邪眼皇ロマノフ一誠は″兵士″になっていた   作:邪眼帝

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紫電の衝撃、今ここに!


その2

 記憶の混乱を建前に、兵藤一誠(ロマノフI世)はリアスに連れられて帰路へと着いた。その道中、主従のコミュニケーションも兼ねて、彼女から詳細を聞き出す。

 リアスのもたらした情報は、驚愕の連続だ。

 前提として、地上世界は人間と呼称されるヒューマノイド達が支配体制を確立しており、例えばけたたましい音と共に駆けていく自動車や道端に設置された街灯など、水文明や光文明とは比較するまでもない原始的な科学技術の上で繁栄している。愚かで脆弱な種族だが、決して侮れない力を持つらしい。

 そしてリアスは、地上とは別の、裏側の世界に蠢く魔の住人だという。

 

 悪魔と称される超常の存在である。

 

 つまり、人間が神話や伝説と決めつけている者共は実在していて、その中でも悪魔は、天使や堕天使と共に三大勢力の一角に数えられる。実力主義と貴族主義が同居する奇妙な組織だ。

 この点を一誠に指摘されたリアスは、「色々あるのよ」と言葉を濁しつつも、次に悪魔の歩んできた歴史について説明する。

 古の時代、三大勢力間で戦争が勃発した。二体の強大なドラゴン達の乱入がキッカケで三大勢力は休戦条約を結んだものの、悪魔側は指導者である四大魔王全員が戦死したことで内戦が発生。ゴタゴタを乗り越えて新政権が樹立した際には、悪魔は種の絶滅の危機にまで陥っていた。

 そこで開発されたのが、体内に埋め込むことで他種族を悪魔に転生させるチェスの駒──″悪魔の駒″だ。こうして彼らは、転生悪魔を増やしていくことで自勢力の再建に成功したのだった。

 

 そして、一誠もまた転生悪魔の一人だ。

 堕天使に殺害されたところをリアスに発見され、彼女の″兵士″として蘇生したのだが、この直後にロマノフI世の人格が憑依したわけである。

 

「……とてもそうは思えんが、私は本当に転生悪魔になったのか。どうにも実感に欠けるな」

「領民を守れなかった立場で言えることではないけれど、そればかりは慣れてもらうしかないわね。でも恥ずかしく感じる必要はないわ。最初は祐斗や小猫も翼に四苦八苦していたもの」

「祐斗? 小猫?」

「私の可愛い眷属達よ。また今度、顔合わせの機会を設けるから」

 

 そこで、リアスは不意に立ち止まった。

 

「着いたわ。ここが一誠の自宅よ」

 

 目の前に聳えるごく普通の一軒家を一瞥し、一誠は泣いた。あまり期待はしていなかったが、まさか元の世界で使用していた物置小屋よりも更に小ぢんまりとしているとは思わなかったからだ。

 

「どうしたの? まさか、どこか痛むの?」

「いや、目眩がしただけだ」

 

 以前の屋敷を思い浮かべ、一誠は天を仰ぐ。

 贅沢の限りを尽くした居城は名うての名匠を集めて築かせたものであり、豪華絢爛な調度品の一つ一つが特注で誂えた代物だ。大広間では晩餐会や舞踏会が定期的に開催され、その権勢は他勢力にも広く知れ渡る程であったと自負している。戦時には闇の騎士団の拠点となり、ガーゴイル共の音楽隊の喇叭が、出撃していく大部隊の背を強烈に後押ししたものだ。

 彼にとって、家とは自分の権力を示す手段の一つである。伊達や酔狂だけではなく、戦わずして威光に屈する者も少なからずあるからこその、合理的な戦略だ。

 

 対して、一体この小屋は何だろうか。

 

 ドラゴンに簡単に踏み潰されてしまいそうな大きさでしかないが、しかし今の彼にとって他の行き場はなく、雨風を凌げるだけマシか、と思い直すことにした。

 

「さあ、早く入りましょう」

 

 リアスに催促され、一誠は玄関の扉に触れる。

 

「……待て、貴様も来るのか」

「責任を果たすためにね」

 

 魔法を使えば誤魔化せるけれど、とリアスはより手っ取り早い手段についても敢えて言及した上で、続ける。

 

「万能じゃないのよね、魔法も。強引な辻褄合わせだから違和感を覚えれば解除されてしまうかもしれないし、それに」

「それに?」

「遠回りは嫌いなの。どんな難題にも逃げることなく真っ直ぐ全力で乗り越えるのが、町の平和を預かる領主としてのポリシーよ」

「まるでサムライみたいな生き様だな」

 

 一誠の言葉には多分に呆れが含まれていたが、日本好きな彼女は満足そうに頷いた。

 

「サムライガール、いいじゃない。ほら、ご両親に紹介しなさいよ」

「……まさか、サムライに仕える羽目になるとは思わなかったぞ」

「一生の自慢になるわね」

 

 どうにもこうにも微妙に気質の合わない主君に頭を抱えながらも、一誠は扉を開け、新たな一歩を踏み出した。




ボルバルザーク・紫電・ドラゴン
SR 火文明 (7)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/サムライ
7000

W・ブレイカー
侍流ジェネレート(このクリーチャーが出た時、自分の手札にあるクロスギアを1枚、コストを支払わずにジェネレートしてもよい)
各ターン、このクリーチャーがはじめてタップした時、アンタップする。
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