邪眼皇ロマノフ一誠は″兵士″になっていた   作:邪眼帝

8 / 28
その叫びがロマノフ一族を奮い立たせる。


その8

「早かったわね」

「こちらの方が送り届けてくれたので」

「ご協力に感謝します、お兄さ……紅髪の協力者の方。このお礼は必ず」

「いやいや、礼なんて大丈夫だよ。これも町を守るためだからね」

「……あれ、もしかしてサーゼクス様では?」

「これも政治というものですわ、祐斗くん」

 

 到着した一誠と仮面の男は、既に礼拝堂内を制圧していたリアス達との会話もそこそこに、小猫に取り押さえられているフリードを一瞥する。

 屋内に戦闘の痕跡は見られない。恐らく、彼は一同が姿を現すや否や、降伏したのだろう。多勢に無勢である点もそうだが、命も惜しくないような額の報酬を彼は支払われていない。

 取引と称して彼が打ち明けたのは、祭壇の下に地下への入口を隠していることと、地下室では堕天使達がアーシアから神器を抜き取る儀式の準備を進めていること、そして生け贄として使い魔が拘束されていることだ。

 

「ま、頑張れよ。なんか儀式を前倒しで行うとかレイナーレが言ってたからさ。急がねーと、アーシアちゃんも使い魔も死んじまうぜ?」

「言われなくても、そのつもりよ。申し訳ありませんが、紅髪の協力者さんはフリードの見張りをお願いできますか? 我々は、連中にケジメをつけさせますので」

「了解したよ。ついでに、僕とグレ……善意の協力者の二人で礼拝堂を確保しておこう」

 

 背後を二人に任せ、リアス率いるオカルト研究部は地下室へと侵入した。

 儀式の準備に集中しているのか、それとも直前までの町内の様子からリアスはまだ動かないと思い込んでいるのか。とっくに退路を絶たれていることにすら気付いた様子はない。脱出を図ったところで、上の二人を突破することは不可能だが。

 肝心のアーシアと使い魔は、片隅の鉄檻に放り込まれていた。堕天使由来の光が編まれているのか、後者は衰弱が酷く、このままでは遠からず死亡してしまうだろう。

 リアスはメンバーにハンドサインで指示し、陽動と救出に別れる。

 

「悪巧みはそこまでよ、レイナーレ」

「リアス・グレモリー!? どうしてここが!」

「そんなことより命乞いの言葉でも考えることをオススメするわ。どこかの誰かさんに好き勝手されたお陰で、今の私は機嫌が悪いの。少年神父みたいに大人しく降伏するというなら、命までは取らないであげてもいいけど」

「ほざくな! ドーナシーク、カラワーナ!! 奴らを血祭りにあげてやりなさい!!」

「……そう、残念ね。我が眷属達に命じるわ。侵入者共を速やかに制圧しなさい」

「「「はい、リアス様」」」

 

 襲いかかる二人の堕天使を、祐斗と小猫とギャスパーが迎撃する。若手とはいえ、彼らは中級悪魔への昇格も間近と目される期待の新星。そして戦力差でも上回っているとなれば、堕天使が操る光を加味してもまず苦戦することはない。足止めには最適の人選だ。

 戦闘が始まったタイミングを見計らって、一誠と朱乃の救出チームは鉄檻へと駆ける。

 一直線に向かってくる二人に、慌てて立ち塞がったのはゴスロリと金髪が特徴的なミッテルトだ。

 

「ちょ、ここは通さないっスよ! レイナーレ様からもキツく言われて──ピギュッ!?」

「子供といえども容赦してはならない。敵は迷わず捻り潰せ。それも戦場の鉄則だ」

「……ああ、なんて痛そうな鉄拳。もしかして一誠くんはその手の才能も」

「なんだ、その気味悪い顔は」

「お気になさらず」

 

 前を見えなくされたミッテルトは放置して、二人は鉄檻の前に降り立つ。

 

「あ、あなたは……魔弾さん!」

「一誠様、どうして私などのために……」

 

 グレモリー眷属総出で救出に現れたことを理解した使い魔は、困惑した様子で訊ねる。その声音には、自分の失態で事態を悪化させてしまったという罪悪感が込められていた。

 一誠は、「王とは強欲なのだよ」と言った。

 

「下僕の全ては主君のものだ。剣を振るう腕も呪文を詠唱する舌も、そして命すらも、それら全ては王のためにのみ使われる。であるならば、王の許可もなく勝手に暇をもらうなど許されんのだよ。安息は与えん。今後もリビング・デッドのように懸命に働くがいい」

 

 なんたる強欲、なんたる傲慢。ブラック企業の経営者も顔負けの傲岸不遜な宣言に、アーシアは思わず顔をしかめた。

 だが使い魔にとっては、天敵である筈の光の鉄格子を掴み、肌を焼かれながらも抉じ開けようとする一誠の姿は、視界を涙で歪ませる程に胸を打つものであった。

 

「同意、ですわね。我らがグレモリー眷属に仲間を見捨てる者はいない」

 

 朱乃も、一誠に手を重ねて協力する。

 

「……姫島先輩、肌荒れでは済みませんよ」

「夜更かしばかりの部活動ですもの。この程度は慣れていますわ」

 

 やがて、鈍い金属音と共に鉄格子がねじ曲げられていき、そして粉砕された。

 

「二度は言わん。私と共に来い」

「……仰せのままに」

「あ、じゃあ私も転職します。こう見えても回復系の神器を持っていますから、皆さんのお役に立てるかと」

「逞しいですわね」

 

 使い魔はともかく、アーシアがあっさりと同行したことに、マイペースのようで自分を取り巻く環境の変化には目敏いな、と一誠は苦笑した。

 尤も、一誠が力強く持論を述べている後方でレイナーレ達が蹂躙されているのを目撃したのでは、彼女でなくとも転職したくなるだろう。

 

「……陽動って、何でしたっけ」

「だってリアスですもの」

 

 かくして救出に成功したのだが、解決すべき点はまだ残っている。捕虜のミッテルトを担いで、一誠達はリアスに合流するのだった。




プライマル・スクリーム
P(UC) 闇文明 (4)
呪文

S・トリガー
自分の山札の上から4枚を墓地に置く。その後、クリーチャーを1体、自分の墓地から手札に戻してもよい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。