邪眼皇ロマノフ一誠は″兵士″になっていた   作:邪眼帝

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知識とは、エネルギーであり、戦力であり、そして勝利である。


その14

 グレモリー家所有の山荘にオカルト研究部メンバーが到着したのは、木曜日の夜である。ここから金土を鍛練に費やし、日曜で疲労を癒して本番のレーティングゲームに挑む予定だ。グレイフィアがそう提案してくることを見越して依頼を受け付けなかったため、通常業務に支障はない。

 そして鍛練とは銘打ったが、数十倍もの重力を操るコントロール室や時間の流れが異なる不思議な部屋で模擬戦に明け暮れるといった過酷なトレーニングではなく、軽い運動と作戦会議に重点を置いた内容だ。

 メンバーは宛がわれた自室に荷物を置き、それからリビングに集合する。

 

「ラノベじゃあるまいし、そんな急激なパワーアップなんて無理よ。逆に疲れてしまうわ。それよりも本番での大まかなプランを決めておくべきよ。臨機応変な対処も生じるでしょうけど、事前にプランを練らないのではそれすらも叶わないもの」

 

 一同が揃ったことを確認して、リアスが合宿の目的を説明した。

 

「妥当ですな。レーティングゲームは別として、実戦での経験は積んでいるのでしょう?」

「D級はぐれ悪魔の討伐を少しだけよ。訓練の内にも入らないわ」

 

 期待の新鋭とはいえ、若手悪魔に敗れるような相手を討ったところで自慢にもならない。上位のはぐれ悪魔に出現されても大問題だが。

 

「部長や副部長を含めても、一誠さんが最も戦闘経験豊富だと思いますよ」

 

 アーシアは、床に並べた聖水鉄砲や聖水マシンガンの手入れをしながら、廃教会での戦闘を思い返した。武器商人も顔負けの豊富な武装は、戦闘の苦手な彼女が自衛用に制作したものであるらしい。

 彼女の意見には、朱乃も祐斗もギャスパーも小猫も強く頷いた。以前の自己紹介にもあったように、恐らくは人知れず駒王町の平和を守っていたのだろうと解釈しているのだ。ライザーにも臆することなく提案した胆力が、その証拠である。

 単なる駒の役割に囚われない、参謀としての地位を既に確立しつつある一誠は、アーシアの意見に肩を竦めてみせた。

 

「……相手のデータも見なければ断言はできませんが、どうやら厳しい戦いになりそうですな。今のままでは戦力や経験の差を覆すのは難しいでしょう」

 

 無論、演技である。そもそも、一誠もリアスもライザーと挨拶を行った直後に彼やその眷属の公式戦でのデータを取り寄せ、移動中にも話し合いを重ねてきた。全体的にそこまで苦戦するようなレベルではないが、ユーベルーナやレイヴェルなど警戒するべき相手も幾人か在籍している。ただし、結局は数に任せた力押しに頼りがち──というのが、二人の出した結論だ。

 しかし問題は、朱乃達にある。

 初のレーティングゲームで、しかも主君の将来まで左右する一戦なのだ。無意識に力が入り、却って本領を発揮できないまま追い詰められる可能性も大いに考えられる。

 そんな一同の心境を読み取った一誠は、感情ではなく理論を用いて、朱乃達の不安を取り除くことにした。

 

 まず、一誠は敢えて全員の前で、ライザーやその眷属達のデータをリアスに要求してみせた。そして間髪いれずに手渡された分厚い紙束の全てに凄まじい速度で目を通していく素振りを見せると、やがて飽きた子供のように投げ捨てる。

 

「前言撤回です。このゲームは我々の勝ちです」

「ほ、本当に!?」

「ええ。私の策に先輩方の力が合わされば、苦戦しても敗北はありません。その理由を説明します」

 

 ライザー眷属の″兵士″は人数こそ最多の八人だが人海戦術の一つ覚えで個々の練度は低く、逆に腕っぷしに自信のあるらしい″騎士″と″戦車″は単独行動をしやすい──と、いかにもそれらしい理屈を貼り付け、一同の不安を和らげていくことに注力する。ただし、「油断しなければ」と釘を刺すことも忘れない。

 やがて就寝を理由に解散する頃には、五人の表情には普段の落ち着きが取り戻されており、風呂や軽食など各々が個人の時間を楽しむべくリビングを後にした。

 

 本題は、これからだ。

 

 ペテン師顔負けの一誠の力説に呆れつつも、リアスは彼に要求された通りに、レーティングゲームの公式ルールブックを渡す。一誠は、この一夜でゲームルールを完璧に把握するつもりでいる。

「やっぱり、妨害が?」彼女の不安げな問いに、早速ルールブックを速読しながら──今度は演技ではない──隣に座る彼は強く頷いた。

 リアスにサーゼクスやグレイフィアが助け船を出したように、フェニックス家やその周囲にもライザーの婚約を推す派閥が存在している筈だ。破談による経済的な損害もだが、自身の面子に泥を塗られる行為を素直に許容するとは思えない。

 

「ルールは知る者の味方だ。もっと単純に、不運な事故でも構わない。リアスも、似たようなケースに覚えがあるからこそ、こんな山荘を合宿の場に選んだのであろう? 夜間の外出禁止を言い渡したのも万が一を危惧したからだ」

「……魔王派と大王派の政争は、有名よ。フェニックス家は魔王派に属しているけど」

「味方の味方は敵かもしれんからな。そして、そういった輩は手段を選ばない。安心しろ、私の眼が黒い間は手を出させぬ。みんなにも、リアスにも」

「……ありがとう、一誠」

 

 見ていて、とリアスは告げた。

 

「私は、勝つ。勝って……恋愛結婚するから」

「そうか。次は苦心せずに済みそうだ」

 

 言葉の意味は、二人だけが知っている。




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