邪眼皇ロマノフ一誠は″兵士″になっていた   作:邪眼帝

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第3の魔弾は死の魔弾。命を吸い取り、枯れさせる。


その7

「ここか、祭りの場所は」

「おいおーい、クソ悪魔が増えちゃったよ」

「ま、まさか……はぐれ悪魔ですか?」

 

 一誠の乱入に、フリードはわざとらしく肩を竦めて見せ、アーシアは警戒心を露にする。二人の足元には報告にあったはぐれ悪魔の女──バイサーが重傷を負って倒れ伏しており、息も絶え絶えといった様子で一誠を見つめる。

 どうせ自分を討伐に現れたのだろう、と直感はしたのだが、ここで恥も外聞も捨てて躊躇なく命乞いに走れる醜い性根が、彼女がこれまで生き残ってきた理由である。相手を間違えなければ、それは正しい選択だった。

 

「ま、待って! 私を助けて! そうしたら、どんなことでもして──」

「殺して構わないか?」

『もちろん』

 

 一誠はバイサーを射殺すると、次に光の剣を構えるフリードに視線を移した。

 

 白髪が特徴的な青年、フリード・セルゼン。かつて悪魔祓いの養成機関を最年少で卒業し、その卓越した戦闘センスから神童と称された天才だ。しかし次第に過激思想に染まり、遂には教会を追放された異端者である。今回、堕天使一派の計画に加わったのは、単に生活費を稼ぐために過ぎない。

 

「一応、自己紹介しとくっすか? 多分、俺の名前も経歴も割れてるとは思うけど、そこはまあ侵入者にも礼儀ありってことで。俺ちゃんはフリード・セルゼン、安月給重労働を強いられてる末端の悪魔祓いだよ。というか質問ガンスけど、お前ってもしかしてレイナーレ様がぶち殺した神器持ちの元人間だったりする?」

「……兵藤一誠、リアス様に厚待遇で召し抱えられた眷属悪魔だ。此度はそこのアーシア嬢の捕縛任務を与えられたのでな。大人しく渡せば命だけは見逃してやろう」

「そっかそっかー、じゃあ死んどけや」

 

 フリードは袖の下から銃を空き手に滑らせ、光の弾丸を乱射した。幾人もの追手を返り討ちにしてきた、彼が最も得意とする不意打ちだ。

 しかし会話の最中という隙を的確に突いた上での閃光は、放たれた魔弾によって相殺される。

 

「チッ」

 

 舌打ちし、その場から飛び退く。直後に響き渡ったコンクリートの穿たれる鈍い音は、一瞬でも離脱が遅れていたなら蜂の巣にされていたことを示している。

 おかしいだろ、とフリードは呟く。

 目の前の少年が戦場の場数を踏んできた猛者であろうことは、目視不可能の速度で飛来する光の弾丸を正確に撃ち抜いてみせた神業からも理解させられた。だからこそ、悪魔に転生したばかりの元人間にしてはあまりにも戦闘に慣れている点に、フリードは違和感を覚える。

 可能性があるとすれば、そもそも一誠が殺害される原因となった神器だが、

 

 フリードの知る限り、あのような漆黒の──ありとあらゆる呪詛が受肉を果たしたかのような禍々しい神器は、存在しないのだ。

 

「即時撤退転職希望……いや、このまま逃がしてもらえるかも怪しいな。こんなマジモンのバケモンが来るなんざ想定してないっての」

「ど、どうしましょう!?」

「仕方ない、あのクソ上司に連絡を──」

「逃がすと思うか?」

 

 第3の魔弾は死の魔弾。命を吸い取り、枯れさせる。

 地の底から響くような詠唱と共に、フリードの頭上から髑髏を模した闇が襲いかかる。

 

「──魔弾デュアル・ザンジバル」

 

 戦国の時代、サムライのみならずシノビやゴッドとも渡り合ってきた実力の一端を垣間見せられても、フリードは冷静さを崩さない。最悪の場合は、自分を犠牲にしてでも時間稼ぎに徹することを決意した。

 

「闇を照らすには……光だよな!!」

 

 フリードは即座に光の剣の出力を最大解放し、デュアル・ザンジバルを受け止める。そしてせめぎ合いの末に一刀両断しながら、真っ二つにされて消滅していく闇の髑髏の向こう側に立つ一誠を鋭く睨んだ。

 消耗は痛いが、奥の手を出し惜しんだまま敗北したのでは笑えない。

 教会所属の悪魔祓いに支給される武器には、万一に備えた切り札が搭載されている。出力を変更することで内部に貯蔵されている光源を解放し、即席の閃光弾となる機能だ。いかにも一戦交えると相手に思わせておいての鮮やかな退却も、フリードの常套手段なのだ。

 バシュン、という倉庫内の暗闇を一掃する程の煌めきに一誠が怯んでしまったのは、悪魔に転生した影響だろう。

 

「……逃げ足の早い」

 

 一誠は姿を消した二人が直前まで立っていた場所を一瞥し、鼻を鳴らす。ここで強引に追跡する手もあったのだが、追い詰め過ぎてしまうと却って愚策になりかねない。

 やむを得ずリアスに連絡しようと考え、ふと使い魔が一向に姿を現さないことに気付いた。事態が落ち着くまで入口付近で待機しているように指示したが、通信すらも途切れたままでいるのは不自然だ。

 

 慌てて入口に向かってみると、地面には堕天使の黒い羽根が落ちていた。

 

 恐らく、写真にあった四人の内の誰かが隠れていたのだ。そして使い魔を発見して捕獲したのだろう。だからこそ、挑発代わりに敢えて羽根を回収しなかったに違いない。

 その意図を察知した一誠は──自分の甘さに対して憤慨する。この邪眼皇にあるまじき失態と、そのせいで使い魔の身を危機に陥らせてしまった点に、腸の煮えくり返るような怒りを感じた。

 リアスへの通信術式を開く一誠の眼は、廃教会の聳える方角を捉えていた。

 

「すまない、借りていた使い魔を堕天使側に拉致されてしまった。これは私の失敗だ。何なりと処分を言い渡してくれて構わない。だが、どうかその前に個人的な意見を聞いてもらいたいのだ。策の進言ではない、単なる我が儘だ」

『……まさか、乗り込むつもり?』

「止めてくれるなよ」

『あのね、私を見くびらないでもらえる? なんたって私は″王″なのよ。可愛い眷属だもの、我が儘の億千万を叶えるのなんて余裕なんだから。そもそも、徹底的にやるように指示したのは私よ。一誠の失敗じゃないわ』

 

 リアスは、関係各所に通達する。

 

『朱乃達は廃教会に向かって。ソーナ達は住民の避難誘導を。グレイフィ……善意の協力者さんは周辺区域一帯に強固な結界術式を展開してください。急いでね? 前倒しになるけど、現時刻をもって、堕天使討伐及び使い魔救出作戦を開始するから。駒王町に、そして私の身内に手を出したケジメをつけさせないとね』

「流石の決断力だな。敵に回したくないと思ったのは貴様が最初だよ」

『サムライだもの。そんなことより、一誠も廃教会に急ぎなさい。主役が歓迎会に遅刻だなんて承知しないから』

「……感謝する」

 

 一誠は通信を切り、廃教会に乗り込む準備を進めていく。そんな彼の前に、紅色の転移術式が展開された。




魔弾デュアル・ザンジバル
C 闇文明 (4)
呪文:ナイト

KM―相手のクリーチャーを1体選ぶ。このターン、そのクリーチャーのパワーを-2000する。(パワー0以下のクリーチャーは破壊される)
ナイト・マジック(バトルゾーンに自分のナイトがあれば、この呪文のKM能力をもう一度使ってもよい)
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