モルガン陛下が最初のバーサーカーになったマスターの末路 作:湿度100モルパーセント
「ほら、救世主さん達。世界を救うなら、しっかりと戦わなきゃさ」
俺はウーサーという騎士について詳しく知らない。アーサー王を人体錬成かなんかで作った王様なんだっけな、くらいしか。
(…信じないといけないなぁ)
とはいえ、彼女のことを救世主と呼んだ。たったそれだけでどんな関係だったのかを推察するには充分な話だ。
「バーサーカー。ウーサーでここは耐えられる?」
だから、ここはバーサーカーに聞く。彼女にとってどんなに辛いことだとしても、ウーサー自身の実力を正確に理解しているのは彼女だから。
「…ええ、間違いなく。私も残れば確実に保証します」
バーサーカーも残るなら確かな戦力になるだろう。ソロモン王との戦闘に彼女がいないのは不安だが、もとを正せば彼女には関係のない世界の話だ。
(…なら、ここでウーサーと一緒に抑えてもらったほうが裏切りを考えると妥当だ)
妖精騎士トリスタンもそうだった─と、自分で考えて疑心暗鬼になっていることへの自己嫌悪が増してきた。
「わかった。バーサーカーは決着がつくまでここで抑えていて」
「もちろんです。別に援軍としてやってきてもよいのでしょう?」
彼女の髪の色も、持っていた槍も変貌していく。本来の─救世主であった、彼女の姿。
「任せてください!ウーサー君と一緒にちゃちゃっとやっつけちゃいますので!」
「…お願いします、バーサーカーさん」
マシュが硬くなったのはバーサーカーが来てくれないことへの不満だろう。少なくとも戦力として数えていたはずの彼女がいなくなることは大きい。
「僕が必ず彼女をそちらに届けるから安心して向かってくれ。別に、あれらを殲滅してもいいのでしょう?」
「頼んだ、二人とも!」
頼もしい言葉に励まされ、俺とマシュで玉座へと向かう。
終幕に、彼女がいないことを悔やみながら。
バーサーカー─否、救世主トリネコ。霊基を変質させた彼女は、ウーサーの隣ではにかむ。
「ウーサー君が来るとは思ってなかったんですよ。私、勝手に君に恨まれていると思ってまして」
「恨めることなんてどこにもなかったじゃないか」
軽口を叩きながらも二人は魔神柱を塵へと変え、また新たにやってくる敵へと高速移動する。
「私の中で君のことは一番後悔してるんです」
「そんなに思ってもらえるのは嬉しいよ。僕は君に恋していたのに全然振り向いてくれなかったし」
なんでだよーと間延びした声が剣と雨と杖の打撲音に飲み込まれてかき消される。
「私だってずーっと恋とか愛とかわかんないですもん。救世主としてちやほやされてたならともかく、邪魔になった瞬間にポイって捨てられてましたもん」
「あの世界の妖精は確かに酷かったよね。僕も今、その妖精の恩恵でここに来れているわけなのだけれど」
魔神柱の表面をモースの呪いで消し飛ばす。圧縮された変幻自在の鞭は間違いなくトリネコの教えたときにはなかったものだ。
「ありゃ、それは新しい魔術ですか?別れてからはそんな凝ったもの作るより大雑把に強いのをぶっ放したくなってましたし。この戦いが終わったら教えてほしいですね!」
「救世主さんなら見ているときに理解できちゃうでしょ?僕にできるものは救世主さんにもできるんだからさ」
魔神柱に飲み込まれかけたウーサーを一瞬で自分の隣に転移させ、そのまま上から魔術を打ち続ける。
「そんな買いかぶられても困りますよ〜…少なくとも、私はウーサー君の力強さは杖に込められませんから」
「でも力強さじゃなくても雨で質量重くしてくるから僕よりも火力高いじゃん」
ウーサーが剣と鞭を振り抜き終わった直後、局所的な豪雨が彼の周囲を撃ち抜く。
トリネコの位置へと魔神柱が触手を伸ばせば残像が残るようにウーサーがやってくる。
「やはりウーサー君が前衛やってくれると楽ですね。生きてたなら妖精騎士に任命してるくらいには信用していました」
「あぁ、そうだ。僕が死んだあとに救世主さんが冬の女王って呼ばれるようになったんだっけ」
その何気ない言葉に彼女は少しだけ動揺する。
「…もう、その話はしないでくださいよ。というかそのことをウーサー君が知ってるのはおかしくないですか?」
「救世主さんは何千年くらいブリテンを治めようとしてたんでしょ。君がそうやって望んでた以上、僕も千年くらいは残ってたさ」
人間であっても、死んだあとに意志のある亡霊になることは稀である。それに気づけなかったバーサーカーも動揺していたのか、それともウーサー自身が見えない形だったのか。
「そうそう、バーヴァンシーが妖精騎士トリスタンを任命された直後に成仏したんだ。だから軽くモース化も進んでて…うん、姿を見られてなくてよかったかもね」
「ねぇウーサー君?私の恥ずかしいところをストーカーして見ていたって認識でいいですか?処しますよ?」
気恥ずかしさからかウーサーへと容赦のない槍の連撃が横殴りに降り注ぐ。
その連撃を自由自在に誘導し、魔神柱を殺していく。
「いやー、救世主さんがどんな心情だったのかまで読めるようになるには時間がかかったよ」
「あーもうやめてください!あの姿って色々と自由に振る舞えないし茶飲み友達とかもあの姿になって以来できなくなったボッチなんですよ!」
思わず笑ってしまうようなことを言うが、ウーサーのピンチにはならないようにお気持ち程度の援護をする。
「ははっ、ごめんごめん。なにせ僕も僕で久しぶりに人と話してるんだよね─まあ、放浪していた時期が長すぎたのもあるんだけど」
「そりゃまあそうですよね…弟子としてはそういういじらしさをもっと持っていてほしかったんですけれど」
魔神柱は意にも返さないで、ただ話したいことを話し続ける二人。
「でもさー、僕としてはとっとと忘れてほしかったんだよね。喪に服した感じであんな黒い服着られちゃ見てて凄く罪悪感あったんだよ?」
「…いいえ、遅すぎても私にとっては弔うべきだと思っていたんです。二度とそんな悲劇を繰り返したくなかった」
トリネコは気づくべきだったのだ。
ウーサーという少年に師弟以上の感情を抱いていたことを。
自分が単なる女性としての幸せを諦めていなかったことを。
「いいや。あの悲劇は僕が原因だよ。救世主さんに何度も何度も言われていたにも関わらず─君がいないのに、宴会に参加した」
例えどんなに悲劇があったとしても、その責はトネリコにはないことを。
「本当のことを言えば、僕も油断していたんだ。妖精を信じるなんて、今となってはバカバカしいと思う」
もちろん救世主さんは違うけどね、と続けた。
「だから君と会えた時に、僕は言いたいことがあったんだ」
罪を告白する罪人のように、騎士は微笑む。
「僕が─君を殺したんだよ」
だから、恨むなら自分にしろと。
だから、悲劇とはトリネコに関係がないと。
だから、贖罪をする必要はないと。
「…なら、いいです」
救世主は柔らかく微笑む。彼と会った時の、どうしようもない失礼さを許したように。
「私は、あなたがいいならいいですよ」
涙がこぼれても、拭う気もない。
トネリコは、確かに彼に
「…あぁ、もうそろそろ耐えきれないかな」
そんな話をしていれば、既に抑える限界をとっくの等に過ぎ去っていた。
「ほら、救世主さん。僕のことを気にせずに走り抜けて─宝具を使うから、さ」
持っていた剣が白と黒の光に包まれる。体が淡い光を放っていく。
「これは垣間見た始まりの時。最果てにありながらにして原初の風は救いの日に吹く」
モースとなった黒い呪いが噴出し、目の前の全てを壊さんと極光が迫りくる。
『
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