邪眼皇ロマノフ一誠は″兵士″になっていた 作:邪眼帝
「……″禍の団″。その組織が、今回の事件に一枚噛んでいると、アザゼル殿はお考えなのですね?」
「ああ。コカビエルは同じ武闘派のサタナエルとよくつるんでやがったし、秘密裏に組織の存在を教えてもらっていたとしても不思議じゃない」
そもそも、フリードの身柄を奪還するには、彼が収監されている監獄の場所を知っていなければ不可能だ。何者かのバックアップがあったと考えるのが妥当だろう。
それは、今後どのような事件が引き起こされるか予測困難であることを意味する。
アザゼルは、安易に仕掛けてこない筈だ、と次のコカビエルの一手を推測した。
開戦当初から前線を駆け巡り、そして五体満足で生き残れたのは、彼が誰よりも慎重を期したからに他ならない。
ここで、サーゼクスの耳元に通信術式が浮かび上がった。相手は、グレイフィアだ。
「すまない、緊急だ」
サーゼクスは、間髪いれずに通信を開く。
グレイフィアには、リアスや一誠も交えて、アザゼルと会議を行う旨を既に伝えていた。また、彼女や他の眷属達で対処可能と判断した場合には事後報告で済ませて構わない、という許可も与えている。
必然、サーゼクスは悪魔側で一大事が発生したことを直感した。
『──』
「……ああ、そうか」
『──』
「……分かった。警備隊にも警戒を続けるように厳命しろ。猫一匹も見逃すな」
一誠とリアスには、二人がどのような会話を交わしているかまでは聞こえない。ただ、サーゼクスの表情がにわかに険しくなっていったことから、悪魔側もコカビエル及び″禍の団″の陰謀から逃れられなかったのだと悟った。
サーゼクスは通信を終えると、「悪いが中座させてもらう」と切り出した。
「じゃあ俺も帰るわ。あんまり長居してっとシェムハザに怒られるからな」
「リアスも一誠くんも、他のみんなも、身辺には注意を払いたまえ。″禍の団″は……どうやら一筋縄ではいかなさそうだ。私や他の魔王も、動きを封じられてしまったよ」
「まさか、襲撃が?」
「ああ、そのまさかだ。グラシャラボラス領で不審な爆発が連続した。そして最悪なことに、領民の避難誘導を担っていた次期当主の青年が、爆発に巻き込まれて死亡したらしい」
一誠は、転移術式の淡い光に消えていく二人を見送りながら、情報の整理へと取りかかった。結果的に甘い推測になってしまった反省は後回しだ。可及的速やかに対応を考えなければならない。
リアスも、顎に手をやって思考する。
「随分と用意周到で、大規模な組織のようね」
「やはり、デコイだと思うか」
「偶然の方が恐ろしいもの。″禍の団″の仕業に決まってるわ。コカビエルへの支援のつもりよ」
「その推測は正解だ。そして、悪魔のみを巻き込むとは思えない。天界や教会も標的にする筈だ」
教え子に授業を行う教師のように、一誠はリアスの推測を補足した。
グラシャラボラス領を狙った理由こそ不明だが、爆発テロを引き起こす手段を有していることは明白だ。悪魔政府も把握していない裏のルートを用いたか或いは内部に協力者が潜んでいるのか。どちらにせよ、タイミングを考慮すれば、それはコカビエルへの支援活動の一環だろう。
必然、三大勢力の残る一角である天界やその傘下の教会も狙われる可能性が高い。そして彼らの有する性質──対悪魔に特化した戦闘能力を視野に含めた場合、グラシャラボラス領のように単なる陽動で終わるとは考えにくい。
そこにコカビエルや″禍の団″のもう一つの狙いが隠されている、と一誠は踏んだ。
至急、情報を集めなければならないが、しかし天界を束ねるミカエルは先の脱獄事件の対応に追われており、今回のような会談を開くことは難しいだろう。或いは、それも計算に含めた上で、フリードの身柄を奪還に動いたのかもしれない。
「主犯はコカビエル、その目的は復讐、ただし他に仲間がいる可能性も高い──といったところか。ソーナ嬢も含めて、今夜にでも情報を共有するぞ」
かくして、オカルト研究部の部室では深夜まで会議が行われた。そして、一誠の推理として、コカビエルの目的や仲間の存在についても言及された。だが、リアス達は彼の居場所を突き止める術を持たない上に、予想される襲撃のタイミングも相手の戦力も不明ではどうすることもできず、結局は警備体制の強化や緊急マニュアルの見直しといった消極的な対策のみに留まった。″禍の団″の脅威を知らされている一誠とリアスにとって、これは極めて不本意な結果だった。
会議がお開きとなり、直前まで大人数が詰めていたのが嘘のようにがらんどうとなった部室で、一誠はアザゼルから極秘に送られてきた資料の山に眼を通す。コカビエルのプロフィールから、アザゼル個人の推測が記されたメモ書きまで、一つの文字も見逃すまいと睨み続けた。
しかし気の遠くなるような作業の末に掴めたことといえば、何も掴めないことだけである。
「……ここまで後手に回るとはな。私の黒色の脳細胞も鈍ったらしい」
「そんなことはないわ、一誠。あなたはいつだって私達を助けてくれた。今回は、敵が一枚上手だっただけなのよ。テロ組織の登場なんて誰も予想できないもの。これは私だけじゃない、オカルト研究部の総意だと思ってちょうだい」
「褒めすぎだ」
隣で作業を手伝うリアスに励まされ、一誠は苦笑した。
一誠は確かに、実戦経験豊富な実力者だ。サーゼクス達と比較しても劣らないだろう。ただし、彼が駆け抜けてきた戦場は軍勢と軍勢もしくは個と個の武勇をぶつけ合うものであり、戦時における協定を持たない非国家を相手取った経験など皆無だった。ここに来て、自分の把握しない弱点が浮き彫りになるなど、彼は予想だにしていなかった。
とはいえ、その逆境を覆す手段については、彼は熟知している。
絶対に諦めない。
僅かな隙も見逃さない。
策略を編む者に完璧はない。よって完璧な策略などというものは成立せず、必ずどこかに穴が生じてしまうものだ。その穴を見付けさえすれば充分に覆せる盤面である、と一誠は確信を抱いていた。
それからも、糸口を手繰り寄せようと足掻くこと数時間が経過した。
窓の外から明け方の光が差し込む頃、遂にヒントを掴んだのは、リアスでも一誠でもなく、颯爽と部室に現れた眼鏡の少女──ソーナだった。
「リアス、まだ起きていますか!?」
「……どうしたのよ、ソーナ。こんな朝に訪ねてくるなんて」
「おはようございます、ソーナ様」
「並んで座りやがってバカップルが……いえ、そんなことよりも、セラフォルー様から火急の報せが送られてきまして。リアスや一誠くんとも共有するように言われましたので。さっさと読みやがれ不純異性交遊共」
随所に嫉妬の漏れるソーナは無視して、一誠は渡された紙束を睨む。
セラフォルー宛に送った緊急連絡と思われるその書類には、異なる経路でエクスカリバーを輸送していた三つの部隊が同時に強襲を受けたこと、その結果として三振りのエクスカリバーを強奪されてしまったこと、先のフリード脱獄事件との関連性が高いであろうこと、そして総力を挙げて犯人の追跡中であることが、ミカエルら四大天使のサインと共に記されていた。
一誠の眼が、煌めきを増す。
「リアス様、このエクスカリバーについて詳細を教えていただいてもよろしいでしょうか」
「伝説の聖剣ね。三つ巴の大戦時に破損し、現在も伝わるのは、その欠片から修復された、固有能力を有する七振りの剣よ。確か、正教会とカトリックとプロテスタントで二振りずつ、最後の一振りが行方不明になっていると聞いたことがあるわ。恐らくだけど、有事に備えてより安全な場所に移そうと考えたのね」
「ありがとうございます。では、ソーナ様に質問いたしますが、エクスカリバーの強奪について他に把握しておられる方は?」
「お姉様とサーゼクス様、アジュカ様にファルビウム様だけと聞いています。私達は事件の関係者ですから特別に知ることを許された、とも。ただ、グラシャラボラス領で発生した連続爆発事件の対応に忙しいらしく、四大魔王様は動けません」
「ではつまり、この駒王町を襲撃するには絶好の機会であるわけですな」
「「間違いなく」」
リアスもソーナも、断言した。魔王も天使長も別の事件への対応に釘付けにされている現状、考慮すべき戦力は彼女達のみになる。そして、悪魔の天敵であるエクスカリバーを手中に収めたとあっては、戦力にも値しない。
「巡回中のメンバーにも、この情報の共有をお願いします。また、不審な人物を発見した際には深追いよりも連絡を最優先するように、合わせて通達してください」
このとき口には出さなかったものの、一誠の頭脳は最悪の可能性を既に見出だしていた。
強奪したエクスカリバーの用途が、魔王への対抗策ではなかった場合だ。
英知と追撃の宝剣
SR 水/闇文明 (7)
呪文
相手のクリーチャーを2体選ぶ。相手はその中から1体選んで自身の手札に加え、もう1体を破壊する。その後、自分は相手のマナゾーンからカードを2枚選ぶ。相手はその中から1枚選んで自身の手札に戻し、もう1枚を墓地に置く。