モルガン陛下が最初のバーサーカーになったマスターの末路   作:湿度100モルパーセント

11 / 15
終局特異点・冠位時間神殿ソロモン『ハッピーエンド』

夢失う日々の勝利剣(カリバーン・オルタ)』─その効果を、彼は決して明かすことはなかった。エクスカリバーのような火力を出すためには、自らが死ぬ寸前まで命を絞る代償の宝具。

 

(バレてるかな…なんて、考えても無駄なんだけど)

 

誰もいない崩落した神殿の端で、彼は座り込む。戦闘することなんて考えない全力の一撃ならば、バーサーカーを送り出せて当然だろう。

 

代償としての痛みや倦怠感なんてものより、今度は見送れたという満足感が心を満たしている。

 

「おや、お疲れ様。その調子だと願いも叶ったみたいだね」

 

死にゆく彼がどうしようかと考える矢先に、ここに送り込んだ魔術師がやってきた。

 

「全然だよ。本当はバーサーカーの隣にいるマスターを殺したかった」

 

ワガママであり、嘘であり、本音である。

 

(彼女を幸せにできるような人間なら誰でもいいけどね)

 

救世主としての彼女を殺したのは自分であり、心が折れる決定打はウーサーが死ぬという事象で完結した。

 

「でもさ、やっぱりムカつくじゃん。僕ができなかった理想にたどり着いた人間なんてさ」

 

それだけの話。

 

「救世主さんなら僕が幸せにできたかもだけどさ、女王の彼女を支えるのは難しいよ」

 

残念だけど、と口を尖らせる。自分が愛していたあの冒険好きの魔女には幸せになってほしいと思うのだけれど。

 

「それはどうしてだい?」

 

「僕が騎士として支えていたら彼女はすぐに折れてしまうだろう?」

 

わかっているのだ。助けの綱があれば、そこに縋ってしまうのが人間という存在なのだから。

 

「なるほど。なら未練なんて残さずに速く死んだほうがいいんじゃない?」

 

「あー…マーリンさんって僕の宝具わかってて言ってるよね。手伝ってくれない?」

 

質問に質問で返し、マーリンへと協力を強いる騎士は汎人類史においても中々いなかった。

 

「アルトリアの負けず嫌いは間違いなく君から受け継いだんだね。僕のことを頼るタイミングまでそんなに変わっていない」

 

「思っているよりもサーヴァントとしては不慣れなものだし、これくらいはいいだろう?」

 

マーリンの千里眼。遠見の魔術。必要とする理由は宝具を合わせるためだ。

 

「たった一つしかないタイミング勝負。いいとも、僕もハッピーエンドに繋がるなら大歓迎だ」

 

答える前に彼は宝具の詠唱を開始する。

 

「君が見せてくれたあの日々が、色褪せていくように。」

 

第二宝具・『希望の園に我は居ぬ(ロード・オブ・アヴァロン)』。彼女には伝えられない、後悔の宝具。

 

「秩序は保たれしまま、善という希望は廃れていく。」

 

ゲーティアの宝具に合わせるように、彼は詠唱する。たった一つのあり得ない奇跡を合わせるために。

 

「僕という存在との決別を以て、あなたを不幸に導こう」

 

極光に飲まれて彼女が塵になる前に詠唱を閉じる。

 

「ありがとう。─愛しき人よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ネガサモン。人理として最高峰と称されたその魔法式は全ての─召喚陣を含めて─破棄させるものであった。

 

「だから私も退去する、と?愚かしいにも程がある」

 

例外となるのは今を生きる人類であるマシュだけ。そのマシュはマスターを守って死んだ。

 

(ウーサー…あなたから伝えられた愛は私が繋ぎましょう)

 

その上で例外を重ねるバーサーカーは、魔神王ゲーティアからしてみても予想外─というより、理解不明であった。

 

「私は彼の妻だと言いました。どれだけ苦しい世界であろうとも、私が傍で守ります」

 

「…くだらぬ。その程度で破られるようなヤワな術式ではない。なぜお前がここで召喚されたままを保っている?」

 

「違いますよ。我が円卓の(たまもの)です」

 

答えにならない答えを彼女は返し、ウーサーの宝具の起点となった髪飾りをつける。

 

「贖罪の旅が終わった晴れやかな気持ち─ええ、確かに万能感に満ち溢れている」

 

「答えよ!」

 

あぁ、そうかと。

頭の中で彼女が誰なのかわからないことの恐怖が思い出されてくる。

 

(よくよく考えりゃ、俺もよくこんなサーヴァント信じてたもんだな) 

 

惚れた弱み、と言われればそれまで。彼女は質問についていつもはぐらかすし、愛情表現も下手だ。

 

(でも。それでいいんだ)

 

自分の惚れた女を守る。誰かから託された希望を繋ぐ。死にゆく騎士の祈りは、確かに女王へと引き継いだ。

 

「…我が真名を明かしましょう」

 

彼女は笑って槍を構える。魔力が目でわかるほど渦巻き、彼女の元へと収束していく。

 

()れは許されざる願いを抱いたもの。人類史にあって(つい)ぞ目的を果たせなかった魔女」

 

「─モルガン・ル・フェ」

 

彼女の─モルガンの思念が入ってくる。だというのに彼女の思うことも、彼女がこれからやろうとしていたこともわかりはしなかった。

 

「…我が夫よ。貴方の為に宝具を使います─令呪を、切りなさい」

 

そうして彼女はこちらを見た。女王であって女王でないバーサーカーとして。

 

「そして最後に問います。私との旅はどうでしたか?」

 

質問の意味をしていないその言葉に、答える。ゲーティアという式に見せつけるように、散っていった彼女(マシュ)に後悔などないと断言するように。

 

「楽しかったに、決まってんだろ。モルガン」

 

そうぶっきらぼうに言えば微笑み返され、彼女は杖を正面へと掲げる。

 

「令呪を以て(ちぎ)る─」

 

なんて言えばいいんだろうか、なんて頭のなかで逡巡してもいい言葉は出ない。

 

 

「─終わらせろ、バーサーカー」

 

彼女との繋がりを躊躇いなく切る。赤い光が祝福するかのように辺りへと吹き散らされ、白銀の盾へと降り注ぐ。

 

「宝具開放─」

 

真名すら伏せられていたソレ。北米神話大戦を終わらせた槍など児戯に過ぎぬと断言できる。

 

「暗き湖よ、来たれ。」

 

杖を天に掲げ、崩れた足場は黒い呪いとなって女王の前へと道を譲る。

 

「それは絶えず見た滅びの夢。」

 

杖を中へと突き立てる。渇望してまで手に入れたものを捨てたあと、呪いから足へと腕がまきついて固定される。

 

「報いはなく、救いもない。」

 

斧。剣。杖。彼女が使い続けた武装が女王を祝福するかのようにゲーティアの動きを阻害していく。

 

「最果てにありながら、鳥は明日を歌うでしょう。」

 

空がないのに落ちてきたソレは、槍。ロンゴミニアドと呼ばれる神造兵装。全てを飲み込み破壊せんとする力。

 

 

どうか標に――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もはや辿り着けぬ理想郷(ロードレス・キャメロット)

 

 

 


 

そんなソロモンとの決闘が終わって三日後。

 

「…これで伝えるレポートはよし、と」

 

「恥ずかしいことを筆記するのはやめてください、我が夫よ」

 

後ろからココアの甘い匂いと綺麗な声。言うまでもなくモルガンだ。

 

バーサーカーの真名はモルガン─まあ、ダ・ヴィンチちゃんやドクターが言うことには冬木の時点で気づけていたかもしれない─らしかった。

 

(最も、全部言われると恐ろしいことこの上なかったんだけど)

 

彼女がここに来た理由や動機を全て聞かされたけど…俺のモルガンに対する感情は変わることはなかったし、何より人理を救った功績で帳消しになった。

 

「南極の大地であっても、夜明けとは美しいものですね─」

 

マシュはフォウくんが生き返らせてくれたし、モルガンは一緒にいてくれる。あり得ないくらいの奇跡はもしかしたらすぐに終わるかもしれない。

 

(別にこれが、少しでも続けばいいんだ)

 

どこまでこの平和な日々が続くのかはわからないけど、愛した人が隣に居てくれるのだ。

 

「…もし私のことが嫌なら「だーめ」」

 

「モルガンが俺のこと嫌になったら離婚するよ。それとも嫌いなの?」

 

「いえ、そんなことは」

 

「じゃあいいよ。俺もモルガンと離れたくないんだから一緒」

 

彼女との関係は政略結婚から始まったと言えるけれど、この末路は悪くないんじゃないだろうか。

 

そんなことを思いながら外を見ると、白く綺麗な光が祝福するように降り注いでいた。

 


 

以下突っ込まれそうな質問に勝手にお返しコーナー

最初の奴以外は読まなくても別に問題ないので…。

 

Q、なんでこの作品を書いたの?あと続くの?

A、書いた理由はノリと勢いと酒。続くけど1.5部のイベント4つが書き終わるか怪しいので、今までの伏線回収をするぷぷぷモルガンランド以降は好き勝手書くつもり。冷静に考えるとぷぷぷモルガンランドってなんだろうか。

 

 

Q、なんで1から4章まで書いてる部分が少ないの?

A、1章→モルガンを入れて変化させたら俺TUEEE状態になるので、規模がデカくなりそうなところを切り抜いた。

2章→人特攻ぶっ刺さるけど統治者との問答のワンパターン化になりそうで書くのを避けた。

3章→アステリオス(バーサーカー)が味方でめちゃんこ関わってくるのとモルガン陛下とドレイクの会話の最中に宴会が入りそうなので避けた。

4章→モーさんがモルガンと会話した時点でアウトなので書けなかった。

 

Q、なんで唐突にクー・フーリン[オルタ]?

A、バーサーカーの敵で一番マシなのがコレしかいなかった。

 

Q、なんか色々とキャメロットの描写が…

A、原作を見ても描写むずい…下手に暴れるとこの後の2部6章難しくなる…てことで少なめです…

 

Q、バビロニアの湿度をメドゥーサで取る理由イズ何

A、あの中じゃ一番タイプ変化しても問題のないキャラだったから(建前)推しをねじ込め(本音)

 

Q、ウーサーくんは異聞帯オンリー?

A、異聞帯オンリー。汎人類史混ざるとモルガン陛下を露骨に嫌い始めるような気がするので毒殺の彼のまんまで。

 

Q、獅子王の言ってたやつって…?

A、ガイドライン抵触の可能性があるため解答権がありません。平にご容赦あれ。

 

Q、ウーサーの宝具って?

ぷ、ぷぷぷモルガンランドで言うつもり…()

 

Q、作者からの一言は?

モルガン陛下のピックアップのせいでパニック状態になりました。この作品は本来なら週一とかでのんびり書く予定だったのですが、前倒しにして1ヶ月で11話です。

 

だからちょくちょく上手く書けてないなぁと自分で思う部分だったりウーサーくん唐突すぎないとかツッコミどころたくさんあります。

 

で、一番辛かったのは人が減ることですね…全体通しても5人いるかいないかくらいでしたが、それでもやっぱりメンタルにはチクチク刺さるものでして。正直2話目くらいて失踪しようかなーなんて思ってたりしました。

 

いやまあありがたいことにランキングにものらせていただいたので一区切りつくまで走り抜けられました。本当にありがとうございます。

 

最後にちょっとしたお願いですが、よろしければお気に入り登録と10の高評価を(乞食を黙らせる音)…

 

…はい!次回から始まるぷぷぷモルガンランド編もお楽しみに!察しの通りトンチキイベです!

一部終了後のイベントどうする?

  • 委員長はだらけたい〜メタトロンの人助け〜
  • 東方異聞見聞録〜誰が話した?〜
  • 英霊維新七番勝負
  • ぷぷぷモルガンランド─聖剣に願いを─
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。