邪眼皇ロマノフ一誠は″兵士″になっていた   作:邪眼帝

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戦略があれば、偶然は必然に変わるんだ。


その15

「結局、平和だったわね」

「そうでもないぞ。直接に手を下すといったリスクを取らずとも、リアスに気を張らせている時点で勝ちのようなものだ。本番でのコンディションを崩せればいいのだからな。気を抜くなとは言わんが、試合開始までリラックスしておけ。主君の不安は眷属にも伝達するぞ」

「そうね。ありがとう」

 

 リアスにはそう言ったが、実のところ不審な輩が現れなかったわけではない。一誠は昨夜も、E級に登録されているはぐれ悪魔を少しばかり片付けてきたばかりである。

 以前のバイサーにも劣るような連中が、このタイミングで、徒党を組んでグレモリー家が所有する地域──境界線を踏み越えないギリギリの距離にまで接近する、そんな偶然だ。極秘に出向いた一誠を前に、彼らは獣のような嘲笑や怒号を浴びせながら突撃し、そして瞬く間に蹂躙された。知恵も情報も与えれていない、捨て駒なのだろう。

 

 山荘に戻り、全員の安否を確認してから、一誠はシャワーを浴びた。はぐれ悪魔を仕向けた飼い主も気になるが、優先すべきはライザーとのレーティングゲームだ。

 

 朱乃は雷を、祐斗は魔剣を、小猫は格闘術を、ギャスパーは時間停止を、アーシアは回復を。目の前で軽い模擬戦を実演してもらうことで、一誠は全員の強みと弱さを把握した。この際、五人の弱さが過去のトラウマに起因しているであろうことは置いておく。実力的には、ライザー眷属のゲーム映像と比較しても甲乙つけがたく、普段通りに戦えば勝てるだろう。

 

 そうして、リアス達は金土の二日間の大半をシミュレーションに割いて、この日曜の朝を迎えた。本番まで外出できないのは不便だが、グレイフィアが差し入れてくれるので支障はない。

 

「そういえば、ふと思ったのだけど、一誠はどんな神器を宿しているのかしら」

 

 朝食を取り、全員で最後のミーティングを行っている途中、不意にリアスが言った。五人の注目が一斉に集まるが、本人はさらりと告げる。

 

「赤い龍です。夢に出てきました」

「も、もしかしてニ天龍!?」

「ええ、かつて三大勢力の連合を相手に渡り合ったとされるドラゴンの一角、ですね。触れたものの力を数十倍にも高める″倍加″を操ります」

 

 朱乃達の顔色が明るくなったことを見逃さず、ここぞとばかりに彼は鼓舞する。

 

「これが、我々の勝利を断言した理由です。先輩方にばかり前線を任せて、後衛で策を練ってばかりなのも申し訳が立ちませんからね。最後の詰めには、今代の赤龍帝である私も参加します」

「それは……心強いですね」

 

 アーシアの言葉には、味方であれば、という前提条件が付く。以前は教会所属のシスターとして活動していただけはあり、二天龍の伝承は詳しく聞かされていた。寧ろ、この裏世界で二体の存在を知らない者はモグリだ。

 

 ただし、一誠は覚醒していない。覚醒しているとも口にしていない。みんなが意図的に勘違いするように、少しだけ言葉を省いただけだ。

 

 神器は所有者の強い願望に呼応して発現するのが主なパターンだが、そこには差が生じる。歴代赤龍帝を例に挙げると、最強候補に数えられるベルザードやエルシャは比較的に覚醒が遅かった一方で、生まれながらに覚醒していたことで初代赤龍帝や先代赤龍帝は迫害に苦しめられた。

 願望が弱いのではないだろう。キッカケが不足しているだけで、それが今回のレーティングゲームで掴める筈だと一誠は確信していた。

 

 一誠に″赤龍帝の籠手″の異能が加われば、まさしく鬼に金棒となる。

 

 単純にパワーを倍にするのは勿論、デーモン・ハンドの連射も、自力では唱えられないオールデリートの発射も、文明に用いれば闇のみならず他文明の魔弾も放てる。

 

「そうすれば、きっとリアスを──」

「私がどうしたのよ」

「うお!?」

 

 首筋に冷たいものが当てられ、彼は思わず飛び上がった。缶コーヒーを片手に、リアスは悪戯な笑みを浮かべた。

 

「驚かせるな……おや、他の姿が見えんな」

「とっくに自室に戻ったわよ。誰かさんがフリーズしたまま動かないから。策を練るのもいいけど、あなたこそリラックスしなさいよね。ほら、差し入れのコーヒーよ」

「すまない、ありがたく頂戴しよう」

「ほら、差し入れの膝枕よ。仮眠しなさい」

「どうしてそうなる」

 

「気付かないとでも?」眷属の耳に入る可能性を危惧して、リアスは口に出さなかったが、一誠とはぐれ悪魔の間に発生した真夜中の戦闘を彼女は見抜いていた。

 

「まさか、コーヒーだけ受け取るなんて、そんな不敬なことは言わないわよね?」

「無茶言うな。誰かに見られたらどうする」

「上等よ。見せてやるわ!! お母様直伝の本物の安眠膝枕を!!」

「いや、その理屈はおかしいだろ」

 

 ちなみに、物陰から五人が覗いていることには微塵も気付いていない。一誠とリアスは、互いが絡むと年相応の精神年齢に戻るらしい。

 

 そして、運命の時間が訪れる。

 

『時刻となりました。これより、リアス様とライザー様のレーティングゲームを開始します』




ブレイン・サイクロン
C 水文明 (3)
呪文

サイクロン
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