真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
渋谷センター街より離れた場所。
そこではすでにガイア教徒の軍勢とメシア教徒の軍勢のぶつかり合いがはじまっていた。
「アギラオッ!」
上空では飛行型悪魔たちが敵対者に向かって魔法攻撃を行っていた。
翼を持つ甲冑姿の戦士……天使アークエンジェルたち。
彼らは
火炎系攻撃魔法アギラオ。
決して安くない火炎魔法。
その灼熱の火炎弾が複数、その宙を舞う魔王を狙う。
しかし魔王アスタロトは背中に生やした黄金色の翼を羽ばたかせながら
「ホホホ! 無駄よ! 我に魔法は通じぬ!」
それを嘲笑った。
その言葉通りに、アークエンジェルたちの火炎魔法はアスタロトに命中すると同時に輝きになり、その身体に吸い込まれていった。
「何ッ!?」
「おのれ魔王め!」
アークエンジェルたちは自分たちの魔法が全て無駄に終わり、吸収されたことを理解した。
ならばと、彼らは手にした剣を振り上げアスタロトに向かって斬り掛かっていく。
だがそんな彼らに
「煩いわ雑魚どもめ!」
魔王アスタロトは騎獣である大蛇に取り付けた手綱を左手で操りながら、その反対の手に握った1本の槍を振るう。
「デスバウンドじゃあ!」
気合の声と同時に突き出した槍。
その槍から、魔王の闘気により具現化した何千という槍の突きが、嵐のようにアークエンジェルたちを飲み込み
「ぐはああああああ!」
「うぐおおおおお!」
その槍に貫かれ、穴だらけになったアークエンジェルたちが墜落していく。
墜落しながら力尽き
落ちながら、マグネタイトへと還っていった。
「ここは通さんぞガイアどもめ!」
そして地上ではテンプルナイトたちが戦っていた。
ガイア教徒の雑兵たる処刑ライダーたちと。
純白の制服に身を包み、メシア教からの支給装備である機械仕掛けの剣……プラズマソードを振るう。
刀身にプラズマを発生させ、斬撃を向上させる科学の剣である。
その剣は処刑ライダーたちの武装である手斧をものともせず、野蛮な男たちを切り裂いていくが
「フォフォフォフォ……! これはこれは勇敢な男たちですねぇ」
そこに現れる肥満した青白い悪魔。
その大きさは3メートルを大きく超え。
ぶくぶくに肥満した身体に、背中に蝙蝠の翼。
風船のように大きく突き出た腹は縦に裂け
そこには鋭い牙と長い舌が覗いている。
悪魔は手に一振りの長剣を握っているが、それをぶらぶらとさせる。
まるで戦う気が見えない振る舞いだ。
そこにテンプルナイトたちが殺到し、勇敢に斬りつけるが
その斬撃はぶよぶよの腹に弾かれ、一切の痛手を与えない。
「フォフォフォフォ……無駄ですよ。私の身体は拳法家殺しと呼ばれていましてぇ……」
攻撃が通じないことに青褪めるテンプルナイトたちに向かい、悪魔は言った。
「私には物理攻撃が一切通じないんですよぉ……そういう風にキミたちが頑張って無駄な努力をしている間にィ」
悪魔はその太った顔に残虐な笑みを浮かべる。
そして
「マハブブーラァ!」
気合を込めて、魔法を解き放つ力の言葉を叫んだ。
同時にアリオクの身体から放射状に巻き起こる凍える吹雪の嵐。
それはテンプルナイトたちを氷漬けにし、絶命させていった。
その場に心停止を起こして倒れる男たちを前にして
「こうなってしまうんですよぉ……生まれ変わったら、私に物理攻撃は二度としないことですねぇ」
彼は魔王。
魔王アリオクと言った。
「アハハハッ! ざまあみなさいクズ共が!」
そしてその後ろに。
1人の女が立っていた。
それは見たところ40近い中年女であったが
服装は妙に若かった。
肩に届かない程度の髪の長さ。
赤基調の派手な衣装を身に着けている。
痛々しいのは、年齢にそぐわない髪に巻いたスカーフ。
リボンのような形で巻きつけ、20代そこそこを演出しているようだった。
……外見は決して悪くないのだが、その若作りと無数に身に着けたアクセサリーの数々、そして醸し出すオーラが、彼女をどうしようもなく不快な存在に仕上げていた。
「いいこと!? イケメン以外はどうでもいいわ! 殺すなり犯すなり好きにしたらいい! どうせゴミ同然のカス野郎どもなんだから!」
「だけどイケメンは絶対に殺すな! 殺したら私が許さない! 全て私が保護すべき宝石たちなのよぉ!」
彼女の名は下津名高美。
ガイア教徒13人衆の1人。
この大破壊後の東京では、悪魔の化身と恐れられている最悪の人間であった。
「ここは絶対に守る!」
「刺し違えてでもお前を倒す!」
「下津名覚悟しろ!」
テンプルナイトたち、天使たちが彼女に突撃していく。
彼女さえ討ち取れば、渋谷センター街を守れるとの判断か。
しかし。
彼女は不敵な笑みを浮かべつつ、その左手に装備した自身のアームターミナルを操作した。
同時に地面に描かれる魔法陣。
『DEMON KING SUMMON』
そこに出現したのは。
紫色の身体に、白い斑模様がついた巨漢。
その手には馬鹿でかい、燃え盛る剣を握っている。
下津名は命じる。
「スルト! あの身の程知らずのブサメンどもをぶっ殺してしまえ!」
この悪魔の名前はスルト。
北欧神話の炎の魔王……魔王スルトであった。
「……御意だ」
命令を受け、スルトはその剣を振り上げ、振り下ろす。
紅蓮の炎が巻き起こり、迫るメシア教徒の軍勢を飲み込み
ぎゃあああああああ!
凄まじい悲鳴と共に、瞬く間に消し炭に変えていく。
「ざまああああ! 私に逆らうな! 私は常に正義! 身の程を知れカス共がぁ!」
その様子を目にし、品の無い下品な声で哄笑する。
3体の魔王を従える恐るべき悪魔使い。
ガイア教徒の最高位の13人の1人に数えられる化け物。
それが下津名高美である。
彼女は遠くの渋谷センター街を見つめつつ
「待っていなさいまだ見ぬイケメンたち……この私が所有して、保護してあげますからねぇ……!」
ニヤリと嗤った。
その表情は酷く醜かった。
決して整っていないわけではない顔立ちなのに。
このまま、彼女はこの守備隊を全滅させ。
そして渋谷センター街に攻め込んで、地獄絵図を展開するのだろうか……?
だがそこに。
突き進んでくる影があった。
それは……
疾走する巨大な赤黒い骸骨と、それに並走する緑色の男性器を模した悪魔。
そして背中に鳥の翼を持つ、緑色の仮面の戦士であった。