呪術廻戦 ─槍穿未了編─   作:クシ・ヤキ

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こんばんわ!くしやきです!
二回目の投稿になります!よければ最後まで見ていってください!


1投 手のかかる先輩

1話 手のかかる先輩

 

 あれは、私が高専に引き取られる前。

 

 まだ幼かった頃の話だ。

 

 私は、自分が傷を治せることを知った。

 

 最初は偶然だった。

 

 公園で転んだ子の膝に触れたら、血が止まっていた。

 

 泣いていたその子が、不思議そうな顔をして、それから笑った。

 

 それが嬉しかった。

 

 擦り傷。

 

 切り傷。

 

 打撲。

 

 触れるだけで治る。

 

 理由なんて分からなかったけど、誰かの役に立てることが――ただ嬉しかった。

 

 

 

 私の親は、控えめに言ってクソだった。

 

 父は酒と賭博に溺れて家に帰らない。

 

 母は父がいない時間を縫うように、知らない男を連れ込む。

 

 家に居場所はなかった。

 

 だから私は外へ逃げた。

 

 いつも同じ公園。

 

 錆びたブランコと、割れた砂場。

 

 夕方になれば誰も来なくなる場所。

 

 私はそこで、一人で時間を潰していた。

 

 まともにご飯も食べられない日が続き、毎日がただ過ぎていくだけだった。

 

 生きている意味なんて、分からなくなっていた。

 

 

 

 その日も、人が来ない方の公園で座っていた。

 

 すると。

 

 足音がした。

 

 こんな場所に誰かが来ることなんて、ほとんどない。

 

 なのに。

 

 少しだけ嬉しかった。

 

 ――同じ境遇の誰かかもしれない。

 

 一人じゃないかもしれない。

 

 そう思ったから。

 

 

 

 だけど。

 

 来たのは、人じゃなかった。

 

 全身が影のように黒い。

 

 輪郭が揺れ、形が安定しない。

 

 指先だけが異様に長く、刃物みたいに尖っていた。

 

 頭が、ない。

 

 理解が追いつかなかった。

 

 声も出ない。

 

 体も動かない。

 

 ただ、それが近づいてくるのを見ることしかできなかった。

 

 ソレが腕を振り上げる。

 

 

 

 ――あ、死ぬんだ。

 

 

 

 そう思った。

 

 でも同時に。

 

 この日々が終わるなら、それでもいいか、とも思った。

 

 私は目を閉じた。

 

 

 

 ……けど。

 

 いつまで経っても痛みが来ない。

 

 

 

 恐る恐る目を開ける。

 

 

 

 目の前にあったのは。

 

 槍に貫かれた“ソレ”だった。

 

 黒い体が崩れ、煙のように消えていく。

 

 そして。

 

 その向こう側に、一人の男の子が立っていた。

 

 私と同じくらいの年齢。

 

 無表情で、ただそこにいる。

 

 

 

 腕や足には深い切り傷。

 

 血が流れていた。

 

 私は反射的に駆け寄った。

 

「待って、怪我――」

 

 触れようとすると、その子は腕を引いた。

 

「大丈夫だ」

 

 そう言って立ち去ろうとする。

 

 名前も知らないまま。

 

 助けられっぱなしで終わるなんて、嫌だった。

 

 

 

 私は半ば強引に手を掴んだ。

 

「じっとして」

 

 掌を傷口に当てる。

 

 熱が流れる。

 

 裂けていた皮膚が閉じていく。

 

 

 

 その子は驚きもしなかった。

 

 ただ、淡々と聞いた。

 

「……なんで治す」

 

「じゃあなんでお前は私を助けた」

 

「……」

 

 

 

 それが。

 

 私たちの最初の会話だった。

 

 自己紹介でも、感謝でもない。

 

 ただの会話。

 

 

 

 治療を終え、私は顔を上げる。

 

「ねえ、名前教えて」

 

 少しの沈黙。

 

 それから。

 

「……槍牙」

 

 こぼれるように言った。

 

「ふーん、いい名前じゃん。……私は硝子」

 

 すると彼は少し考えて。

 

「いい名前だな」

 

 

 

 思わず笑いが漏れた。

 

「同じこと言ってる」

 

「……そうかもしれないな」

 

 

 

 その日は。

 

 久しぶりに、ずっと笑っていた気がする。

 

 

 

 ――

 

 

 

 日が暮れる頃。

 

 帰らなきゃいけない時間になって。

 

 私は別れるのが惜しくなった。

 

「ねぇ、また会える?」

 

 彼は少し考えてから言った。

 

「……多分、な」

 

 

 

 私は手を振った。

 

 また会えると信じて。

 

 

 

 ……だけど。

 

 この日以降、私は彼に会うことはなかった。

 

 

 

 私が高専に引き取られて。

 

 そして――

 

 彼が入学してくる、その日までは。

 

 

 

 ――――

 

 

 

 医務室の窓の外。

 

 爆音が響いた。

 

 

 

「また神代か!?」

 

「訓練場もたねぇぞ!」

 

 

 

 教師の怒鳴り声と、生徒たちの笑い声。

 

 聞き慣れた騒ぎ。

 

 

 

 私は小さく息を吐く。

 

 

 

 あの日、公園で出会った少年。

 

 無表情で。

 

 傷だらけで。

 

 自分が怪我をしていることすら気にしなかった子。

 

 

 

 窓の外で煙が上がる。

 

 

 

 ――変わってないな。

 

 

 

 そう思って。

 

 少しだけ笑った。

 

 

 

「……ほんと、手のかかるセンパイ」




どうでしたか!
今回は硝子目線の話でした!
文字数のめあすわからないので誰か教えてください!
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