邪眼皇ロマノフ一誠は″兵士″になっていた   作:邪眼帝

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祝福の扉が開かれる……呪われた祝福の。


エピソード2
その11


「おめでとうございます、陛下」

「とても綺麗だわ、リアス」

「晴れの舞台だからね。グレモリー眷属総出で祝わせてもらうよ。披露宴の後には余興も用意しているから楽しみにしておいてくれ」

「リアス様ー!」

 

 自室で眠っていた筈が、一誠は気付けば部室の中央に立っていた。室内は華やかに飾り付けられており、一誠自身も黒いタキシードで着飾っている。また、周囲には元の世界での部下やオカルト研究部の仲間達、村山や片瀬といったクラスメイト、挙げ句に死亡した筈のレイナーレ達までもが正装で並び、何故か肉まんを手渡してくるという奇妙奇天烈摩訶不思議の奇想天外四捨五入な状況だ。

 そして更におかしな点を挙げるとすれば、「絶対に幸せにするわ」と真っ正面から男前な笑みで告げてくる、ウェディングドレスを纏うリアスだろう。

 これは夢だな、と一誠は直感した。彼にはリアスと挙式する予定はない。それどころか交際したこともない。わざわざ部室で式を行う意味もない。

 かといって、華の咲いたような笑顔で披露宴を待ちわびるリアスを無碍に扱うこともできず、一誠はされるがままに彼女と腕を絡ませた。空き手には、肉まんの詰められたレジ袋がぶら下がっている。

 

「闇の長にしては、随分と煌びやかだな」

 

 突如、威厳のある低い声が頭上から轟いた。驚いた一誠が天井を見上げると、火文明を体現したかのような赤いドラゴンが、ゆったりと彼を見下ろしていた。いつの間にか、あれだけ騒いでいた来賓客は全員が姿を消しており、リアスもまた笑顔のままでフリーズしたように動かない。

 夢だからと言ってしまえばそれまでだが、あまりにも支離滅裂な展開だ。 

 一誠が呆れ半分でドラゴンを見つめていると、その左手に激痛が迸った。見れば、手の甲が翡翠の輝きを放っている。ただの光ではなく、ドラゴンの顔を模したような紋章だ。目覚めかけているのだ、とドラゴンは厳かに告げた。

 

「我が名は、赤い龍の帝王──ドライグ。お前の内に宿りし者だ。お前の経緯は把握している。別世界から憑依してきた際には驚いたぞ」

「……レイナーレが兵藤一誠を殺害したのは、彼が神器を宿していたからだ。そこから察するに、貴様がその神器の中身か」

「ああ、正解だ。神器の名は、″赤龍帝の籠手″。極めれば神をも殺すと謳われる強力な代物だ。覚醒さえすればな」

「どうやって覚醒する?」

「強く願えばいい。加護も憎悪も神器は平等に受け止める。仮にお前がそこの悪魔の女を守りたいと願ったなら、俺としては気に食わんが、それが覚醒への後押しになるだろう」

 

 ドライグは、ぶっきらぼうに助言した。同胞として一誠のことは気に入っているが、悪魔の女に使われている点だけは認めたくないものだ。

 対して、一誠は自分の左手とリアスの顔を交互に眺めた後、決意した顔で述べる。

 

「恐らくだが、覚醒は近い。グレモリー家絡みの厄介事が飛び込んでくるだろうと踏んでいる」

「その日を楽しみにしておくぞ」

 

 約束を交わし、一誠は夢から目覚める。そして、隣で眠るリアスを叩き起こす。

 どういうわけか、ここ最近のリアスは多種多様な建前を並べては寝ている一誠のベッドに潜り込むようになった。彼女が制裁を与えられるのも、一度や二度ではない。

 そして、ちゃっかりと朝食を頂戴してから通学するのも、兵藤家の朝の風物詩となりつつあった。

 

「ご馳走さまでした。さあ、エスコートしなさい」

「腕を絡ませろとでも?」

 

 これは夢の影響で飛び出た言葉だが、一誠が己の失言に気付いたときには手遅れだった。

 それから数十分後、駒王学園の校門前は阿鼻叫喚に包まれることとなる。浮いた噂の一つもなかった学園の有名人が、つい先日まで変態三人組の一角として知られていた有名人と仲睦まじく腕を絡めて登校してきたのだから。

 

「もう満足したかね?」

「まだ駄目よ。きちんと教室まで送りなさい」

 

 そうか、と一誠は観念したように頷いた。遠巻きに眺める見物人からは黄色い歓声と絶望の悲鳴と、それから男性陣の呪詛が多分に感じ取れる。

 

「こら、余所見しないの」

 

 朝の意趣返しか、リアスは一誠の額をビシと小突いた。そして真剣な表情で口を開く。

 

「今日の研修についてだけど、依頼主は他ならぬこの私よ。あなたに相談したいことが、あるの。放課後になったら部室じゃなくて……先に、私のクラスまで迎えに来てもらえるかしら」

「……応じよう、ただのリアスからの依頼を」

「待っているから」

 

 その後、少しの雑談を経てからリアスを教室に送り届けた一誠は、周囲の注目から逃げるように立ち去ろうとする。しかし彼を呼び止め、階段の踊り場へと連れ出す者があった。リアスの公私を支える朱乃だ。

 仲良しで羨ましいですわ、と朱乃は開口一番に切り出した。間近に迫っている厄介事についてリアスが打ち明けるつもりでいることも、彼女は察していた。

 一誠もまた、リアスから相談という名の依頼を受ける予定であることを延べた。その内容を既に把握しているからこそ、朱乃が話しかけてきたことに気付いたからだ。

 

「ねえ、一誠くん。どうか、リアスの力になってあげて。悔しいけれど、私達ではどうすることもできないの。だから、一誠くんなら……」

「そう言われても、本人から内容をまだ伝えられてないのに安請け合いするわけにはいきませんな。無論、全力は尽くしますが──」

「結婚するのよ」

「……誰が、ですか」

 

 動揺する一誠に、朱乃は告げる。

 

「もうすぐ、リアスは結婚しなければならないの」




ウェディング・ゲート
R 闇文明 (6)
呪文

S・トリガー
光でも進化でもないエンジェル・コマンドを2体まで、自分の手札からバトルゾーンに出す。
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