「どもー、聞こえてますかー?」
時刻は21時。いつものように音声が入ってるかチェックする。……よし、トラブルは無し。
「ハルデア所属3期生、
「どうもー!今日も元気ハツラツの
そう、今回は本当の意味で初めてのコラボ配信だ。デビューして3ヶ月が経つが、活動開始時の同期とのコラボや公式チャンネルへの出演以外は基本ソロの参加型配信。おかげで着いたあだ名は『格ゲーぼっち』である。あながち間違いは無い。
「いやー意外だね。ダメ元でコラボ依頼したけど」
「天野先輩からの頼みは断われ無いっす。それに散々リスナーからコラボしろって言われたので」
「それリスナーの押しが無かったらコラボしてないって事?」
「や、違います」
・緊張してて草
・いつも元気無いから変わらなくね?
・片言になってる
そりゃ初コラボで先輩来たら緊張するだろ。しかも1期生だぞ。
「とにかくやろうか!」
「そうですね。でも先輩がハパⅡやってるとは思いませんでした」
「今のに触れるなら昔のにも触れとかなきゃね」
ハパⅡ……ハイパーストリートファイターⅡ。初代、
タイトル画面の後、キャラセレクトに移る。バージョンは互いにXを選択した。
「やっぱリュウだよねー!」
「先輩スト6でもリュウですよね」
天野先輩が選んだのは主人公のリュウ。黒の道着に黄色の鉢巻、王道のキャラだ。対して俺はムエタイの帝王、サガットを選ぶ。
「出た!配信で使ってるやつ!」
「一応これがメインキャラなんですよね」
・お互いメインか
・でもダイヤ下位っていうね
・やめてやれ
「サガットって弱いの?」
「クッソ弱いです」
「否定無し!?」
勿論。長身スキンヘッドで隻眼なんていかつい見た目とは裏腹に、判定弱いわ隙デカいわ歩きトロいわの三重苦。
「まぁやれば分かりますよ」
「だね〜」
そんなこんなで対戦スタート。俺は初手で飛び道具のグランドタイガーショットを繰り出す。先輩のリュウも波動拳を出し、相殺。俺は即座に後ろへ跳んだ。少し距離が空き、2発目の波動拳に下タイガーを合わせる。隙は大きいが、ゲーム中最速を誇る飛び道具だ。弾の撃ち合いでは僅かだがサガットに分がある。
・はええぇwww
・二人とも無言だ
・これコラボ?
「やば……」
コマンドをミスり、隙の大きい強
「来たっ」
こちらも少し前進し、素早くコマンドを入力。無敵対空のタイガーアッパーカットが
アイグーアパ ベシッ!
……見事に潰された。
「弱ぇぇ〜……」
「ラッキー!」
・草
・弱い
・判定が貧弱過ぎるだろ
・青パンは強いからね、しょうがないね
リュウのジャンプ強
先輩はそのまま起き攻めしようとジャンプしてきたが、流石に通せない。
「うわ!」
「よしリバサァ!」
・ここだけ元気になるの草
・リバサ中毒者
起き上がりから
アイグーニー……フンッ
「え?」
「よーし投げ通った!」
飛び膝蹴り、タイガーニークラッシュでダウン中のリュウを素早く飛び越える。ジャンプ強Kでの起き攻めを予想してた先輩は動けず、そのまま投げられる。今度はリュウが画面端を背負った。少し離れて弾速が遅い弱K版の下タイガーを連射。2、3発ガードされたところで……
「ここ跳んっ!?」
「上もあるんすよね」
リュウがジャンプしようとした所に、今度は上段のタイガーショットが刺さる。これがサガットの一番の特徴だ。Pボタンで出る上タイガー、Kボタンで出る下タイガーの使い分けが重要となる。
再び距離を離して下タイガーを連射。しかし先輩も負けてない。
「ここぉ!!」
「竜巻かぁ」
リュウの竜巻旋風脚は下タイガーならすり抜けが可能。目の前で着地し、硬直で動けないサガットが投げられた。投げ受け身は失敗。下手である。先輩は跳び込めるように距離を詰め、波動拳を起き上がりに重ねて来た。
「でもゲージ溜まってるんですよね!」
「ちょ、まっ!!」
待たないです。最速でコマンドを入力、スーパーコンボが発動した。まずは無敵で波動拳をすり抜けてニーで宙に浮かせ、アッパーカットで追撃。大技タイガージェノサイドでラウンドを先取した。
「うわースパコン警戒してなかった!」
「サガットの切り返しこれくらいしか無いですから」
・は?
・レバー音うるせぇ
・途中からガチャガチャしか聞こえないの草
・コラボ(ほぼ無言)
・上手い(小並感)
即座に始まるラウンド2。先輩はいきなり跳び込んで来る。ジャンプ強K、しゃがみ中K、波動拳の3段はしっかりガードして、お返しでこちらも跳び込みからの3段を決める。ガードされたが、このコンボは弾キャラの基本だ。先輩は近距離戦を挑むつもりだ。はっきり言って分が悪い。遠距離こそサガットの得意分野だが、それを先輩が許すはずも無く。
「きっつ。こっちは近距離の牽制立ち弱Kくらいですよ?」
「地味にめんどいよね、それ」
こっちは必死に振ってるんですよ。リュウはしゃがみ強Kとかバンバン振れるから羨ましい。しかも波動拳繋がるし。
「はい投げ〜!」
「大ゴス強いっすね」
通常技の応酬の中不意に出される鳩尾砕き、通称大ゴス。短距離を一気に移動できるこの技は相手を固める時や近付いて投げる時に使われる。今みたいに。
「受け身ミスるなぁ」
「冷静……」
・感情の起伏ないんか?
・無い(確信)
・声だけ聞いたら冷静なんよな
「よっしここからぁ!」
リュウはダウン中のサガットの後ろに落ちるよう跳び込む。ガード方向を混乱させるめくりを狙ってるのか。図体のデカいサガットに取っては脅威の一言だが、初段を食らわなければ何とかなる。ここはしっかりガードだ。
ジャンプ強K、しゃがみ中P、しゃがみ中K、そして波動拳の4段を
「うわあぁぁ昇龍拳出しちゃったー!!」
「あざまーす」
・あっ
・やったな
・スト6でもあったぞこれ
リュウの着地に垂直ジャンプを合わせ、ジャンプ強K、立ち中Kからのアッパーカットで7段。リュウの体力を大幅に削った。そして動揺している所にニーでの回り込みから投げで何と気絶。
「いやぁお願い待って待って回復まで待っ
「ごめんなさい」
問答無用でアパカ。速攻で試合終了だ。
「ねぇー酷い!皆桜木君が手加減してくれないー!」
「やめてくださいリスナーには勝てないんです」
・はい有罪
・先輩困らせんなよ
・草
・天野ちゃん可愛い
・これは桜木のせい
・先輩だよ先輩
「俺の味方はいないんか?」
「うぇーいリスナーの皆が私の味方だからー!」
「それでいいんですか?」
「いーの!」
まったく自由な人だ。コメントも同調するからこっちの立場が無い。
「じゃあ2戦目いこうか!」
「負けませんよ」
今度もキャラは同じ。だがこの組み合わせは正直きつい。キャラランク下位のサガットに対してリュウは安定して上位なのだ。試合が進んでいくに連れて先輩はどんどん俺の動きに対応してくる。勿論読み合いもあるが、基本的にリュウ有利で事が進む。
「よっしゃ〜!!真空波動〜!!」
「やっぱ撃ち合いで真空出されたら詰みますね」
かれこれ5戦して、なんと1勝4敗。最初の余裕が嘘みたいになってきた。……ちょっとヤバい。
「先輩」
「何?」
「すみません……キャラ変えてもいいですか?」
・珍しい
・ベガ?
・ベガでもきつくね?
「全然!どんなのでも負けないよー!」
「なら遠慮なく」
セレクト画面。バージョンをDに選択し、キャラはサガットに決定。
「うわぁ〜Dサガット?」
「はい」
・声低くなってて草
・ガチトーン来た
・先輩相手にガチトーンでいくのか……
「なんか声変わった?」
「そうですかね?とりあえず対戦いきましょ」
先輩は変わらずXリュウ。俺は初手で下タイガーを連射。
「えっ速!弾速えぐ!!」
無言で連射を続ける。これだ。このスピード感が一番しっくりくる。
だが先輩も負けてない。下タイガーを竜巻でかわし、前方へ跳ぶ。一方俺はもう一発下タイガーを既に発射済み、このままだと攻撃を貰ってしまう。……Xサガットなら。
アイグーアパカッ バシィン!!
「それアパカ間に合うんですよね」
「ほぎゃああぁぁあっ!?!?」
今日一番の絶叫だった。
Dサガット
『ストリートファイターⅡ'』バージョンのサガット。同作品最強候補のキャラ。