邪眼皇ロマノフ一誠は″兵士″になっていた   作:邪眼帝

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「何故、人は目の前にある絶望に目をつむるのだ?」

──絶望の魔黒ジャックパイパー


その4

「ええ、そういうわけで今夜は一誠くんの家に泊まることにしたから。急で悪いけれど、指揮は朱乃に任せるわ。無論、緊急事態の際には」

『報告連絡相談、でしょう? そこは私も皆も充分に承知しているから安心して、リアス』

「祐斗達にもよろしく伝えておいてね」

 

 朱乃との通信を終え、リアスは案内された一誠の自室と、椅子に腰掛けて読書を楽しむ部屋の主を注意深く観察する。

 壁に貼られた女優のポスターといい、あからさまに浮いている本棚の中の図鑑セットといい、思春期男子にありがちな室内だ。しかし今、教科書やノートを読み漁り復習に励む彼の姿とはどうにも結び付かない。

 

「どうした、我が主よ。それとも両親の安全まで保証してくれた恩人とすべきかな?」

「愉快なご両親だったわね。快く受け入れてくれて助かったわ。それに夕食とお風呂までご馳走になってしまって」

「保護の件を抜きにしても、父上も母上もすこぶる喜んでいたからな。まるで本当の娘のようだ」

 

 一誠は会話に興じながらも、この世界についての基本的な知識を収集していく。元の人格が所有していた携帯端末の存在やリアスからのアドバンスもあって勉学には苦労せず、小一時間が経つ頃には第二学年での学習範囲の殆どを習得することに成功した。

 少なくともこれで日常生活においては苦労しないだろう、とほくそ笑む一誠だが、それと同時に、己が知識欲を満たすことを優先してしまった点についても自覚していた。臨時の家庭教師を担っていたリアスの視線が、懐疑的なものに変化していることには既に気付いている。慎重な彼らしからぬ初歩的なミスである。

 やむを得ず、一誠はある決断を下した。

 

「質問は、あるか?」

「あら、しても構わないの? 今は遠慮しようと思っていたのだけど」

 

 意外そうにするリアスに、一誠は告げる。

 

「忠誠には報奨を、恩義には礼儀を。それが私の流儀なのだよ。どうせ疑っているのだろう。疑心暗鬼に陥るよりは、ここで互いに腹を割って話した方が良いと判断したまでのことだ。どこかのサムライガールに倣ってな。ただし、他に漏らさないという条件付きだが」

 

 一誠は、「これは契約だ」と続ける。

 

「私の力を貸す。かわりに、リアスの力を私に貸してくれ」

 

 そうして自分を真っ直ぐ見つめながら差し出された手を、リアスは掴んだ。

 

「よろしくね、一誠」

「よろしく、リアス」

 

 改めて協力関係が結ばれたことで、一誠は自身の正体や過去について説明する。対して、聞き役に徹していたリアスの反応は、驚愕よりも納得の色の方が濃い。事前に聞いていた噂とはまるで一誠の人物像が異なっているのだから、彼女が疑念を抱くのも当然だった。

 二人は夜遅くまで話し合いを重ねた末、単なる主従関係に囚われない、より強固で綿密な体制を構築していくことで合意した。

 一誠はリアスのバックアップを、リアスは一誠の実力を見込んでのことだ。

 彼を殺害した堕天使は今も仲間と共に駒王町に潜伏しており、何やら不穏な動きを見せている。破格ともいえる今回の厚待遇は、近く行われる堕天使討伐作戦を見据えた前報酬も兼ねていた。

 それでなくとも、愛する眷属の身内を彼女が無碍に扱うわけがなかった。

 

 討伐作戦に至った背景について、リアスは詳細を補足する。

 

「お兄様に頼んで、堕天使の上役にも確認してもらったの。″神の子を見張る者″に所属していないはぐれ堕天使の仕業だろう──そう連絡してきたと聞いているわ。処遇については領主である私に一任するらしいから、これ以上の被害が出る前に滅殺してあげる予定よ」

「尻尾切りか、哀れだな。その堕天使の拠点は割り出しているか? 参加する人員については?」

「郊外の廃教会だけど……夜も遅いし、今日はもう寝ましょう。きっと一誠も疲れているし、睡眠不足で作戦を練っても無意味だわ。ほら、分かったら私の抱き枕になりなさい」

「魅力的な提案だが遠慮させてもらう。私はそこの床で寝るから、貴様はベッドを使え」

 

 一誠は半ば強引に会話を打ち切ると、明かりを消して眼を閉じた。リアスが指摘したように疲労が蓄積していたのか、彼はすぐに熟睡した。

 

 翌朝、リアスの抱き枕にされた状態で目覚める羽目になることを一誠はまだ知らない。




悪魔の契約
C 闇文明 (2)
呪文

自分のマナゾーンから好きな枚数のカードを自分の墓地に置く。その後、その枚数と同じ数のカードを引く。
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