真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
(あれが襲撃者……?)
真月は現場に駆け付け、ガイア教徒の襲撃者たちの姿をその目で確認し。
驚愕せざるを得なかった。
彼女の中では下津名高美は男性だった。
無法者であるガイア教徒たちを率いて、奴隷狩りをするような人間は男性である。
そういうイメージがあったのだ。
だが現場に駆けつけてみると……
明らかにガイア教徒を統率している人間が
女だったのだ。
「……あなたが下津名さん?」
真月の誰何の声に、下津名は答える。
「なぁに? あなた? 私の前に悪魔を率いて姿を見せるとはどういうつもり?」
そこに居たのは若作りがキツイ、性格の歪んでいそうな中年女であった。
真月は
「渋谷を攻めるのはやめなさい! あそこの人たちは皆で一生懸命渋谷復興をしてるだけなのよ!」
自分の中の驚愕と困惑に蓋をして。
この女にこの理不尽な襲撃を止めるように訴える。
しかし
「はぁ? あそこの住人のほとんどは邪悪なメシア教徒じゃない。そんな奴ら、どんな目に遭おうが自業自得でしょうが」
下津名は鼻で笑う。
そして
「あなた偽善者なの? それとも頭空っぽのメシア教徒なのかしら?」
見下す視線を向けながら、下津名は
「メシア教徒は馬鹿ばかりで、頭空っぽで! 子供を洗脳して! 詐欺まで働く! 存在自体が罪よ!」
両腕を大きく広げ、まるで歌劇の役者のように声高くメシア教徒の罪深さを訴えた。
笑みを浮かべながら
そして
「だからそこからイケメンだけを私の手元に置くために救ってあげるの! それの何がいけないの!?」
「そんな理由で……! あなた、奴隷狩りをしてるっていうの……?」
信じられなかった。
狂っていると思った。
この女には良心や倫理観というものは無いのだろうか……?
いや、あるのかもしれないが。
真月は感じ取っていた。
この女、自分が悪事を働いているとは微塵も思っていない。
善行を成していると本気で思っている。
こんな人間、速やかに排除しなければいけない!
「マーラ! あの女を洗脳して!」
「任せるがいい!」
真月の命令に応え、魔王マーラが動く。
「ワシの言葉は否定できない! ワシから目を離せない!」
魔王の魔力の籠った言葉が響き渡った。
それは魔王が心を操ろうと認識した者を瞬く間に人形に変える……
はずだった。
「馬鹿な……!」
魔王の信じられない、ありえないという気持ちが籠った言葉。
真月はマーラに視線を向けた。
「……まさか!?」
真月の疑念。
かつてマーラは言っていた。
自分の催眠術は自分の魔法の奥義であり、およそ人間であるならば効かないことはあり得ないと。
この態度は……
この下津名にも通じなかったということなのか!?
その疑いは
「……何かしたのかしら?」
そのせせら笑う下津名の言葉でハッキリとした。
下津名には洗脳が通じない。
それは一体何故なのか?
こんな狂った凶悪な人間に、マーラの洗脳の魔力に耐え切った自分と同じものがあるというのか!?
納得いかなかった。
「どういうことよ!? あなたの洗脳は人間には必殺なんでしょう!?」
そう動揺を隠すように、激しく糾弾するように問う真月。
そんな真月にマーラは言う。
「……あの女は世界の認知があり得ないほどに歪んでいる。精神世界に自分の独自の認識の城を築くレベルの認知の歪み……!」
認知の歪み……?
その言葉で真月は察した。
つまりあの女は、外界の認識がとんでもないレベルで歪んでいて、それで自身の精神が守られている状態なんだと。
認知が歪んでいるので言葉が通じず、結果洗脳が届かない。
効かないのではない。届かないのだ。
自分のように、ゆるぎない何かを心に持っていてその支えで洗脳を跳ね除けた自分とは違うのだ。
(そういうことか)
彼女は納得した。
そして一方下津名は
「まぁいいわ……! どのみちお前は敵のようだし……処刑ライダーたち!」
真月の行為についての興味を無くし。
下津名は周囲の処刑ライダーに呼び掛けた。
それは
「そこの女を好きにしなさい! 私に逆らう邪悪な女よ! 私が許す!」
オオオオオオオオ!!
下津名の言葉に処刑ライダーたちが湧く。
そして手斧を振り上げ、バイクのエンジンを全開にし。
真月に向かって殺到していく。
「これだけの荒くれどもにボロボロにされてしまえ! 生意気なクソ女があああああ!」
そして下津名は自身の仲魔……魔王アリオク、魔王アスタロト、魔王スルトを彼女に差し向けた。
真月の仲魔をそれで抑えるつもりか。
狂笑を浮かべ、勝ち誇る。
だが――
「ワシの言葉は否定できない! ワシから目を離せない!」
マーラが発したその言葉で。
処刑ライダーたちの動きが停止した。
突如として、まるで電源が落ちたように。
その様子に
「どうしたの」
お前たち、と下津名が続けようとしたとき。
その前に、被せるように
「お前たちの敵はガイア教徒下津名高美!」
真月の言葉が響き渡った。
……下津名に洗脳が届かなくても。
雑兵たちは別である。
下津名のような異常な精神を持つ人間が、そうそう居るはずが無いのだ。
ならば……
標的を変えてしまえば良い!
至極当たり前の結論である。
そして真月は下津名を指差しながら
「いけええええええ!」
突撃命令を発する。
それに応えるように再び処刑ライダーたちは鬨の声をあげる。
オオオオオオオオ!!
反転。
処刑ライダーたちの標的が切り替わった。
真月から……
下津名高美に!