邪眼皇ロマノフ一誠は″兵士″になっていた   作:邪眼帝

12 / 28
そして時は凍りついた。


その12

 放課後、支度を終えた一誠は三年生の教室がある階層へと向かい、教室前で待っていたリアスと合流する。ここでまた周囲から悲鳴と歓声を浴びたのだが、彼としては最早どうでもよく、例の件について確認することしか眼中になかった。

 新校舎を抜け出し、部室のある旧校舎が目と鼻の先に見えてくるまで、一誠はリアスの裾を掴んだままであった。

 

 結婚するのか、と一誠は強い口調で言った。

 

 彼がそれを知っている理由について、リアスが驚愕を見せないのは、先に事情を言ってしまったのだと朱乃から謝罪されたからだ。無論、リアスとしても彼女の心境は理解している。だから、そこは叱責せずに、それを聞いた一誠がどのような反応を示したかを訊ねた。「珍しく動揺していたわ」という朱乃の答えに嬉しさを感じていたのだが、どうやら予想以上に彼の焦燥を招いてしまったようだ。

 リアスは、「確定ではないわ」と宥めた。政略結婚は貴族の常だが、やはり兄のような恋愛結婚を果たしたいのが彼女の本音だ。

 

「親同士が決めた婚約ってだけよ。相手は、ライザー・フェニックス。軽薄で女誑し、会う度に私の胸ばっかりチラ見してくるような名門フェニックスの三男坊よ」

「それは……幸せな家庭を築けそうにないな」

「でしょ?」

 

 グレモリー家はフェニックスの涙を、フェニックス家は魔王との隠然たるコネクションを。互いの利益が一致しての婚約だが、当のライザーは自慢のハーレムが増える程度の認識でしかなく、それが彼女にとっては我慢ならないことだった。

 

「私は、幸せになりたいの」

 

 だから力を貸して、とリアスは言った。既に決められた両家の婚約を覆すのは至難の技だが、手段が限られているだけで皆無というわけではない。そして、その手段については、メイドのグレイフィアがそれとなくヒントを出していた。

 

「領地運営だけでなくレーティングゲームの勉強にも注力すべき、ってね。堕天使討伐作戦の報告書を送った際に進言されたの。それがライザーとの婚約に関係していることは、すぐに読み解けたわ」

 

 報告とは無関係なことを唐突に言われれば、聡い者ならリアスでなくともグレイフィアの遠回しな助言に気付く。

 即ち、破談にしたければレーティングゲームを持ちかけて勝利しろ、というのだ。

 一誠は、レーティングゲームに関する詳細な説明までは受けていないが、そう口にした際の彼女の声音から、戦国武闘会に似て非なる催しだろうと解釈した。

 

「そのライザーとやらを叩き潰せば、リアスの悩みも解決するのか。容易いことだ」

 

 そう告げた直後、リアスの耳元に紅の通信術式が起動し、そこからグレイフィアの声が響く。

 

『リアス様、約束をお忘れですか? 部室にてライザー様がお待ちでございます。また、他の眷属の方もお揃いです。お急ぎください』

「ああ、うっかりしていたわ。連絡してくれてありがとうね、グレイフィア」

『……フェニックス家に嫁げば、リアス様は良き妻良き母とならなければいけないのですから。結婚後はお転婆も自重してくださいませ。そんなことでは準備を進めているサーゼクス様も嘆かれますよ』

 

 小声で続けられたそれは一見すると義妹への苦言だが、その実はリアスへの助け船が満載だ。

 

 フェニックス家に嫁がなければ、リアスは良き妻良き母になる必要もない。結婚するまでは多少のお転婆も見逃そう。それこそ婚約破談を目論んでレーティングゲームを仕掛けても構わない。サーゼクスも密かにその手配をしてくれている──と言い換えることも、屁理屈を駆使すれば可能だ。

 肩を竦めたリアスは通信を切ると、傍らで聞き耳を立てていた一誠に視線を戻した。彼もまた、主君同様に黒い笑みを浮かべている。魑魅魍魎の跋扈する闇文明の中を生き残ってきたナイトとあって、謀略は十八番である。

 

 部室に向かう際も、二人の作戦会議は止まることを知らない。

 

 ライザーにレーティングゲームを仕掛けるまでは確定事項として、全ての要求を鵜呑みにするような間抜けではないだろう。ゲームを受けるに値する交換条件を提示する可能性が高い。

 そういった不利益や不平等を口八丁手八丁の交渉術で誤魔化し、自分に有利な契約を知らぬ顔で成立させてこその、悪魔である。

 そして付け加えるなら、それらを正面から押し通してしまうのがサムライなのだ。

 

 相談の末に一芝居を打つことにした二人は、部室の扉を開ける。

 

「ただいま、みんな。日直の仕事で遅くなってしまってごめんなさいね。そして……会うのは久し振りかしら、ライザー」

「やあ、愛しのリアスよ。今日も美しい……おいおい、俺という未来の旦那がいるのに、そこに連れているクソガキは誰だ?」

 

 その途端、聞き慣れない男の声が二人の耳に飛び込んできた。最初こそ嬉しそうだった声音はリアスの隣に立つ一誠を見付けるなり、あからさまに不機嫌になっていった。声の主は、金髪と赤いスーツが特徴的なホスト風の男だ。

 案内人のグレイフィアが説明しようとするも、リアスはそれを手で制した。

 

「落ち着きなさいよ、ライザー。彼は私の新しい眷属悪魔なの。遅くなってしまったから教室まで迎えに来させただけよ。一誠、挨拶を」

「リアス様の″兵士″に転生しました、元人間の兵藤一誠と申します。ところで、ライザー様はリアス様の婚約者であられると聞きましたが」

「……そ、そうだ。この婚約はな、両家の将来のためにも必要で大切なものだ。一介の下僕悪魔が口を挟むんじゃない」

「そのことについてだけど」

 

 安堵したライザーが答えたのも束の間、今度はリアスが口を開いた。

 

「あなたとの婚約、考えさせてもらいたいの」

「失礼しました。ライザー様はリアス様の元婚約者のようですね」

 

 サムライとナイトの共闘に、その場にいた誰もが絶句した。




ザ・ユニバース・ゲート
R 火文明 (6)
呪文

自分の山札の上から3枚を表向きにする。こうして表向きにしたフェニックス・クリーチャー1体につき1ターン、このターンの後に自分のターンを追加する。(表向きにしたカードを元通りの順序で山札の上に戻す)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。