき姿に戻ろうとした。

 しかし、なぜか躊躇ってしまう。

 

 もう少し、このままでいたい。

 

 そう思ったのは、彼が自分を追いかけてくれるのを期待しているから?

 

 こつこつ、と足音が聞こえた。

 やがて足音の主が姿をあらわす。

 ルギアは目を見開いて、その場で崩れ落ちそうになった。

 

「カナタ……様?」

 

 

 ★

 

 

 息を切らしながら、正面を向く。

 ルギアがいた。

 人間の姿に変身した彼女の姿だ。

 

「どうして……?」

 

 ルギアは、両目を揺らしながら尋ねてくる。

 

「ごめんね」

 

 僕は、ゆっくりと一呼呼吸置いたあと、そう答えた。

 

「なにがでしょうか? カナタ様が謝ることなど、どこにありましょう」

「いいや、ある」

 

「だって、すごく辛そうな顔をしているじゃないか」

 

 ルギアは、今にも泣きそうな表情だった。

 まるで迷子になった子供みたいで、途方に暮れているように見える。

 

「大好きな推しを曇った顔にさせてしまった。これじゃあ、ファン失格だ」

 

 ルギアは、虚を突かれたように口を開いて、それからにこやかな笑みを作る。

 けれど、それはどうみても無理をしているようにしか思えない。

 

 まくしたてるような早口で、彼女は言う。

 

「お気になさらないでください。

 わたくしは悠久の年月を生きた、海の神なのです。

 ずっとこの島の奥地で、孤高に生きてきました。

 しかしそれは、わたくしの正しいあり方なのでしょう。

 これまでの自分の日常がまた戻って来るだけなのです。

 あなたは人で、わたくしはポケモンであり、信仰される神」

 

 しだいにルギアの取り繕ったような笑みが崩れていく。

 

「共に過ごすなどと、しょせんは叶わぬ夢物語なのです」

 

 声が震えて、彼女の目じりに涙が溜まっていく。

 

「あ」

 

 ついに涙が決壊したように、零れおちた。

 

「……申し訳ございません、このような、見苦しい姿をあなたに見せてしまって」

 

 ルギアは和服の袖で目元をぬぐう。

 けれど、涙は次から次へとあふれてくる。

 

「あなたが信仰する、海の神ルギアとして接するべきだったのでしょう。

 けれど、わたくしはカナタ様に対等に見ていただきたかったのです。信仰の対象ではなく、一個人として」

 

 僕は、ルギアへ近寄る。

 

「愚かな願いだと、罵っていただいて構いません。ただ、もうひとりでいるのが嫌になったのです」

 

 僕は黙り込んだまま、ルギアの手をそっと握った。

 すると彼女は、はっとしたような顔で「カナタ様?」と口にした。

 

「やっぱりどう考えても僕が悪い。今まで君のことをちゃんと見ていなかったよ」

 

 ルギアの綺麗な顔は、悲痛な表情と涙でぐしゃぐしゃだった。

 

「僕にとって、一番好きなポケモンが君なんだ。

 けれど、それは『ルギア』という偶像が好きなだけだったんだよ。

 君個人と向き合ってはいなかった」

 

 僕は、ルギアというキャラクターが好きだった。

 だというのに、彼女の意思を尊重せず、認めようともしなかった。

 どうしてそうしたのか、理由は明確だ。

 

「君のことを知ろうともしない。

 なにが好きで、なにが嫌いなのか。

 君はなにをしたいのか、なにを思っているのか。

 君の意思も選択も無視したんだ。

 すべては自分の中にある、『ルギア』という偶像が壊れないようにね」

 

 伝説ポケモンらしい、かっこよく、堂々としたたたずまい。

 どこまでも高潔で、誰よりも孤高で、並みはずれて強大。

 それが僕の頭の中にある、理想のルギア像だった。

 

「君が人間の姿になったことに、僕はすごく怖くなった。『自分のせいで、ルギアは間違った方向に変えてしまったんじゃないか?』って。けどね、そんな風に思う時点で、僕は傲慢だったんだ」

 

 自分の中にあった理想像が崩れてしまうのが嫌で、彼女を拒絶してしまった。

 一言でいいあらわすなら『解釈違い』。

 まったく、くだらない。

 彼女こそがルギアだというのに。

 

 僕の言葉に、ルギアはぽかんとした表情をする。だがすぐにこう反論する。

 

「いいえ、違います。わたくしは海の神なのです。人間の姿になるなど、神としておかしい」

「いや、おかしくはないよ」

「え?」

「君は望んで、その姿になったんだよね? じゃあ、それでいいんだ」

 

 僕は、この4日間で共に過ごしたルギアの姿を思い返す。

 

「君は自分の知らないことになると、いつも慌てふためく。

 それに手先が異常なまでに不器用だ。

 包丁で野菜を切るどころか、まな板を粉砕してしまうし。

 塩と砂糖をいつも間違う」

 

「うう……」

「けど、それは君らしさで、けっしてダメなことじゃない」

 

 ルギアは、僕の言葉に愕然としているようだった。

 

「僕は、伝説ポケモンのルギアじゃなくて、目の前にいる君のことを尊重したいんだ」

 

 僕は、正面から彼女を見つめる。

 伝説ポケモンとしてのルギアではなく。

 僕が出会って、助けて、共に過ごした彼女として。

 

 ようやく、ようやく、今この瞬間、自分はルギアと向き合えることができた。

 

「君がなにを考えているのか教えてほしい。どうしたいのか。僕に何を求めているのか。ぜんぶ」

「わたくしは……」

 

 ルギアは堰を切ったように、言葉をつむいだ。

 

「わたくしは、カナタ様と一緒にいたいです」

「うん」

「あなたが死ぬまで、ずっとお傍に」

「そう、なんだ」

「どんな強敵があなたを襲ってこようとも、わたくしが守ります。

 あなたが苦しんでいるときも、悲しんでいるときも、困っているときも。

 いつまでも寄り添い、カナタ様と共にあります」

 

 僕は、こう質問する。

 

「それは命を助けられた恩を返すため?」

 

 それが一番確認したいことだった。

 義務や責任で僕の元にいるのならば、いくら彼女を尊重したくても、否定しなければならない。

 

「いいえ、違います。ひとりで生きていくのが怖いから」

 

 しかし、ルギアが答えたのは、まったく別の理由だった。

 

「カナタ様と一緒にいれば、心が満たされるのです。ですが、あなたと離れると寂しさに襲われるのです。それが嫌でたまりませんでした」

 

 ここでようやく、僕はルギアの本心を知ることができた。

 

「ごめんなさい、わたくしは嘘をつきました。本当はあなたと一緒になりたいから、夫婦になろうとしたのです」

 

 ただの命の恩人に対して、どうしてそこまで執着するのか。

 それは孤独から逃れたい、という感情があったからだろう。

 

 僕はそれを知って、心臓がどきりとする。

 推しである彼女からの、強く求められている。

 

 それがとても嬉しかった。

 

「……つまり、ルギアは僕を異性として好きってことなの?」

「それはわかりません」

 

 ルギアは自分の胸元に手をあてる。

 

「これが恋と呼ぶべきものなのか、愛といえるものなのか、わたくしには判断できないのです。ただカナタ様といると心がやすらぎます」

「……そうだね、話してくれてありがとう」

 

 ルギアは、せつなげにほほ笑んだ。

 

「カナタ様、最後にお話ししてくださり、ありがとうございました。自分の想いを伝えることができて、もう……心残りはございません」

 

 ん、ちょっと待て、少し誤解しているようだ。

 

「僕は君と別れるつもりなんて、さらさらないんだ」

「え」

「でなければ、こうやって君を追いかけたりなんてしないよね?」

 

 切なそうにしていた彼女の顔が、崩れて、みるみるうちに明るくなっていく。

 

「本当に……? その言葉を信じてもよいのですか」

 

 僕は、迷いなく断言する。

 

「僕も君と一緒に居たいから」

「カナタ様……」

「君もそれを望んでくれるなら」

「喜んで」

 

 僕はもう片方の手を、空いたルギアの手に添える。

 するとルギアの瞳から、ぽたぽたと涙がこぼれおちる。

 それは、悲しいから涙を流したのではないのだ。

 

「君は伝説のポケモンで、すごい存在だ。僕は君と釣り合うような人間じゃない。それでもいいの?」

 

 彼女は、強大な力を持ち、かつて人々から信仰されていた伝説のポケモン。

 一方僕は、どこにでもいる普通の人間だ。

 せいぜい少しポケモンバトルが強いくらいしか、価値がない。

 

「はい、カナタ様のお隣にいたいと、わたくしは切望しております」

 

 そんなことはどうでもいい、と言わんばかりに、ルギアは泣き笑いで返事した。

 その答えを聞けただけで、十分だ。

 

「ルギアには選んでほしいことがある」

 

 ならば、彼女の意思で決めてもらわなければならないことがある。

 

「本来の姿で、ポケモンとして僕と過ごすか。今の人間の姿のまま、僕と一緒にいるのか。君の意思でどっちを選ぶのか、決めてほしい」

 

 彼女は、僕と一緒になりたいといった。

 

 それはポケモンとして、生涯のパートナーとなり共に過ごすのか。

 あるいは、人の姿となって、人間として僕と関係を築くのか。

 

 どちらか2つを、ルギア自身が選ばなければならない。

 

「ルギアは、どっちがいい?」

 

 ルギアは、少し迷ったようなそぶりをしたあと、口を開く。

 

「わたくしは────」

 

 

 

 

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