モルガン陛下が最初のバーサーカーになったマスターの末路 作:湿度100モルパーセント
妖精騎士トリスタン─とは、言うまでもなく異聞帯のサーヴァントでしかあり得ることはない。
「安心しろよ。別にさっきのは足元がお留守になっていただけだからな」
笑うことすらない冷徹な姿で睥睨する形は悪役令嬢と呼ばれても差し支えのないものだった。当然ながら先程の戦闘で姿を見ていないため、明らかに危険なサーヴァントだった。
「…怪しい…本当に味方ですか?」
「それはカルデアのマスターである藤丸立香が決めることだろ。私みたいな真偽のわからないはぐれサーヴァントに聞くことじゃねぇ」
マシュからの問いかけに対しても聞き分けずに彼女は彼へと琴を構える。
「答えろよ、カルデア。私は敵か味方か─その目で判断しろ」
答えを間違えた瞬間に殺される、という直感が彼の体に理解した。避けるということもあるいは出来たのかもしれないが、間違いなく死ぬまで追ってくるだろう。
考える。考える。
「妖精騎士トリスタンは─味方だ」
答えをはっきりと言い切り、そして妖精騎士を見つめ返す。
「理由は…ソロモン王が呼んだサーヴァントには見えなかったのに『カルデアのマスター』と口にしたこと、かな」
「続けろ」
明らかに警戒を強めた表情で彼女は続きを促す。あからさまに不機嫌になっていることをつとめて気にしないようにしつつ、彼は更に踏み込む。
「特異点であった皆がカルデアに呼ばれることがあっても、カルデアを一方的に知っていることはなかった」
「その話なら私が敵にならないとおかしいだろうが。ソロモン王のサーヴァントとして呼ばれた可能性が高い」
カルデアを知っているという特異性に対し、答えられるのは立香のみ。マシュやダ・ヴィンチ─あるいは、ドクターなら可能な問題だとしても。
だから、違う答えを示す。彼にしかない方法で正解を目指す。
「違う。出てくるタイミングがおかしい」
「……あ゛?」
困惑した顔。その異変を見逃さずにトリスタンへとたたみかける。
「信じさせるならさっきの時に殺せばいいし、信用されるなら近くにいるエネミーを倒したっていい。それに─」
「それに?」
「不意討ちならわざと外す意味がないよね」
純粋な笑みを浮かべた彼へと忌々しげに舌打ちし、彼女は降参と言わんばかりに両手を上にあげた。わかりやすく武器も霊体化して消し去った。
「…はぁ、まあいいわ」
『落ち着いたところすまないけれど、味方という認識でいいんだよね?』
トリスタンは改めて問われる質問に対してうんざりした様子でまた答える。
「あぁ。別に私としてはどっちでもいいんだけど…とりあえずエルサレムのほうを見てこい、話はそっからだ」
ぶっきらぼうに言い放つ先にある異常な城。それを見るだけの行為の中でどこか恐ろしささえ感じてしまう。
畏怖。あるいは、崇拝。
そのどちらの感情も抱いていない目の前の少女は、反対方向へと歩みを向ける。
「えっ、一緒に行ってくれないの?」
「私が行くと話がこじれる。オマエラだけで見に行ってこい」
言うなり彼女は砂嵐の中へと飛び込んでいく。クレーターの上部とはいえハイヒールが引っかかるのではないか、と少しだけ立香は心配した。
「…とりあえず、進もっか」
下手にトリスタンを追いかけてしまえばまた戦闘になってしまうかもしれない。そんな消極的な理由と共に、彼等は円卓の城へと向かった。
門の前。本来ならば純白に染まり光を反射して厳かな雰囲気を放っていたであろうそこは、既に死体が積み重なる地獄へと変化していた。
「なんで…?」
困惑している子供へと刃が振り下ろされる刹那、横から微かな音が騎士の体を裂く。ダ・ヴィンチが即座に抱きかかえ、逃げる体勢を整える。
燃える。燃える。燃える。燃える。死体が太陽に晒された黒紙のごとく燃え盛り、死に至らなかった生者が苦しみの悲鳴をあげてのたうち回る。ソレを行った騎士はさして気にした様子もなく、こちらへと無表情で近寄ってくる。
「あぁ、マシュと藤丸立香ですか。そこのレディもカルデアの連れなら共に殺してしまいましょう」
無造作に白刃が迫った時点で彼等はトリスタンの意図が理解できた。今までの特異点とはたしかに異なる。
聖杯を回収する目的は変わらない。敵のサーヴァントと味方のサーヴァントがいるのも変わらない。
「名前は、名乗ってくれないかな」
「名乗る名前はとうに奪われました。わかりにくいのであれば太陽の騎士とでも」
「どーなってんだか」
どこか子供らしいその呟きをしつつも、騎士からの一撃を横に避ける。もともとショルダータックルや大ぶりの一撃ならば当たることはない。慢心ではなく純然たる事実でそう立香は判断する。
「とりあえず子どもと一緒に逃げよう!」
脱走する間の露払いとしての投擲。レプリカであっても槍の特性は消えず、かの騎士をたじろがせる。
(…ま、後で聞いてみるか)
一般人から逸脱した速さで走りながら彼はそんなことを考えた。
もし自分の考えることが当たっていてもどうしようもない─けれど、彼女を知るきっかけにはなるだろうと。
「バーサーカー、もしかして特異点に一度レイシフトしてる?」
夜に通信を繋げられて言われたその一言は、一瞬で私の余裕を失わせました。隠し通せる想定でしたし、自分が疑われても怪しいとまでは思われないと高を括っていたのです。
(落ち着きましょう…あくまでそれなりの根拠があって発言したに違いありません)
冷静に考えれば、夜の時間に通信してきた時点であまり記録にも残したくないのでしょう。
「理由を先に聞かせてもらいましょうか」
普段通りの態度を貫けばある程度は融通が聞きます。とりあえずは彼の主張を聞いてから論破するとしましょう。
「…行ったことは認めるんだね」
「ええ、別に否定する意味もありませんから」
ほんの一瞬だけ彼も微笑みましたが、真剣な表情を崩そうとはしません。あえて読み取るとしたなら恐怖、でしょうか。
「じゃあ、まず一つ目から」
「バーサーカーが作ってくれたものが余りにも有用過ぎる」
彼に渡したものは妖精騎士を襲名させる際に抽出したエッセンスをいくつか組み合わせた礼装ですし、それも当然でしょう。
「少なくとも最初の襲撃してきた騎士は奇襲とかの一撃必殺だったら確実にやられていた。似たようなことをバーサーカーの訓練でやったとしてもおかしいよ」
「そうですね」
確かに彼との訓練で全ての攻撃を避けさせたり迎撃させる訓練もしましたが、そこまで手伝うこともしてません。本来ならばあそこにはいなかった人間なのですから。
(まあ、そこの話には触れられることはないでしょう)
そっとため息をつき、話の続きを促します。そもそも余計な時間をとらせている自覚もありますし、速めに切り上げてしまいましょう。
「それで、2つ目は?」
「カルデアを知っていたことかな」
(…ヒントを出しすぎたか)
とはいえ今回は襲撃もあったことです。下手に味方と敵がわからなくなるよりは余程マシだと思いましょう。
「人理のサーヴァントがカルデアを知っていることはないのになんでトリスタンが知っていたのか。まずそこから違和感だった」
考えてみれば当たり前のことなんだけどね、と朗らかに続ける。
「ダ・ヴィンチちゃんに解析してもらったんだけど、魔力がはぐれサーヴァントとは違うパターンで供給されてる。カルデアと契約しているのと同じ感じ」
マスターがいるパターンだよ、と問われた。
「…つまり、何を言いたいのですか」
答えがわかっていても問いかけることはやめなかった。彼ならばきっと、正解にたどり着いただろう。
「俺がバーサーカーのことをわかってないのかもしれない。けど、まさか…」
声が震えても指先はこちらを向く。自らが正しくても躊躇する彼の美徳が酷く愚かに感じた。
「受肉、したの?」
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