モルガン陛下が最初のバーサーカーになったマスターの末路   作:湿度100モルパーセント

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断章「叛逆/安らぎ/祈り」

少し時を巻き戻してモルガンが現界する少し前。キャメロットでは圧政から逃れるためのサーヴァントが現界していた。スパルタクスである。

 

「反逆せよ!圧政を願う存在を否定し、世界に反旗を翻すのだ!」

 

ワドルディたちの怒りをまとめながら、かの剣闘士は入り組んだ通路を破壊して道を作る。都市も圧政者が作ったものならば、壊すのもまた反逆の道なのだ。

 

(反逆者としては圧政者の手先がいてもおかしくないような道に入ったが…いや、アーチャーやキャスター、それにアサシンも考えられる。圧政者としてあり得るのはアサシン…よってこのまま先頭を走り抜ければよい)

 

…スパルタクスはこの世界では「やられ役」だ。必然としてよくも悪くも強化がなされる。

 

「ここから先には進ませません!!貴方を倒すだけでボーナスが貰えるんです!!」

 

「ふぅむ、圧政者の手先か!か弱きものよ、反逆の道を止めるな!!」

 

飛んできたサーヴァントであろう剣士を止め、彼は尚もワドルディたちをつき動かす。勝たずともよい─スパルタクスにとって、反逆の意思を持つ同士を守らない道理はなかった。

 

「貧弱、貧弱ゥ!この程度でワレらが意思を阻めるものか!」

 

「くっ、このセイバーは強敵ですね…」

 

小柄な乱入者程度に倒されるような軟弱さを彼は持ち合わせない。肥大化した体で普段以上の技の冴えを見せながら着実に敵対者を追い詰めていく。

 

「解放されよ!」

 

無骨な大剣が彼女の体を寸断せんと迫り─瞬間、彼の頭が血の華となる。

 

「甘いな。反乱者にリアクションする暇があれば早く片付けろ」

 

「うぅ…アーチャーさん、私のことを何だと思ってるんですか?」

 

アーチャーは助けた少女へ何もせず、銃弾の装填を始める。ワドルディの残りを殺害するつもりなのだ。

 

「ここで怯えてろ。二人でやったことにしといてやる」

 

「…いえ。流石に助けられたのにその後まで甘えるのは私のキャラじゃありません。アーチャーさん、援護お願いします!」

 

…笑ったように見えたのは気の所為だったのか─アーチャーは後ろを振り向かないで走った彼女のあとを追従し、誰ともわからぬワドルディに銃を打ち込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

…まず、原則として。

ここにヒナがいることはなんらおかしくはない。托卵が上手くいかなければそういうこともあるのだろう─目の前の子供は恐らく竜の子供だ。別に生まれて間もない頃なら簡単に殺せる。

 

しかしとてもかわいい。かわいいのだ。私が普段から為政者としての戦闘をしているのも相まって、最近ではそのようなものを一切見かけない。遠く離れた地にはリヨ族とかもいるときいたが。

 

(どちらかは選ばないといけません。どのようにしましょうか)

 

殺すか、生かすか。

 

終わった後に考えるなんてすれば目の前のヒナは餓死するだろう。ピィピィと鳴くこともなく、子供ながらに自分の死期を悟っている。

 

悩んでいるとヒナはこちらを噛んでくることもなく見つめてくる。もう既に生きることを諦めたかのような目は、私が手を差し出したときのバーヴァンシーの瞳によく似ていた。

 

「…躊躇してはいけない、か」

 

一瞬の逡巡の後、私は魔術で無から食べ物を生成する。殆ど固形物で出てきてしまいました。

 

ガサガサと音のなる草の上で口に含み、食べやすいようにしてからヒナの近くへと吐き出す。

 

(何をやっているのでしょう…いや、そもそもこんなの食べる必要もなく投げ捨てればよかった。私も少し驚きましたね)

 

ヒナもこちらの意図を察してくれたのか、律儀に一つお辞儀をして丁寧に(ついば)み始める。ガツガツと食べないのは人間らしい。

 

…ここが特異点でなければ、ずっと眺めていたいと思えるほどに。

 

(では現状を整理しましょう。少なくとも我が夫も無事についていそうなことですし)

 

今回の特異点についての情報はない。辛うじて私はマスターの縁でねじ込みましたが、他のサーヴァントが来た、なんて期待などしないほうがよいでしょう。

 

「ミャウ?」

 

「気にしなくていい。…あぁいや、気にかけてないわけではありませんが」

 

おそらくヒドラ辺りの幼体だろう─とてもかわいく、火を吐かないだけ賢明な個体だ。

 

「…どうしたものか」

 


 

 

私─トリスタンは過去を見ている。ワドルディたちに秘密にするほどには辛く、かといって切り捨てられるかと言われれば首を傾げるくらいには身近な過去。

 

「私のこと、ね」

 

どこの町にもいるような村長やモブだと思っていた私にとって呪縛のようなものだった。平和ではない別の私のこと。

 

きらびやかな人生だった。私と似ているのは見た目くらい。他は全部─私よりも悪だった。

 

あの世界の彼女は、悪辣で、悪質で、愚かしくて─でも、そうしなければ生けていけなかったことはわかってしまうのだ。

 

ワドルディの位置にいる妖精。ソレラは彼女のことを悪しざまに言っていた。そのくせ自分がそれよりも非道な行いをするときは棚に上げるのだ。

 

(私も、ああなってしまうのでしょうか)

 

純粋に育った、という実感があります。平和に暮らしてきた─英霊の座なんて登録されるはずもありません。ハッキリに言いますと、自分が彼女と同じ結末を辿らないと楽観視していたのです。

 

「私も、悪い子でしょうか…」

 

そうやってわにゃわにゃと、何も考えないで日々を過ごしていた矢先でした。過去で見たモースが現実でやってきたのです。

 

(嘘、嘘…!!)

 

自分の結末を知っていた私は、絶対に受け入れがたいものです。人としての尊厳とはほど遠い死に方なんて絶対にごめんだと。

 

自分勝手な、妖精の考え。

ソレがワドルディに気づかれないよう、私は町を作り始めました。

 

表向きは、モースに対抗するために。

裏の理由は、私が死にたくないという身勝手な理由で。

 

「…いえ、あとは住人を増やさないとですよね」

 

トリネコさんから教えてもらったことをなぞるだけの街であっても、それぞれが思いのままに過ごしていた。私には途方もなくできそうにない、あの平和な場所が羨ましかった。

 

「わにゃ!わにゃ!」

 

「わっ、行きますからちょっと待ってください…」

 

丸っこい体のワドルディに押されてどこに行ったのか─なんて、そんなのも覚えてないくらいにはあの頃は必死でした。

 

「…人?」

 

このぷぷぷモルガンランドでは、人の種族は極端にいません。私以外にはトリネコさんくらい。そんな中で道に倒れていた彼は、どうしようもなく異端でした。

 

そして私が何よりも気にしてしまったことは『彼をあの過去で見かけていなかった』という一点─正直、自分でも最低な理由で助けたのはわかっています。

 

 

 

「…うん、生きてたみたいでよかった」

 

そんな彼─ウーサーさんを手入れするのは大変でした。一人ではどうしようもないくらい弱っていて、それでいてワドルディと一緒に持ち上げても動きません。

 

「わにゃ!わにゃ!」

 

「そうですね、ちゃんと私がお世話するのでその間はお願いします」

 

彼をゴロンとベッドに寝かしてワドルディが出ていったのを確認してから、私は彼にお願いします。

 

醜いとわかっています。

 

何も助けたところでいいことはありません。

 

どうか、どうか。

 

 

「…私を、助けてください」

一部終了後のイベントどうする?

  • 委員長はだらけたい〜メタトロンの人助け〜
  • 東方異聞見聞録〜誰が話した?〜
  • 英霊維新七番勝負
  • ぷぷぷモルガンランド─聖剣に願いを─
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