モルガン陛下が最初のバーサーカーになったマスターの末路 作:湿度100モルパーセント
「とりあえず、私たちの町を紹介しますね…何もないような場所ですが…」
ワドルディの住む街。とごもかしこも小さく作られているが、彼やバーヴァンシーが近づけば遠近法さながらに大きくなっていく。
「ほう…いえ、これで何もないとはありえないことを…」
映画館にフードストリート、研究所。出店や複数の一軒家がある『町』としては、何もないと謙遜されるようなものとは到底思えなかった。
「そうなんですか…?キャメロットのほうはここより設備が充実していると聞きました…」
「なるほど…?ところでなんで俺らも問題ない暮らしができてるんですかね…?」
本来なら一頭身のワドルディが暮らす街─なぜかは知らないが、彼女や自分が歩いていても違和感がない。
「…まあ、私にもわからないものですね…」
詳しくわからなくても、生活できるのならいい。ワドルディにも彼女にもそこまで深く考えて再現してもよいことはないと直感でわかっている。
「わにゃにゃ!」
「わにゃ?」
「うん、この人が新しく来てくれたウーサーって人。皆で仲良く暮らせると思うよ?」
賑やかな喧騒とワドルディの歓迎する視線。彼にとっては慣れることのない褒められる視線に、つい微笑みが強くなってしまう。
「ふふ…すまないな、思ったより歓迎されることが嬉しくて仕方がないみたいだ」
「ウーサーさんは槍もかっこいいですから。…その、私も見習いたいと思ってますよ?」
彼の持つハルバードに似た黒い槍は、少しだけ妖精にとって興味を引くものだ。バンダナをつけたワドルディに至っては自分が使ってみたいと護衛役の荷物持ちを志願した。
「わにゃにゃ〜♪」
…最も、触っただけで見た目だけなら再現できるワドルディの技術の甲斐あって本物は彼が担いでいる。ご機嫌そうにくるくると振り回して空を飛んでいることだし、嬉しいのだろう。
「バーヴァンシーさんに槍は似合わないかなぁ…?」
彼はバーヴァンシーを横目でしっかりと見る。
彼としては槍を使う女騎士というよりは深窓の令嬢の雰囲気を纏う彼女に槍を持たせたくはなかったのだ。
「じゃあ何なら似合いそうですかね…?私、武器とかあんまり詳しくなくて…」
バーヴァンシーに似合う武器。近距離の武器になるとハイヒールが履けなくなってしまうし、かといって遠距離の武器だと練習中に手を怪我してしまうものも大いにある。
「え、えっと…うーん……」
迷ってワドルディたちの持つ武器へと目線を向ける。火を吹いていたり周囲にパチパチと静電気を発生させていたりと能力を持った彼等の中でバーヴァンシーにも扱えそうなのを探す。
(と言っても遠距離のやり方を俺が指導できるわけじゃないからなぁ…)
わにゃわにゃと皆で転がる様子を見ていると一つの武器が目に止まる。
「銃……とか…?」
「…銃、ですか」
もしかえたら目の前で考えすぎたかもしれない。失礼に取られてしまっただろうかと戦々恐々としていると、クスッと小さな笑い声。
「レンジャーのワドちゃんもいますし、確かにピッタリかもしれませんね。弾数もあまり気にしなくていいですし」
「そう、ですか」
弾数を気にしない、とはどういうことだろうか。長旅になるのはわかるがそんなにたくさん持ち歩いても危険としか思えなかった。
「ええと。やっぱり、ここって素晴らしいですよね。本当ならもう少し準備だったりしてもいいんですけど…」
「…どちらでも構いませんよ。貴女のペースで進めていただければ…」
彼にとって平和で穏やかな時間は「存在しなかった」ものであり─あくまで、少しだけむず痒いものだ。
(俺がやったことない、ってことかな)
記憶がなくても体は反応する。ここにいてはならないと思えてしまうのが宿命なのか─なんて、くだらないことも考える。
「いえ、せっかくなのでモースも見てもらえればわかるかもしれません。ウーサーさんの槍も見てみたいですし…」
彼女に気を使わせてしまったな、と彼は思う。槍を見てみたいと言われても、この槍の使い方すらあやふやになってしまっているのが現状なのだ。
「…わかりました。モース退治、喜んで受けさせていただきます」
槍を持って彼は彼女と共に外へと向かう。
外に出るための門をくぐった瞬間、柔らかな風が彼等を出迎え、平和な草原がただ広がっている。
「ワドルディちゃんたちも近くにいると出てきたりするんですよね。わにゃわにゃって寄ってくるのもかわいいんですよ」
「…それはそれは。動かなかったら取り囲まれてしまいそうですね」
ふといない誰かが振り払えずにわにゃわにゃに取り込まれる─そんな妄想を考えると、ついくすっと笑えてしまう。
そのまま歩いていくこと10分。それなりに町から離れたところで彼等はワドルディを見つけた。
「!?…ウーサーさん!」
彼女の警告をする前に彼は槍を横手に走り抜ける。彼女が指さした先にいたワドルディ…の、隣へと槍を向ける。
短い呼吸の合間に軌道が変わり、ワドルディへの守りとなる。攻撃が止まった隙を縫って彼は怯えたソレを抱きかかえる。
「間一髪…!」
相対したソレは彼の常識の外にある存在だった。
沼を連想させる黒く汚れた不定形の体。動きに一貫性がなく、無機質なまでにワドルディ─獲物へと目を向け続ける。その濁った白い目を動かすこともなく、淡々と致命打の一撃を放ち続けた。
(とりあえず全身撃ち抜くか)
牙を見せた捕食者が襲いかかるしなやかな動作で黒い稲妻がモースの体を貫く。黒い塵となって霧散していく状況になっても油断せずに警戒を弱めないでいた。
「…そこだ」
何を思ったか一息に跳躍してバーヴァンシーの足元へと槍を突き刺す。引き抜きながらバーヴァンシーにワドルディを渡し、万が一に備える。
「え、え、あの、」
「そのワドルディ抱えて逃げるよ。舌噛むから口閉じて」
端的な指示と共に彼女を横抱きにして持ち上げる。瞬間、視点が目まぐるしく変わると共に、彼女の柔らかな肢体が軽く赤に染まっている。
「…っと」
ものの数秒で過ごしていた街にたどり着く。そっと降ろした後にやらかしたことに気づいた。
(…どう言い訳しよう)
気まずさのあまり、目をそらす。わにゃわにゃとするワドルディに囲まれて逃げ場がないのがいたたまれなかった。
同時刻、わにゃわにゃに囲まれて動けない女王様がいたそうな。
「…もう少しだけ、密度が増せばいいのですが…」
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