邪眼皇ロマノフ一誠は″兵士″になっていた 作:邪眼帝
「眷属悪魔が生意気な……いや、そんなことはどうだっていい! 俺との結婚を考えさせろとはどういうつもりなんだ!」
ライザーは、大声で捲し立てた。
「分かっているのか! これはフェニックス家とグレモリー家の合意で結ばれたものだ! リアスの一存で覆せるわけがないだろう!!」
憤怒のあまり、背から炎の翼を噴出させながら並べられたライザーの怒号は、正しいものだ。
既に婚姻に向けて関係各所も準備を進めており、正式発表まで秒読み段階に入っている。それを大した理由もなく破談にしたのでは、両家の顔に泥を塗るばかりか信用問題にも繋がってしまう。
「破談にしろとは言わないわ! けれど、私だって結婚生活が不安で仕方ないのよ! 噂だと、眷属を女性のみに限定して、ハーレム王を気取ってるらしいわね? 私のことも自分の隣に侍らせておく装飾品としか見てないんじゃないの!?」
「……それとこれとは、別の話だ」
「否定しないなら私も気に入った男を侍らせるけど文句ないわね。お互い様だもの」
「ふざけるな! そんなみっともない真似が俺の妻として認められるか!」
「なーにが、俺の妻よ! 人形扱いの癖に!」
リアスの鋭い指摘に、今度はライザーが言葉を詰まらせる。
何故、夫のみがハーレムを許されて妻は許されないのか。反射的に言い返したものの、彼はその根拠を説明できなかった。
ここで、リアスの傍らに控えていた一誠が、白熱する二人の間に割って入る。
「落ち着いてください、リアス様。そのように興奮なされては議論にもなりません。ライザー様も、ここはどうか紳士的な対応を。言葉とは剣よりも銃よりも強いもの。一時の感情に任せて用いるべきではありません。まずは茶でも一服し、普段の冷静さを取り戻してくださいませ。議論は休憩を挟んでからでも遅くないかと。ライザー様、人間界の茶をご賞味ください」
「おお、新人にしては気が利くな。少し喉が渇いてきたところだ」
美味いな、とライザーは差し出された茶を飲み干した。
「……すまない、リアス。俺としたことが熱くなってしまった。そこの新人くんにも強く当たってしまったことを詫びよう」
「いえ、私も言い過ぎたわ」
「ライザー様への不敬を心より謝罪いたします。そして、リアス様。恐れながらこの場での発言を許可願います」
「許すわ。なにか良い知恵でも?」
「はい。ですが、その前にお二人の意見を整理してみましょう」
将来への不安から婚約の破棄を考えているリアスと、受け入れることはできないライザー。二人の意見は対極に位置しており、内容的に妥協点を見出だすことも困難である。
客観的に見ればリアスは個人の都合を押し通そうとしているのだが、ライザーの素行や異性問題を省みれば不安視するのも納得できる。
このまま議論を重ねたところで、どちらも折れるつもりがない以上は平行線を辿るのみ。
「ここは、リアス様とライザー様に何らかのゲームで対決してもらい、その勝敗で決めるのがよろしいかと愚考します」
成り行きを見守っていた朱乃達は驚愕したが、一誠は気にせずに提案を続ける。グレイフィアのみが彼の魂胆を正確に見抜き、そっと目配せする。
「悪魔社会は実力主義であると、リアス様は仰っておられました。つまり、勝った方が正義なのです。勝てば官軍なのです。正々堂々の戦いで決めたとなれば、ご両家も納得するのではありませんか」
「──それならば、レーティングゲームでの決着はいかがでしょう」
機を逃さず、グレイフィアが口を挟んだ。
そして、これでチェックメイトだ。
「ご存知でない方もおられると思いますので改めて説明いたしますが、レーティングゲームとは主君たる悪魔が自身を″王″に、眷属悪魔をチェスの駒に見立てて争う競技のことを指します。今回なら、ライザー様とリアス様が″王″となります」
「……俺は構いませんが、それではリアスが少しばかり可哀想ですね。俺は既にレーティングゲームで八勝を挙げていますが、リアスは未経験ですから」
「そもそも、勝負での決着を提案したのはリアス様の方です。寧ろ、多少の不利を呑んでこそフェアになるかと考えています。その点は、眷属の人数差も同様です」
芝居を打つにあたり、ネックとなったのはリアス本人の性格だ。真っ直ぐで小細工に向いておらず、下手に演じれば必ずボロが出る。
レーティングゲームでの決着──着陸すべき最終目標から逸れてはならない。
思案した一誠は彼女の性格を逆手に取り、いっそのこと本音をぶつけてもらい、自身は補佐に徹することに決めた。
まず、敢えて二人でライザーを怒らせるような言動を取り、冷静な思考力を削いだ。
リアスはそのまま言い争いを続け、タイミングを見計らって一誠が介入する。この際、それとなくライザーに寄り添う姿勢を見せ、一誠の提案に耳を傾けるまでに気を許させるのがポイントだ。
仕上げに、互いの意見の整理という名目で早口に現状を捲し立てれば、自然とレーティングゲームを行う雰囲気に持っていくことができる。
無論、グレイフィアからの掩護射撃も欠かせないアクセントである。あたかもライザーとリアスが既にレーティングゲームの開催に合意したかのように説明を行い、前者に対しては参加するメリットを提示──ライザーの優位性を強調したのだから。
「分かりました。このレーティングゲームに参加しましょう。しかし未経験者を相手に圧勝したとあっては、俺の沽券に関わります。また、出来レースだと周囲から謗りを受けるかもしれません。ハンデとして、リアスに準備期間を与えるべきです」
「認められるハンデは三日間のみとなります」
「三日だけなの?」
「はい。明日の金曜は祝日ですので、土日を含めて三日間となります。そして、最後の日曜の夜にレーティングゲームを行います。先程も申し上げましたが、これもまたゲームをフェアにするための措置とお考えください」
「……分かったわよ」
リアスが頷いたことで、レーティングゲームの開催が確定した。両家に事情を説明するべくライザーとグレイフィアが部室を後にしたことで、室内には大まかに分けて二つのグループが残った。策が上手く進んだことをハイタッチで喜ぶリアス達と、何も聞かされていない朱乃達だ。
「……リアス~? 私、親友なのにこれっぽっちも聞かされてないんだけど~? あれだけ心配してたのに~? 親友にナイショで話を進める口が悪いのかしら~?」
「いひゃい、いひゃいわ、朱乃。敵を騙すには味方から、って言葉もあるひゃない。それよりも、全員すぐに支度ひなさい。合宿するわよ」
一方、実家に帰宅したライザーも事情を聞いた妹に説教されていた。
「いひゃい、いひゃいぞ、レイヴェル」
「お兄様のバカ! エセホスト! 相手の要求を丸呑みするどころかハンデまで与えて! 悪魔が交渉術で負けてどうしますの!?」
実は似た者同士かもしれない二人であった。
光神龍スペル・デル・フィン
VR 光文明 (9)
クリーチャー:アポロニア・ドラゴン
6000+
W・ブレイカー
相手は、手札を表向きにしてプレイする。
相手の手札にある呪文1枚につき、このクリーチャーのパワーを+2000する。
相手は、呪文を唱えることができない。