モルガン陛下が最初のバーサーカーになったマスターの末路 作:湿度100モルパーセント
「やあ、君。僕の名前はマーリン。彼女と同じグランドキャスターさ」
…僕の名前は『 』だ。
「うん、知ってるよ。君の初恋から葛藤まで全てを見てきたものだからね」
どうして、見れてるの。
「彼女が言っていた千里眼だよ。本当はこんな使い方したら怒られるかもしれないけど…」
ええと、マーリンさん。
「どうしたんだい。僕が君のことを呼んだ意味が全くわからないというのかい?」
うん。僕が『 』だとしても、マーリンさんに呼ばれるような存在ではないんだ。
「おや、そんなことを言うのかい?君の功績は確かに少ないかもしれないが、普通に考えれば英霊として顕現してもおかしくない」
でも、僕は彼女を悲しませた。
「そうだね。確かに君は自分があんな死に方をするなんて微塵も思っていなかっただろう?」
うん。幸せの絶頂だと思って、それで彼女を巻き込んで不幸にした。
「そんな卑下しなくてもいいんじゃないかな?僕はあくまで君と対等に話しているけれど、騎士みたいな高潔な精神は持ち合わせてないんだぜ?」
大丈夫。マーリンさんが強いのは体の動きを見ていればわかるんだ。
「ハッピーエンドが大好きなお兄さんに大してそんなことを言われるなんてね。悲しいけれど事実だから言い返せないや」
恥じることでもないし、寧ろ凄いことじゃない?
「多少なりとも王に仕える魔術師だったからね─それじゃ、本題に入ろうか」
…うん。マーリンさん、時間がないなら言わなくてもいいんだよ?
「おっと?他の君より随分素直なのはびっくりだ」
だって、わざわざ僕に声をかけたんでしょ。
「そうさ。他のサーヴァントには出来ないことだから君を呼んだ」
僕の行動で、彼女を助けられるんでしょ。
「おや、そこまで見抜いていたとは驚いたよ。彼女の授業はよほど質が良かったみたいだね」
…これは、僕が死んだ後に覚えたんだよ。
「…そこまで覚悟を決められるとは驚くよ。強い後悔だけで残っていられるなんて、よほどのイカレ野郎だ」
ううん。これは彼女を見てたからなんだ。
「というと?」
彼女は何千年もかけてブリテンを抑えてくれたんだ。僕が残ったのは数百年─ほら、意志だけならこれくらいは支えきれるよ。
「素晴らしい答えだね。彼女のことが今でも好きかい?」
もちろん。僕からの一方的な恋だとしても、大好きなんだ。
「だから死地へと向かう、と。わかっているのかい?」
どのことを?
「ここで助けないほうが自分たちにとってもいいこと、とは考えないのかい?少なくとも、有力な敵は消えるじゃないか」
バカだなぁ。もっと単純な理由だよ。
「単純な理由?花の魔術師に教えてはくれないのかい?」
別に教えてもいいけど、すごくくだらない理由だよ?
「構わないさ。なにせ推理小説なんてもっぱら読まないから寧ろ助かる!」
…わかったけど、他の人には言わないでよ。凄い嫌な匂いがあっちからしているし。
「おや、キャスパリーグのことに気づくんだね。もしかしなくても君はこちらの彼より優れている」
うん。とりあえず、マーリンさんじゃなくて彼女でよかったね。
僕が戦う理由。
それは─
─愛する人のために、だよ。
キャメロット。中身は全てが崩壊していて、騎士団のみと戦闘するかのような拍子抜けする結末だった。
「そのままでよいです。私はもう死にゆく者─敵対する意志も、戦闘することもできませんから」
笑うこともない鉄面皮でそう言い放つ。死ぬとわかって尚も荘厳な雰囲気は美しい女神そのものだった。
「…よかったです。ベディヴィエール卿が報われましたね、マスター」
「うん。…それに、トリスタンもここまでありがとう」
ここまでやってきた仲間─その内の一人は聖剣を返して露と消え、もう一人は苦悩しながらもここまでやってきた。
「勘違いすんじゃねぇ。私はお前らみたいな人理側のサーヴァントとしては呼ばれることはこれ一回だ」
当の本人はすぐにでも消えたそうな顔をしているが、間違いなくブリテンの騎士団を壊滅は彼女の協力なしには成し遂げられなかっただろう。
それほどの武勇を持って、偽りのトリスタンを名乗る彼女。正直に言えば、バーサーカーしかその正体を知らないものだった。
「そもそも貴卿そのものもイレギュラーでしょう。これまでの世界に存在しない、私とは異なるブリテン世界のサーヴァント」
…とはいえ。
ある程度正体の推察ができるのもまた事実。一国の王であった彼女は堂々と一端を
「そこまで理解されてんのかよ。…あぁ、私の世界の話を語ったほうがいいのか?」
「余裕があれば聞きたかった。だがそれがなくなるように攻められてはどうしようもない」
死角の詰め方。戦闘する際の思考の癖。それら全てを見聞きしていたトリスタンにとって戦いやすい相手ではあった。
(結果論だが殺せてよかったな)
そんな冷静な思考が頭の中で産まれつつ、獅子王へと問いかける。
「ってかこんなやり方したら人理以前に成り立たないことくらいわかってんだろ?」
子供じゃなくて大人。
落とし前は─ついていない。
「全て罪ありきで囲い込むことすらできなかったお前の目には、どんな
妖精騎士トリスタンにとって、罪とは身近にあり続けたものだ。
悪意を以て悪行を為す。
希望を踏みにじり悪辣に振る舞う。
妖精からの悪意を、それ以上の悪意で返す。
どのような行為であれ、トリスタンは自分の行動とは「その他大勢の善」を切り捨てる「罪」と自覚がある。
(でも、完璧な善などバーゲストでも不可能。根っからの善も罪を犯さないことはないし、根っからの悪も善行をする)
「罪」と自認した行動。「善」と賞賛される行動。
境目などわかるわけがない。
「答えろよ、獅子王。輝かしきブリテンを治めしかつての騎士王」
故に、彼女は問うのだ。
「標本」と称される他を捨てる方法。自身の愛する者だけを選び取るために、その他全てを排斥する方法。
そこに治世としての「善」はあったのかと。
そもそも人を愛していたのかと。
自分のいた世界と、何が違うのかと。
「そう、ですね」
死ぬ前だとわかっているからか、妙に獅子王の頭は冴え渡っている。
どこまでも自分勝手な行動。
聖都キャメロットのみを保護するような行動。
それら全てを踏まえて出そうとした結論は、まとまりがどうしても少なかった。
誰に伝わるようにするべきか、と考えて。やっと彼女に一筋の理論が通った。
「私は」
獅子王の本音。死ぬ前の戯言。
「認めてもらいたかったのです」
人理が無くなったとしても、ここに確かに息づいていた生命があると。
失われた命も、その他を守るためにあったのだと。
夜明けが近づいてきたことを示すように、一筋の風が血塗られた体を撫でる。
「人として、正しく生きれたのだと」
切り捨て、否定し、殺した。
円卓に集いし騎士を利用した。
あるいは自らの過ちを理解した。
その上で、彼女は正しいことを為したと断言する。
「
微笑みを浮かべ、戦闘の余波で崩れ落ちた床の先へと歩を進める。
「さて、妖精騎士トリスタン。私はあなたに褒美を与えることはできません」
女神は神々しき存在感を持ってカルデアと接する。自らが剪定の剣を選んだような、あの荘厳さを以て。
「ですから、皆様に情報を渡しましょう」
どこまでも悲しい言葉を、別れを以て断言する。
「存在できる世界は一つだけ」
「もし仮に、汎人類史の世界が定着すれば」
耳を塞ぎ、目を瞑りたい事実。
二人の女が理解した、残酷な真理。
「もし仮に、二つ目の世界の存在がいれば」
定まりし瞬間。終わりだと決定された終着点。
「存在は、死にゆくことでしょう」
ゆらり、と影が揺らぐ。
夜明けを祝福するかのように、美しい朝日が全てに等しく降り注ぐ。
「どのような結末を辿るのかは知りませんが─」
どうか、どうか。
「悔いのない、終末を」
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