邪眼皇ロマノフ一誠は″兵士″になっていた   作:邪眼帝

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闇より伸びる魔獣の手、その手からは何人たりとも逃れることはできない。


その9

「嘘よ! こんなの嘘だわ! わ、私は究極の神器を手に入れる堕天使よ! 至高の存在と化して、コカビエル様のお役に立てるの! き、貴様のようなクソ悪魔に私は!」

「吹っ飛びなさい、クソ堕天使」

 

 部下であるドーナシークとカラワーナも撃破され、遂には半狂乱になりながら強行突破を試みたレイナーレだったが、リアスの鉄拳を顔面に受け、勢いそのままに床に捩じ伏せられた。

 ここで気絶しているミッテルトを担いだ一誠達が合流し、またフリードも既に降伏していることで、堕天使一派の企みは完全に潰えた。

 レイナーレの敗因は、リアス側が一連の作戦を前倒しで進めたことに対応できなかった──不測の事態に備えていない甘さもあるが、最大の理由は計画実行の場に駒王町を選んでしまった点だろう。若手悪魔らしからぬコネクションの太さを持ち、いざとなればフル活用するような少女のお膝元で暗躍するなど、三流のやることである。

 

「さて、どうしてくれようかしら」

「″神の子を見張る者″曰く、コイツらは組織に所属しない、はぐれ堕天使の一派のようです。この場で処刑したところで、感謝こそされど外交問題には問われません。それに、侵入者に慈悲は必要ないかと愚考します」

「そうね、私の身内に手を出した代償は命で立て替えてもらうしかないわ」

「ま、待ってください! 金もありますし、魔道具でもなんでも金目のもの出しますから! 言う通りにしますので、許してもらえませんか!」

「……あのね、この期に及んで理解していないようだから教えてあげるけど、今回の件はお金や命乞いで解決できる一線をもう越えてしまっているの」

 

 リアスは笑顔で告げたが、レイナーレを見下ろす視線だけは氷のように冷たい。これが不法侵入だけならば情勢を考慮して様子見に徹する手もあったかもしれないが、兵藤一誠という犠牲者を出してしまった時点でそれは不可能だ。

 仮に甘い処断で済ませてしまえば、駒王町を預かる領主としての信用問題に繋がる。

 そもそも駒王町はグレモリー家が所有する土地ではなく、日本神話から運営を委託されているだけに過ぎない。次期当主であるリアスに領地運営の経験を積ませたいグレモリー家の思惑と、人員不足から猫の手も借りたい日本神話の意向が合致した形だ。

 それがレイナーレに好き勝手されたのでは、リアスのみならずグレモリー家や悪魔政府、そして彼女と同様に人間界に研修で訪れている他の上級悪魔の信用も崩壊させかねない。

 サーゼクスとグレイフィアが茶番を演じてまでバックアップに動いたのには、そういった事情も関係していた。

 

「恐れながら、リアス様の手を煩わせるまでもございません。この私が地獄への案内人の役割を務めましょう。それがせめてもの復讐になるかと」

「任せるわ」

「感謝します」

 

 一誠は魔銃を握り締めると、まずはレイナーレの額へと銃口を突きつけた。待って、と彼女は必死に懇願する。

 

「イッセーくん! 私を助けて! この悪魔が私を殺そうとしているの! 私、あなたのことが大好きよ! 愛してる! だから──」

「……遺言はそれだけか」

 

 闇より伸びる魔獣の手、その手からは何人たりとも逃れることはできない。

 詠唱に呼応して、コンクリート床に抉じ開けられた巨大な獣の口から無数の老若男女の白い手が出現し、彼女を地獄に送り込むべくその四肢も翼も鷲掴みにする。

 

「──デーモン・ハンド」

 

 レイナーレは逃げようと足掻くも、リアスとの戦闘で重傷を負った身体では満足な抵抗もできず、悲鳴を漏らしながら引きずり込まれていく。

 ついでとばかりに気絶していたドーナシーク達も放り込まれ、彼女の味方は誰も残っていない。

 そうして全てを飲み込んだ獣の口が満足げに消え去ったことを確認した一誠は、リアスへと振り向き、一礼した。

 

「処刑完了しました、リアス様」

「ご苦労様。晩餐会のメインディッシュにしては物足りなかったかしらね。安心しなさい、後日にきちんとしたパーティーを開くから」

「また鳥料理は勘弁願いたいものですな」

「まさか」

 

 苦笑するリアスだが、いっそ卓上をチキンで埋め尽くしてやろうか、と考えていた。

 ともあれ、一連の事件は一件落着したのだが、そればかりで終わってくれないのが政治というものである。礼拝堂では、地下から感じる異質な魔力や一誠の正体について、グレイフィアとサーゼクスが考察を重ねていた。

 

「リアス様もまたとんでもない傑物を発掘してきたものです。まさか、あんな逸材がこれまで誰にも知られることなく野に隠れていたとは。しかしあのような邪悪な力は、見たことも聞いたこともありませんが」

「恐らく、神器ではない別の異能だ。これまで表舞台に出なかったのもそれが理由だろう。ここは実際に力の片鱗を垣間見たフリードくんの意見も聞いてみたいな」

「ありゃ正真正銘のバケモンっすわ。勝てるビジョンが欠片も浮かばないっすもん。負け犬神父からの中継は以上でございまーす」

「そうか、ありがとう。でも君は幸運だよ。五体満足のまま、生きて教会に引き渡してもらえるのだからね」

 

 これまでは詰めの甘い一面もあったリアスだが、今回は臨機応変に動き、的確に策を講じてみせた。その成長の裏には、やはり一誠の存在が大きいのだろう。

 新世代の台頭を感じたサーゼクスは、彼を頼もしく思うと同時に、確実にグレモリー家の騒動に巻き込んでしまうことに顔をしかめる。

 ならば、せめて一誠の実力を見定めるための有意義な時間にしてみせようと彼は決意した。

 

「レーティング・ゲームの手配は?」

「抜かりなく」

「リアスのみならず、一誠くんの将来も左右しかねない一戦だ。その日が来るまで、彼の詳細は断じて大王派に掴ませるな」

「御意」




デーモン・ハンド
R 闇文明 (6)
呪文

S・トリガー
相手のクリーチャーを1体選び、破壊する。
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