邪眼皇ロマノフ一誠は″兵士″になっていた 作:邪眼帝
──ニドギリ・ドラゴン
一誠は渡されたアーシアの写真を一瞥すると、深い溜め息を吐いた。与えられた特別任務が気に入らなかったわけではない。堕天使達の目的に気付いたのである。
「確認なのですが、リアス様は神器を移植する技術について何かご存知ですか?」
「聞いたことがないわね。けれど、堕天使は神器について研究しているらしいの。実用化されていても不思議ではないわ……つまり、そうだと?」
「可能性としては高いでしょう」
神器とは聖書の神が人間にのみ宿るように製作したシステムであり、所有者は様々な超常現象を発揮することができる。反面、周囲の誤解や偏見から迫害を受ける者も少なくない。
そして神器は所有者の魂と密接に繋がっているため、例えば神器の力に耐えられずに衰弱する場合もある。ましてや神器を強引に移植したとなれば、元の所有者は確実に死亡してしまうだろう。
合流したタイミングから察するに、アーシアこそがその神器所有者であることは間違いない。本来は敵対関係にある悪魔でさえも治療する力となれば成る程、リアスの領地に留まるリスクを負った点も理解できる。
上級悪魔のお膝元でそんな計画を決行する堕天使はいないだろうという盲点を衝いたつもりか、察知されたところで三大勢力間の微妙な情勢から手を出さないだろうと踏んだのか。
どちらにせよ、一誠のすべきことは変わらない。
任務を言い渡された彼は早速、もう夜に差し掛かろうかという駒王町で行動を開始した。リアスから借り受けた使い魔の蝙蝠とも連携し、大規模な捜査線を展開したのである。
意外にも、対象はすぐに発見できた。
報告によれば、アーシアはある雑貨屋のショーウインドウを眺めているようだった。付き添いだろうか、隣には写真にあった白髪の青年もいるらしい。
まさか強盗に押し入るのではないだろう。何かの用事の帰り道に立ち寄ったのか。
気取られないよう、使い魔は物陰に潜んで二人の監視を続ける。距離の問題から会話の内容までは聞こえないが、読唇術を習得している彼女にとって不都合はない。
「アーシアちゃん、そろそろ行こうぜ。あんまり遅くなるとレイナーレに怒られちまう」
「……はい、フリード様」
「あー調子が狂う。なんたって俺様が聖女様の護衛なんか担当しなきゃならねーんだよ。こりゃはぐれ悪魔でもぶち殺してストレス解消しねーと気が収まらねーよ」
そうして二人は郊外に向けて歩き出す。その先にあるのは、堕天使が拠点としている廃教会だ。
使い魔は蝙蝠に化け、一定の距離を付かず離れずで維持したまま尾行を続ける。また、一誠も連絡を受けて更にリアスへと報告、指示を仰ぎながら使い魔との合流を急ぐ。
周辺の景色に木々や雑草が増え、再開発の進む住宅街から殺風景な郊外へと踏み込んだ途端、フリードは立ち止まった。周囲を念入りに見渡し、それから何かに気付いた瞬間に獣の笑みを浮かべる。
「……おっと、これはこれは、クソ悪魔のご登場ではあーりませんか」
尾行を悟られたか。
咄嗟に離脱を試みようとする使い魔だが、その懸念は杞憂だった。フリードの視線は彼女の隠れる方向ではなく、ある廃工場の倉庫へと向けられていた。
「アーシアちゃん、悪いけど少しばかりサビ残に付き合ってくれねーかな。大丈夫だって、前線で戦えなんざ無茶は言わねーよ。俺の傷を治してくれれば上出来だ」
「それは構いませんが、気を付けてくださいね」
「安心しな、増援も乱入してくる予定だから」
裏門を潜る直前、フリードは意味深な紅の視線を電柱の陰に投げつけた。偶然ではない。尾行を見抜いているぞ、という無言のメッセージと、直前に交わしていたはぐれ悪魔についての会話に、使い魔は即座に通信術式を展開する。一誠と、本来の主君であるリアスに向けてだ。それから少しして、一誠が廃工場の前に到着した。
「合流を果たしたが、これからどうする?」
『祐斗とギャスパー、朱乃と小猫の両チームは引き続き町内の巡視に専念してもらうわ。一誠は……』
連絡を受け取ったリアスは、メリットとリスクを天秤に乗せた上で決断する。
『──廃工場に奇襲を仕掛けられるかしら?』
「ほう、私の一騎駆けを所望か」
『ごめんなさい、本当なら転生したばかりの一誠に危ない橋は渡らせたくないのだけど、派手に人員を動かすと堕天使に気取られてしまうわ。罠であったとしても、ここで逃がすわけにはいかないの』
「随分と弱気だな。今の私が必要とするのは主君の命令、それだけなのだよ。″王″が配下の顔色を窺うな、サムライならば敵のみならず自身の迷いをも断ち切れ。その部室のソファでふんぞり返って、ついでに自慢の乳でも揺らして堂々としていろ。そうでなければ眷属にも不安が生じる故にな」
『一言多いわよ。けど……うん、そうね。私らしくなかったわ』
だから、と続けるリアスの凛とした声音に、もう迷いはない。
『──徹底的にやりなさい、
「承知した、我が主君よ!!」
交わされた言葉が、この世界での彼の初陣の狼煙となった。
ニドギリ・ドラゴン
R 火文明 (5)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/ハンター
5000
各ターン、このクリーチャーがはじめてタップした時、アンタップする。
このクリーチャーは、可能なら各ターン2度攻撃する。