真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第11章 四天王の館
第109話 謎の建物


「六本木って死の街だって、渋谷のテレビで言ってたけど」 

 

「……どうしようか? 何も考えないで乗り込んでいい場所じゃないよね」

 

 渋谷から六本木まで大体30分くらいで行けるらしい。

 今の東京はあまり気を抜いて走っていい場所では無いのだが、彼ら2人はそんな言葉を交わしつつ進んでいた。

 一応、真月は警戒用に霊鳥アルゴスを召喚している。

 襲撃があるなら分かるはず……

 そういう安心感故の行動である。

 

 そして

 

(死の街であるなら、イザナミ様を呼べばいいのでは?)

 

 サイドカーの運転をしつつ。

 忍がそう考えたときだった。

 

 ポツッと。

 

 空からの水滴が落ちて来た。

 一般で言うところの雨である。

 

(雨……)

 

 忍は思う。

 

 東京で雨はまずい、と。

 

 ここ東京では2年前、核兵器が使われた。 

 

 その際に、大量の放射能が撒き散らされたはずである。

 

 無論、それは2年前の話で。

 そして放射能はウイルスでも菌でもない。

 物質である。

 

 放射能とは正確に言えば放射性物質の俗称で。

 放射性物質とは放射線を出す能力を持つ物質を指す言葉である。

 

 ということは、時間が経てば散っていくのだ。

 

 放射能は散れば散るほど影響が小さくなる。

 当たり前である。

 

 一滴で人を殺してしまう猛毒も、大量の水で薄めたならゴクゴク飲めてしまう。

 致死量から下がるからだ。

 

 だから科学的に考えるなら……

 

 所謂「黒い雨」は気にしなくていい。

 黒い雨とは放射性物質に汚染された雨のことである。

 

 

 けれども

 

 

 ここで、彼はちらりと真月の腹をみた。

 

 彼女と新宿で避妊無しで愛し合った。

 もし子供が出来ても、それまでに使命を果たせば全く問題ないからと。

 

(……あそこに俺の子供が入ってるかもしれないんだよな)

 

 こういうことは、ある意味呪いのようなものである。

 そして2年という時間は、呪いが解けるには短すぎる時間だ。

 

 ものすごい抵抗があった。

 

 ここで雨を浴びさせたくない。

 

(……どこか雨宿りができるところは……)

 

 まだ六本木までしばらくかかる以上、雨宿り場所を探すのは当然の成り行きであった。 

 

 彼は必死で回りに視線を向けた。

 

 すると……

 

 少し離れたところに、赤い屋根の建物が見えた。

 かなり大きな建物で、屋敷に見えた。

 

(これは……)

 

 行ってみる価値はある。

 

 そして、言う。

 

「あそこの建物で雨宿りして行こう」

 

「あの赤い屋根の建物……?」

 

 真月がちょっと疑問形の言い方で返答する。

 

 何でその程度で寄り道するの?

 

 ……と言いたげな感じである。

 

 彼はそれに対して

 

「まだ六本木に辿り着くまで10分は掛かる。このまま本降りになったらずぶ濡れになるだろ」

 

「……そうね」

 

 忍の言葉に彼女は同意した。

 一応、レインコートを持ってきているが。

 着ることに手間がかかるし。

 アームターミナルも使いにくくなる。

 

 避けられるなら越したことはない。 

 

 放射能のことは言わないでおく。

 言う意味が無いからだ。

 

 そして2人は赤い屋根の建物に向かった……

 

 

 

 近くに行くと。

 赤い屋根の建物はかなりデカかった。

 

 東京駅の建物くらいの大きさがあった。

 そして窓が一切なかった。

 

(……人、住んでるんだろうか?)

 

 そこが不安になる。

 もしや廃墟だろうか?

 

「ここ、何の建物なんだろうね?」

 

「全く分からないな。倉庫にも見えないし」

 

 2人、顔を見合わせてこの建物の正体について言葉を交わす。

 そして

 

「ごめんください。どなたかいませんか?」

 

 とりあえず、中に人がいることを期待してそう声をあげた。

 

 だが、待てど暮らせど返事が無い。

 

 雨宿りが出来ないのであれば、ここにいる理由もなく。

 2人はサイドカーにブルーシートを掛けた後、決断した。

 

「失礼します」 

 

 真月はそう言いながら玄関ドアに手を掛けた。

 霊鳥アルゴスの警告が無いから、思い切って

 

 開けた。

 

 すると中はどういうわけか……何故か明るかった。

 本当にどういうわけだろう?

 電灯も何もないはずなのに、だ。

 

 ぼんやりとした明るさだったが、行動するのに支障の無い明るさであった。

 

(……どうしようかな)

 

 その異様さに不安になり、彼女はアームターミナルを操作して仲魔を呼び出した。

 地面に描かれる魔法陣から呼び出されたのは……

 

「マスター! また僕を呼んでくれたね!」

 

 ……幽鬼ポルターガイスト。

 

 真月はポルターガイストに

 

「悪いんだけど、ちょっと中を探検して来て」

 

「りょーかい!」

 

 ポルターガイストを中に差し向ける。

 万一のトラップを警戒したのだ。

 

 ポルターガイストが念動力で扉を開けて中に入るとき。

 数分で戻ってくることをその後ろ姿に言った。

 

 そして数分後。

 

「中には誰もいなかったよ」

 

 ……ポルターガイストは無事に戻って来た。

 

 だったらもう、大丈夫と判断して良いのでは?

 

「入ろう」

 

 忍は決断は自分の役目だとばかりに、そう妻に言った。

 そしてその言葉に真月も頷いた。

 

 

 

 中に入ってみると、妙に快適な建物であった。

 廃墟特有の妙な黴臭さも無い。 

 

「……変な建物」

 

 中を見回しながら忍は呟き

 

「……結構広いね」

 

 真月も同じく、周囲を見回しながらそう言った。

 

 

 建物の雰囲気は寺に似ている気がした。

 窓が無いことを除けば。

 

 天井がやけに高く感じた。

 外から見た形から予想できないほど。 

 

「どうする? 奥に行く?」

 

 真月が忍に訊ねる。

 ここからどうするのか。

 

 雨宿りであるならば、別にここに居ても問題ない。

 だが奥に行けば、休む場所があるかもしれない。 

 

 しかし奥に行けば、何かあったときに逃げることの難易度が上がる――

 

 そのときだった。

 

 

「うわー! 酷い雨!」

 

 

 いきなり。

 この場にもう1人の人間が入り込んで来た。

 

 

 

「あ、あなたたちも雨宿りですか?」

 

 入って来たのは女であった。

 身長は真月より少し高い。

 

 白い丸首シャツに、藍色のジーンズ。

 その上に茶色のジャケットを着ている若い成人女性だ。

 

 髪型はちゃんと整っていて、サラサラしている。

 長い黒髪。

 

 清楚を絵にかいた感じで美人に数えられる。

 ……そして。

 

 どうしようもない感じで、目を引くのが胸であった。

 

 かなり大きい。Iカップくらいあるかもしれない。

 

 それに気づいたとき、真月の目が険しくなる。

 

 女は雨に当たっていたせいで

 下の下着が透けていたのだ。

 

 忍はそれに気づいた瞬間、慌てて目を逸らした。

 そして逸らした先に真月の顔があった

 

(……何か怒ってる?)

 

 彼は不機嫌な顔で睨まれていた。

 ……いや、そんな気がした。

 

 しただけである。

 

 なので、気づかなかったことにした。

 不可抗力であるし、指摘しても良いことが無い気がしたから。

 

 そして

 

「ええ。そうですよ。私たちは佐上と言います。私は真月でこっちが夫の忍。……あなたは?」

 

 真月が今の不機嫌をどこにやった? という笑顔で女に答える。

 忍はそこに、女性の怖さを感じた。

 

 真月の言葉に女は

 

「私、留井(とめい)明日香(あすか)といいます。ジャーナリストです」

 

 笑顔でそう返答する。

 

(ジャーナリスト? このご時世に?)

 

 違和感を感じた。

 この大破壊後の世界で、取材して情報をまとめることに何か意味があるのだろうか?

 皆、その日を生きることで精一杯であるのに。

 

 ……しかし。

 

 そう言われてみると、彼女は大きな背負い鞄を背負っていた。

 説得力はある気がした。

 装備も無しに取材は出来ないだろう。

 

 それによく考えれば 

 

 渋谷では街頭テレビがあった。

 あのテレビで流していたニュースの数々は、当然誰かが集めて来た情報だろう。

 

 ならば、やはり彼女はジャーナリストなのかもしれない。

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