真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「人の生き方はそれぞれで! 事情だってあるのよ! そのぐらい理解したら!?」
「個人の自由を無制限に認め、我儘を多様性と言い換えて誤魔化した結果が前の世界なんですよ! それぐらい理解したらどうです!?」
……女性2人の剣幕が激し過ぎて。
そのパートナーである男たちは傍観者になっていた。
見目のいい女2人が互いを睨みつけながら、激しく言い合いをしている。
双方、お前が間違っていると譲らない
「大体あなたどうみても高校生くらいよね!? こっち成人年齢に達しているのにその態度は何!?」
「年下だから何だって言うんですか!? 誰が口にしようと真理は真理です! あなたの中では誰が言ったかで物事の正しさが揺らぐとでも言うんですか!? これだから異教徒は駄目なんです!」
「ほら出た異教徒! 思い上がってんじゃ無いわよ! そんな見下した態度では誰も導けないと思いますけど!」
「何が思い上がりですか!」
ギャーギャー、ギャーギャー。
言い合いは妊娠出産の心構えについてだけではなく。
双方の態度、双方の年齢。
果ては
「ふざけやがって!」
「ハッ! 何ですかその汚い言葉! あまりいい土地に住んでない人ですね!?」
……言葉遣いからの、出身地ディスにまで発展した。
ただ、それでも
「確かにあまり民度の高い地域出ではないけど! それは今関係無いよね!?」
「その民度の低さが志の低さと直結してるって言ってるんです!」
「それは差別だろうがよ!」
……2人とも、絶対に相手のパートナーの悪口は言わなかった。
理由は、言ったら言われるからだ。
そうなるともう取り返しのつかないことになる。
そこが分かっているからか
「おい、その辺にしておけよ」
「タオ、抑えて」
……男2人は妻に加勢する方向で動かず、
諫める方向で動く。
夫の言葉を受けて
真月は露骨に顔を顰めて
「はじめたのは向こうなのに」
タオは
「……もう!」
ギリギリと歯噛みして。
言葉を止めた。
……自分たちは何をしに来たのだろうか?
忍は溜息を吐きたくなった。
この状態でこのメシア教徒の夫婦と思しき少年少女から、有用な情報を貰うのは難しいのではないか?
とはいえ、真月としては黙って聞き流せなかった内容だったことは彼も理解していた。
彼女は一人っ子である。
なので子供をたくさん欲しいとは常々言っていて。
その夢を叶える障壁になってるメシア教徒に、説教じみたことを言われるのは面白いわけがない。
だから彼は彼女を止めはしたが
(怒ってくれてありがとう)
内心、少しだけそう思っていた。
だが
……なんともギスギスした空気がその場に満ちた。
どうすればいいというのだろう……?
じゃあな、と捨て台詞を残して立ち去るのはあまりにも酷過ぎる。
かと言って、もう1度会話をするなんて不可能である。
散々言い合った今となっては。
人は感情の動物。
そうそう簡単に割り切れるものではない。
しかしそのとき。
激しいサイレンの音が鳴ったのだ。
空気が変わった。
「これは……!」
タオの緊張感の伴った声。
彼女はこのサイレンの意味を知っていた。
それは……
『ガイア教徒の軍勢がここ渋谷センター街を目指しています。テンプルナイトの方は即時防衛体制の構築を。天使エンジェル、天使アークエンジェルの皆様は、御助力をどうかお願い致します』
『非戦闘員の皆様は、速やかにマルキリデパートに避難して下さい。現状の全ての作業は中止です。速やかに避難して下さい』
『襲撃者であるガイア教徒の軍勢に、魔王クラスの悪魔が確認されています! 襲撃者は悪魔の化身の下津名高美の可能性が高いです! いざというときの自決用毒物の配布があります! 希望者はマルキリデパートの受付まで――』
凄まじい内容の放送。
襲撃者の存在の通知。
そして避難誘導。
さらには自決準備の案内まで。
タオの顔が真っ青になる。
「そんな……! 直接ここに攻めてくるということは、奴ら守備隊のテンプルナイトに勝つ自信があるってこと……?」
そう言い、自らの身体を抱き震える。
「もしそうならどうしよう……!? 皆、皆殺されるか奴隷に……!? ユヅル君……!」
「タオ、落ち着いて」
怯える彼女を、ユヅルは安心させようとする。
「きっと大丈夫さ。神が僕らを見捨てるはずが……!」
そういう彼も、顔色が青い。
自分にも言い聞かせているのかもしれない。
だがそのとき
「……心配しなくてもいいから」
スッと真月が立った。
忍も合わせて立ち、妻が出られるように先に外に出る。
彼女はボックス席のテーブルに自分の鞄を置き。
そこからアームターミナルを取り出した。
そしてそれを流れるように装着し。
「放送に従ってデパートの中に隠れてて。……その間に、全部済ませてあげるから」
そう言いつつ。
彼女は喫茶店の外に出て
アームターミナルを操作した。
すると。
魔法陣が2つ地面に出現し。
片方から……
「グワッハッハーッ!」.
4メートルはある、巨大な男性器の姿の悪魔が出現した。
魔王マーラ。
「呼んでくれてありがとう、お姉ちゃん」
そしてもうひとつの魔法陣から、可愛らしい、小さな女の子が召喚される。
髪の毛をふたつに括った、ピンクのワンピースの幼い女の子である。
そんな子が、元気よく魔法陣から飛び出してくる。
女の子は魔法陣から飛び出した後。
召喚者である真月の下に歩み寄り
その手を取った。
……その次の瞬間……!
凄まじい勢いで、その女の子の身体が膨れ上がった。
膨張し。
女の子の体積が増して巨大化し。
別の姿になっていく。
それは……
10メートルくらいの大きさの、腕が何本もある、赤黒い、巨大骸骨。
天津神イザナミ。
イザナミは真月から不足していたマグネタイトを受け取って真の姿へと変身を遂げた後。
「……事情は聞いておる。ゆくぞ真月!」
そう召喚者である真月に告げる。
真月はその言葉に頷いた。
「ええ! イザナミ様、頼みます!」
そしてイザナミの複数ある腕の1つに掴まり。
駆け出していく。
そんな彼女らの姿を……
メシア教徒の若い夫婦……タオとユヅルは
まるで神の使いを見る目で見送った。