邪眼皇ロマノフ一誠は″兵士″になっていた   作:邪眼帝

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どこにも繋がっていないと思っている、そんなみんながどこかで繋がっているから、生きていける。


その10

「一誠、研修に行くから支度なさい」

「唐突ですな」

「兵は拙速を尚ぶものよ。あれこれと忙しくて説明を後回しにしていたけど、そもそも眷属悪魔の仕事は討伐任務や巡回だけではないわ。人間と契約を交わして対価を頂戴するのも仕事よ。だから、今回はその研修ね」

「承知しました、リアス様」

「ちなみに歩いていくから。ウォーキングも兼ねて散歩するから。異論は認めないから」

「そんな無茶な」

 

 かくして、一誠とリアスは夜の駒王町の散歩へと繰り出した。部室を出る直前、朱乃がニマニマと笑みを送ってきたのは無視だ。予め選んでおいた依頼主の自宅に向かうまでの道すがら、リアスは眷属悪魔の行うべき日々の業務について説明する。

 まず、依頼を行いたい者は使い魔が配布している専門のチラシなどを介して、担当区域もしくは最も近い悪魔にコンタクトを取り、依頼内容を簡潔に伝える。悪魔側は依頼主の身元調査を行い、問題なしと判断した場合、報酬や期間などに対する直接交渉を経て取引成立または不成立となる。

 身元調査を挟むのは、敵対勢力による罠や奇襲を警戒しての措置だ。

 今回、一誠の初研修としてリアスが選んだ依頼主は、彼女の顔馴染みのサラマンダー富田という河童である。

 

「ご無沙汰してます、リアス様」

「息災そうね、富田さん。以前に貰ったキュウリはとても美味しかったわ。ご実家のお母様は元気かしら?」

「ええ、リアス様が腕のいい病院を紹介してくださったお陰で腰痛も治り、ピンピンしてます」

「それは良かったわ。ところで、事前に連絡したように、今回の依頼には新人を同席させてもらいたいの。無論、こちらの都合だから対価に関しては割引するわ」

 

 一時間後、初研修も無事に終わり、二人は駒王学園への帰路に着く。これから数回はリアスや朱乃達の仕事を見学し、次に一誠がメインで依頼主との交渉を担い、その仕事振りに対してリアスが合格を判断すれば研修完了となる予定だ。

 サラマンダー富田の暮らす沼地から駒王学園までは、そう遠くない。それこそ転移術式を用いれば即座に帰還できるのだが、なんとなく、一誠もリアスも行きと同じように徒歩を選択した。

 一誠は真夜中特有の寂しい雰囲気に闇文明の温もりを覚えながら、隣で肉まんを頬張るリアスに話題を振る。

 

「それは美味いのか?」

「寒い日は特にね。食べてみる?」

「食べ残しを差し出すな」

「えい」

「あっづ!」

 

 口に肉まんを放り込まれ、一誠は思わず近所迷惑な悲鳴を漏らした。途端に、「ファンにでもやれ」と彼からの鉄拳制裁が落ちる。学園のアイドルの頭を張り倒すという、ともすればファンクラブが暴動を起こしかねない暴挙だが、当の本人は痛がりながらも楽しそうだ。

 

「もしや、被虐趣味か」

「違うわよ! これまで、こんなやり取りをした経験がなかったから新鮮ってだけ! 別にクラスメイトがどうこうってわけじゃないけど、どこか遠慮してるしね」

「アイドルも大変だな。しかしだな、はしゃぎたいなら正直にそう言えば他のメンバーも喜んで参加するだろう。アーシア嬢の歓迎会も兼ねて、そういった催しを企画してはどうだ?」

 

 一誠は、数日前にグレモリー眷属に加入した新たな仲間のことを思い出した。

 廃教会での戦闘で救出されたアーシアは、貴重な回復系統の神器である″聖母の微笑″の所有をアピールポイントに、自分の眷属入りと保護をリアスに願い出た。一方のリアス側も、悪魔も癒す治癒能力を見逃す手はないとこれを快諾。こうして誕生した元シスターの″僧侶″は、一誠と同じクラスに留学生扱いで転入したのである。

 

 そしてもう一つ、変化があった。リアスの使い魔であった蝙蝠の移籍だ。

 

 即ち、アーシアと同じく救出された彼女は、一誠の配下に移籍したいと嘆願した。本人曰く、命を救われた恩を返したいらしい。あまりの熱意にリアスも根負けし、一誠も同意したことで移籍が認められた。契約を結び直した今は新たにベラドンナの名を与えられ、彼直属の使い魔として今夜もチラシの配布中だ。

 他にも、一誠がこれまでの変態行為を改めたばかりか謝罪して回ったことで学園中が大騒ぎになったり、アーシアが転入初日の挨拶で一誠に助けられたことを暴露したことで大騒ぎになったり、黙っていれば一誠の顔は相応に整っているので密かに女子人気が上昇しつつあったり、それを耳にしたリアスが少し不機嫌になったりしたが、概ね平穏な日常生活を過ごせているといえる。

 

 尤も、一誠がそんな様子だからこそ、リアスは慌てて彼の研修を開始したのだが。

 

 そして、彼女の心境の変化を見抜けない彼ではなかった。「何を恐れるのだ」と一誠は口にした。疑問符を付けなかったのは、リアスの行動の意図を察しつつあると暗に伝えているのだ。

 

「別に。怖くもないし、焦ってもないわ。″王″たる者はどっしり構えてないといけないもの」

 

 貴族としての恩恵に預かっている以上は与えられた責務も果たさなければならない。そう自分に言い聞かせながらも、リアスは訊ねずにはいられなかった。

 

「ねえ、一誠。今回のように、もし私が危機に陥ったとしたら、あなたは私を助けてくれる?」

「全力で救うと約束しよう」

「……それが例えば、私の個人的な理由が原因だったとしても? ″王″ではない、グレモリー家の次期当主でもない、ただのリアスだとしても? あなたの力を利用する形になっても?」

「回りくどい。小娘が気を遣うな。いつもの強引さはどこにやった。言いたいことは正面から言え。助けて、とそれだけを口にすればいいのだ」

「そう……ありがとう、一誠。ああ、折角だから少し遠回りして帰らない? 駅前のコンビニはスイーツの品揃えが豊富なのよ」

「まだ食べるのか」

「異論は認めないから」

 

 月明かりの下で、前よりも距離の近くなった二人は散歩を続けるのだった。




白銀のシュシュ
C 自然文明 (4)
クリーチャー:ドリームメイト/ダイナモ
4000

ダイナモ
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