真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「なぁにぃぃぃ!?」
生意気な若い女を抹殺する命令を下したはずの処刑ライダーたちが
いきなり反転して自分に向かって斬り掛かって来たことを目にして
「ふざけるなぁ!」
下津名は目を剥き激昂し、腰に吊るしていた奇妙な短剣を引き抜いた。
それは本当に奇妙な形の短剣で
刃が一部円を描くように湾曲している短剣であった。
どうみても突き刺す用途には不向きな形状だ。
どこか鎌に似ていた。
鎌のように引っ掛けて斬るのであれば使えなくも無いだろうが、果たしてそれは武器としての実用性はあるのか?
そう思えてしまう。
だがおそらく
この武器は武器としての用途は薄いのだろう。
その根拠は
彼女が
「スルト! アリオク! 私を守りなさいィ!」
仲魔2体に命令を下し、後ろに脱兎の如く駆け出す姿。
そこにあった。
それが異様に速かったのだ。
下津名は別に太っているわけではないが……決してアスリートには見えない身体であるのに。
(……そういう短剣。所持者の素早さを上昇させる魔力を持った武器……!)
真月はそれをそう判断した。
あの女は、自分に迫るものが現れたときに問題なく逃げられるようにそんなものを持っていた。
(だったら)
彼女は愛用の銃……AR15を構えた。
その動きは流れるようで。
構えられた後
速やかに発射音が鳴り、その銃弾は
「ぐあっ!」
……処刑ライダーに命中した。
不確定な遮蔽物が多過ぎて、当てにくいのだ。
処刑ライダーたちが一斉に下津名を追っているために。
(射線さえ通っていれば当てられるのに!)
彼女は奥歯を噛み締める。
どうすればいいのか
思案する。
そこに
「マハブフーラ!」
でっぷり肥満した青白い悪魔……魔王アリオクが処刑ライダーたちを阻むように立ち塞がり。
その巨体から凍える吹雪の魔法を解き放つ。
魔王は全く躊躇いなく、こちらの洗脳を受けて寝返った処刑ライダーたちに攻撃魔法を浴びせていく。
アアアアアアーッ!
悲鳴が響く。
アリオクのマハブフーラをまともに浴び、凍り付いて倒れていく処刑ライダーの男たち。
真月はそれを目にしながら
(とんでもない女ね……仮にも手下なのにまるで躊躇いなく悪魔に命じた)
下津名という女の恐ろしさを見た気がした。
あの女は自分しか愛していない化け物なのか。
絶対に倒さなければならない。
「女ァ……我が主に銃を向けようとは……」
そのとき。
宙を舞う大蛇に跨った仮面の悪魔……魔王アスタロトが彼女を見下ろし
「我が槍の餌食にしてくれるわ」
そう言い放ち、その右手の槍を振り上げる。
そのアスタロトの槍を躱すため、駆け出す真月。
そして
「オオオオッ!」
……突っ込む忍。
背中の翼を羽ばたかせ、横合いから稲妻のように飛び込んで。
アスタロトの頭に浴びせ蹴りを繰り出す。
「ぐぉ! 何奴!?」
蹴りを浴び、地面に墜落するアスタロト。
「させっかよ!」
追撃する忍。
翼ある仮面の戦士と、同じく仮面の魔王の戦いが開始される。
そして
「真月! こっちは任せろ!」
その夫の言葉に
「分かったわ!」
彼女は走った。
この襲撃の首謀者……下津名に向かって。
墜落したアスタロトを追撃し、彼がその手に火炎を撒き起こし
「メギドフレイム!」
地上のアスタロト目掛けて火球を放つ。
その火球を
「馬鹿め! 我に魔法は!」
効かぬ!
そう言おうとした。
だが
火球はアスタロトに命中しても輝きに変じて吸収されず。
そのまま魔王の肉体を炎上させる!
「ぐあああああああっ!」
絶叫する魔王。
「火炎耐性があろうと無駄だ! 俺の炎はそれを貫通する!」
そして追撃は続く。
絶叫し身悶えする魔王に
忍の拳と蹴りの嵐が襲い掛かる。
左鉤突き、右肝臓打ち、左下段、右後ろ廻し蹴り……
その連続性はまるで隙間が無く
一撃ごとにアスタロトの心が折れていく。
「ぐおおおおお……!」
アスタロトの苦し気な声。
そのすぐ後に
忍は右足刀を叩き込む。
アスタロトの身体が後ろに吹き飛んだ。
そして彼は
「とどめだッ!」
腰を落とし。
決断する。
必殺の究極合体魔法を使用することを!
(これで決める!)
「喰らえ――!」
拳に込める火炎魔法トリスアギオン。
火炎耐性を貫通するその灼熱の火炎魔法と、空手の奥義「鎧通し」を同時に使う必殺技――
その踏み込みは弾丸のような速さ。
その速さでアスタロトとの距離を瞬く間に詰め
繰り出した。
「トリス……インパクトォ!」
そしてその拳は
魔王アスタロトを捉えなかった。
「させませんよっ!」
……その寸前に割って入った影。
肥満した青白い姿の魔王。
魔王アリオク。
彼の拳はその魔王のぶくぶくと膨れ上がった腹部に突き刺さり
「おおおお! 熱ィ!」
彼の身体を大きく焼き。
それだけで終わったのだった。
(……なん……だって……?)
彼は動揺する。
究極合体魔法トリスインパクト。
決まれば確実に相手を葬る必殺の一撃。
それが発現しなかったのだ。
「ウオオオ……よくもやってくれましたねぇ……!」
氷結魔法を使用し、火炎魔法のダメージを抑え込もうとする魔王アリオク。
その姿は魔法でダメージは受けているものの、その命にまでこの一撃が届いていないようにしか見えなかった。