モルガン陛下が最初のバーサーカーになったマスターの末路 作:湿度100モルパーセント
キャメロットから帰ってきた翌日。詳しいことを聞く前にショックで寝込んだ俺は、起き抜けからとんでもないことを告げられた。
『落ち着いてくれ、立香くん。まず君は聖杯を手に入れて七つの特異点をクリアした─という状況なんだ』
「寝てただけなのに!?」
夢の中で終わる特異点。思い出すことすらできないが、終わらせた証明は確かに手の中の盃が証明していた。
(つまり、やばくね?)
「準備整えたらすぐに向かいます!」
眠気が吹き飛んだ。少なくともラストバトルの朝がこんなことになるとは思ってない。
『頼む。バーサーカーもマシュもこちらに来ているからね』
寝癖を直し、なぜかあった短剣を持ち、キャメロットの礼装を着る。
(どうすれば、勝てるのかな)
勝利の糸口も見えないし、バーサーカーの正体についてもそんなに見当はついていない。
何もかもわからないけれど、それでも前に進まなきゃいけない。両頬を強く叩いてまだ暗い廊下を走り抜けた。
「おはようございます、我が夫よ。寝坊していると思ったらまさか聖杯を見つけるとは…」
「おはよう、バーサーカー。朝からありがとうね」
彼女は様々な魔術を同時に使用していて、傍から見ても異常事態なのは明らかだった。
「うん、色々と言いたいことはあるけど事態は急を要するんだ」
「…簡潔に伝えますと、今はソロモン王と私の領域勝負を行っています。七つの特異点を修復し敵と認められた証拠です」
バーサーカーからの言葉でほっとすると同時に、とある恐怖が腹から湧き上がる。
(…あんなバケモノと、戦うのか)
正面から戦うとしてもあの魔神柱が幾つも護衛だろうし、どこまで戦闘できるかわかりやしない。敵と認められないことのほうがよかったと思えてしまう。
「しっかりしなさい、我が夫よ。戦闘する前から不安な姿を見せるのは指揮官としてもいけません。それに…」
どこか悲しみを帯びた表情で彼女は微笑む。
「…私の夫なのですから、負けることなんてありませんもの」
返答することすら気恥ずかしくなってプイッと顔をそらす。その視線の先にいたのは今まさにバーサーカーの手伝いをしていたダ・ヴィンチちゃんだ。
「朝っぱらから夫婦漫才する余裕があるのは大いに結構!これから最後の特異点に向かうからね、心残りは残さないほうがいい」
茶目っ気たっぷりにこちらをからかってきた彼女の顔は晴れやかで、何一つとして隠していることはない。…というより、それくらいには領域勝負は有利だと思っていいだろう。
(実際のところ、どれくらいバーサーカーが凄いのかなんてわかりはしないけどね…)
違う世界のサーヴァント。この特異点の修復でバーサーカーが死ぬかもしれないなら、受肉していたって文句は言えない。
「…おはようございます、バーサーカーさんに先輩。武装してきましたが…?」
「そうだね。全員揃ったことだしミーティングを始めよう」
ドクターから告げられた内容は、まあなんとなく察していたものだった。
ソロモン王が待ち構えている特異点が見つかったこと。
同時にこちらが補足され、勝利するためには攻め込むしかないこと。
「…バーサーカーは来てくれるの?」
「ええ。あの魔術師には気になるところもありますから直であって確かめたい」
それに、と彼女は続けた。
「私の宝具に関して一度もあちらへと渡っていません。キリエライトが守り、私が攻めればある程度の勝機は見えます」
ある程度、と彼女は言う。自分の戦力が理解しているバーサーカーがある程度と言う原因はなんだろうか。
(…間違いなく、自分だろうな)
ある種間違いのない事実に、自分が思っている以上の無力さを痛感する。戦術的な意味は理解していても、納得はいかない。
「どこにいれば邪魔にならな「やかましい」」
そんなマイナスから出た発言を彼女の言葉と指先で止められた。余計な魔術まで使おうとしている。
「人類最後のマスターが戦闘すること自体がおかしいのです。邪魔など卑下するより、私を使った戦術をその場で組み立てなさい」
「寧ろ私の傍にいたほうが安全です─」
いつか見た救世主じみた笑みで彼女はこちらを見る。
「─世界を救いましょう、マスター」
Ⅰ/溶鉱炉ナベリウス。
Ⅱ/情報室フラウロス。
Ⅲ/観測所フォルネウス。
Ⅳ/管制塔バルバトス。
Ⅴ/兵装舎ハルファス。
Ⅵ/覗覚星アモン。
Ⅶ/生命院サブナック。
魔神柱を英霊が抑える中をカルデアは駆け抜ける。今ここで振り返ることこそ裏切りと知っているから。
「見つかった…!」
ついに見つけた玉座への道。もはや焼却まで猶予はないと理解したからこそ、力をこめて走り抜けようとする。
『無念なり、無常なり』
─だが。
予想を裏切る八つ目の魔神柱。人類を救うことのない意思の終わり。七つの特異点のみを修復したマスターに否をつきつける、最後の砦。
「玉座攻略前に…!」
この世界においてマスターはいずれのイベントも通過していない。
監獄塔へと誘われることも。
宇宙の彼方へ連れ去られることも。
鬼ヶ島で鬼退治することも。
三蔵法師に連れられて旅をすることも。
それらを全て消し去ったのは誰か。
(まさか、私が─)
他でもないバーサーカー。異聞帯より降りし冬の女王。
本来の世界において、存在しない
彼女こそが、この原因だ。
『諦めて頭を垂れよ。我らが偉業をその目に焼きつけよ』
彼等が勝利を確信したそのときの綻び。魔力を収束させて殺し切るための猶予を、彼女はつくことはできなかった。
『この上なく無様に死ね─』
その言葉を否定することすら不可能で─
「そんなこと、させるわけないだろう?」
─あり得ぬ幻想の騎士が妄執ごと打ち砕く。軽やかな剣戟の音が絶望した彼女の鼓膜に響いていく。
「…そん、な」
彼女は理解する─なにせ、自らが教えた技術なのだから間違えることなどない。
実戦で磨かれた荒々しい剣術。夕日の丘で教えていた日々がありありと思い出させる。
持ち手にあった握る手の不均一さも、亡骸を抱きしめたときと変わらない背丈まで一瞬で捉えられた。
「僕がいること…は、おかしいよね」
自分が困らせたことを理解している顔も、ワガママで自分を妻にしたいと言ったときと変わらない。
自分のやったことで感じた気まずさで出した声も、記憶の中で一致している。
「いいえ…私のことは、わかりますか?」
あえて、問いかける。どうか汎人類史であってくれと。
冬の女王として完成した自分を知らぬ唯一の親しかった存在。
自身が救えなかった、最大の後悔。
「もちろんだよ、救世主さん」
あの日あのとき、最初にかけたときの声と変わらずに彼は話しかける。
自分が愛した人のことを忘れるはずがない、と。
持っている思いは変わることがない、と。
「始めましてと言っておこうか、カルデアのマスター」
彼はその姿を二人の前へと現す。
バーサーカーよりも少しだけ小さい背丈には、かつて真紅で染まった翡翠色のマントが翻る。
かつて共にあったときに同じ色だった素肌には強い呪いが染み付いている。
竜の因子を持たない、愚かなる罪人に殺された王になるはずだった騎士。
その死を以て、救世主であったトリネコを冬の女王へと変化させたと悔やむ罪人。
マーリンに連れられて来たかの騎士の真名は─
「救世主第一の弟子、ウーサー。異聞帯から君のためにやってきた!」
モルガン陛下ピックアップ終わるまでにソロモンは終わらせます
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