真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第2章 2年後に襲って来た災厄
第10話 切り札の女神


「佐上さん、ちょっとよろしいですか?」

 

 その日。

 真月は邪教の館の主にそう呼び止められた。

 

 邪教の館とは。

 

 悪魔使い……今の時代ではデビルバスターと呼ばれる職業に就いている人間のための施設である。

 前にも触れたとおり、悪魔の本質は情報である。

 

 そのせいで「その肉体を情報に分解し、2体以上の悪魔の情報を合成。別の悪魔の情報に変化させる」ということが可能であり。

 

 これを悪魔合体と呼び、邪教の館はその悪魔合体を専門に行う施設なのだ。

 

 その内装は「邪教の館」という名称に相応しくおどろおどろしい。

 得体の知れないうねくったオブジェが並び、シリンダー状の合体ポッドが3つ、トライアングル状に並べられた「三身合体」装置。

 

 そしてそのうち、合体ポッドが1つ少ない「二身合体」装置。

 

 真月は今日、仲魔の強化のためにここにやって来たのだが。

 目的の合体を終えた後に館の主に呼び止められたのだった。

 

 新しく合体で作った仲魔である龍神キヨヒメ……和風美女の顔を持つ、人面大蛇をコンピューターの中に迎え入れながら。

 

「なんでしょうか?」

 

 そう返す。

 

 今の彼女は夫の姓である佐上を名乗っていた。

 今は戸籍制度を管理する政府自体が存在しない世界だ。

 

 男女の結婚を証明するものは、同じ姓を名乗ることくらいしかない。

 

 どちらが姓を変えるかという問題で、彼女は自分の姓を変えることを迷わず選択した。

 夫に変えさせるのは嫌だったからだ。

 

 夫の姓を変えたせいで、夫に自分の家を裏切らせるのが嫌だったからだ。

 

 ……夫の忍は一人っ子だったから。

 

 まあ、それを言えば実は彼女自身もそうなのであるが、そこは現在自分の家が残ってるかどうか分からないのだし、もし両親が生きていればそのときに考えようと軽く考えていた。

 

 

 まぁ、そんな彼女の裏事情の話はこのあたりにしておこう。

 

 

「実は、あなたを名指しで妙なプログラムが送られてきまして」

 

「妙なプログラム?」

 

 真月はそう訊ね返す。

 こんな時代にプログラムが送られてくるなんて。

 

 今の時代、悪質なハッカーがコンピューターウイルスをバラまくという事例はほぼなくなった。

 そんなことをしても何の利益も無いからだ。

 

 電子マネーが存在しないし。

 会社組織も消えている。

 

 そんな状況で、コンピューターウイルスを作成してばら撒くことにどれほどの意味がある?

 

 通信自体が満足に機能していない地域もある。

 特に東京関係は全く分からなかった。

 

 そんな状況で送られて来た謎のプログラム。

 興味が無いはずがない。

 

 館の主は真月の訊ねようとしたことを答える。

 

「発信者の名前は書いてあったんですが、それが誰であるかが良く分からないのです。……ですが、真神真月という悪魔使いに使わせて欲しいと」

 

「佐上です」

 

 すかさず訂正。

 そこは彼女には譲れないことなので。

 

 館の主は

 

「……失礼しました」

 

 非礼を詫びて。

 続けて

 

「一応の安全性チェックの結果、問題の無いプログラムだと思うのですが、どうしますか?」

 

 その意向を訊ねる。

 彼女はまず

 

「どんなプログラムなんですか?」

 

 そこを訊ねた。

 一体何のプログラムなんだろうか?

 

 そこが分からないとはじまらない。

 

 館の主は

 

「それは……」

 

 説明した。

 どんなプログラムが送られて来たのか。

 

 それは……

 

 悪魔合体システムで合体召喚をする仲魔に、様々な制限をつけることで召喚者の悪魔使いとしての実力を超える悪魔を仲魔にするというプログラム。

 名前を悪魔合体ブーストプログラムと言った。

 

 全ての話を聞き、彼女は

 

「だったら、全部乗せでお願いします」

 

 即座にそう答える。

 全く迷いが無かった。

 

 全部乗せ……

 相当制限されるはずだ。

 

 それは「同時召喚できる仲魔ゼロ」「召喚時間1日3分」「発語不能」

 常時召喚できる仲魔としては使えない。

 

 そんな真月の答えに

 

「全部乗せですか。そうすると、かなり制限されてしまいますよ?」

 

 館の主からの一応の確認。

 彼女は頷く

 

「構いません。切り札に持っておきたい悪魔を作るんです。それぐらい飲み込まないと」

 

 何かを決断するときは徹底的にやれ。

 それは彼女の信条だった。

 

 

 

 彼女には前から合体で作って仲魔にしておきたい悪魔がいた。

 それはギリシャ神話の女神で。

 

 それはギリシャ神話の女神で最強の実力を持つ女神であった。

 

 その素材は女神アリアンロッド、妖精ニンフ、凶鳥モー・ショボー。

 この3体の特殊合体。

 

 素材の制御は出来るのだが、合体結果の悪魔がレベルが高過ぎて扱えない。

 そういう悪魔だったのだ。

 

 それを扱うことが出来る……

 

 彼女としてはどれだけの制限をつけても仲魔にしたい悪魔である。

 

 彼女はコンピューターに入っている仲魔一覧を見た。

 

 それは……

 

 妖魔ヴァルキリー

 

 地母神ハリティー

 

 国津神スセリビメ

 

 龍神キヨヒメ

 

 女神アリアンロッド

 

 妖精ニンフ

 

 ……凶鳥モー・ショボーがいない。

 

 飛行可能な悪魔は妖魔ヴァルキリーがいるため、作ろうと思ったことが無かったのだ。

 ヴァルキリーは思い入れがある上、機動性、戦闘力で申し分が無さ過ぎる。

 凶鳥モー・ショボーが妖魔ヴァルキリーを上回る要素が見当たらない。

 

(じゃあ捕まえるか)

 

 デビルバスターとしての当然の結論。

 必要な合体素材がいない場合は、作るかナンパする。

 

 問題はどうやって作るか。

 もしくはどこでナンパするかだ。

 

「ええと、ご主人……この近辺で凶鳥モー・ショボーっていましたっけ?」

 

「私は存じ上げませんな」

 

 まああまり期待はしていなかったが。

 

 館の主の返事は彼女にとって有用なものでは無かった。

 それでも彼女は礼儀として頭を下げる。

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

 結果が伴わなかったとしても、礼は言うべきだ。

 それは彼女の中では常識であった。

 

 ならば作るか……

 

 合体素材としては

 

 妖鳥と夜魔、もしくは妖鳥と地霊の二身合体。

 モー・ショボー自体はそれほど強力な悪魔ではないので、素材の悪魔は低レベルでいいはず。

 でも、探す手間が。

 2体もの悪魔を探すのはそれなりに大変である。

 

 彼女は顎に手を当て少し考える。

 

 そして

 

(一度、ガラ吉さんに相談してみようかな)

 

 決断をする前に、一度自分たちの師匠に当たる人物の意見を聞いてみようと考えたのだった。

 

 そして、邪教の館を出ていく前に。

 ひとつ、聞き忘れていたことに気づき

 

 訊ねた。

 

「そう言えば……そのプログラムを送って来た人の名前は分かりますか?」

 

 館の主や自分には分からなくても、ガラ吉さんなら知ってるかもしれない。

 

 館の主は答えてくれた。

 

 それは……

 

STEVEN(スティーヴン)ですな」

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