真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「モー・ショボーか」
ガラ吉の家に戻り。
師匠であるガラ吉に訊ねる。
モー・ショボーを仲魔に入れたいのだが、どうすればいいのかと。
彼は居間で読書をしていたのだがそれを取り止めて答えてくれた。
「僕が1体契約してるよ」
おお、と心で歓声をあげる2人。
「可能なら譲っていただけないでしょうか?」
妻に代わり、そう願う忍にガラ吉は顎を指先で触りつつ思案顔になる。
どうも、簡単なことではないらしい。
それは
「別にそれは良いんだけどさ、義理があるんだよね」
その悪魔に、ガラ吉は義理があるとのこと。
その義理とは?
それは……
「その子、元々日本の少女で、心残りがあったせいで死後にモー・ショボーに変異してしまった子なんだけど」
元日本人少女のモー・ショボ―……
珍しいパターンかもしれない。
ガラ吉の話を聞いた。
それによると……
大破壊が起きる前。
ガラ吉は仕事の成り行きでモー・ショボーに変異した元人間の少女に出会った。
モー・ショボーに成り果てた少女は生前の記憶を失っていて。
それでも彼女を日本人と判断したのは、外見から。
外国人には見えなかったからだ。
あと、おぼろげながらに自分が元々日本人だったという自覚があった。
彼女は
「ボクは何が心残りだったのかを自覚したい。何が何だか分からないまま自分では無いものになりたくないよ。うぐぅ」
そう言ったらしい。
なのでガラ吉は、彼女を仲魔にして何かを思い出すまで保護してやろうと思ったそうだ。
そのまま放置しておくと、身も心も悪魔化し、人では無いもの……人を襲う悪魔である凶鳥モー・ショボーになってしまうから。
凶鳥モー・ショボーは凶暴な悪魔で、正攻法では会話の出来ない悪魔なのだ。
なのでガラ吉は、彼女を仲魔にしてそうなってしまうのを防いだのだった。
しかし……
「で、今日に至るまで、決定的なことは何も思い出してはいないんだよね」
その後、モー・ショボーが自分の心残りが何だったのかを思い出すことは無かったらしい。
なんとなく、男の子の顔と女の子の顔を思い出すことがあったらしいが、それが誰であるかは分からなかった。
それ以上進んでいない……
「だからさ」
ガラ吉は切り出した。
「僕としても、モー・ショボーをキミたちに譲るのは助かる面はあるけど、そういう事情があるから簡単では無いんだよね」
ガラ吉としては仲魔の召喚契約のコンピューター内容量を1つ潰している仲魔を手放すのは助かる。
でも、それをホイホイやってしまうと義理が立たない。
「だからまぁ、その辺を引き継いでもらえるというならキミらに譲るけど……どうする?」
ガラ吉は淡々となんて事の無いことを言う態度でそんな話を語り終え。
忍たちの意志を訊ねた。
忍と真月は顔を見合わせ。
思案した。
忍は思う。
ガラ吉は言っちゃなんだが、厄介払いのいい機会だと思ってると思う。
だから、ここは「引き取ります」と言った方が良いのは自明。
しかし……
悪魔の言う「心残り」が何なのか。
それをハッキリさせてやる責任がついてくる。
無論、仲魔にしたらこっちのもんと、悪魔の願いをガン無視して強引に合体ポッドに投げ込むのもありではあるが……
それは流石に「やってはいけないこと」だろう。
「真月、どうする?」
そう忍は隣に立つ妻に訊ねる。
彼女はそんな夫の言葉に
「……引き受けましょう。ここはそうすべきでしょ」
そう、返答した。
そうして。
彼ら2人は、ガラ吉より凶鳥モー・ショボーを譲り受けることになった。
凶鳥モー・ショボー。
アームターミナルに登録されている仲魔一覧にはそう書かれているが
実際に呼び出した悪魔は、一般的な凶鳥モー・ショボーのイメージと違っていた。
身長はあまり高くなく、小柄。
髪型は肩にかかる程度伸ばしていて、栗色の髪。
その髪に赤いカチューシャをつけている。
黄色のダッフルコートを着用した姿で、茶色いリュックを背負っている。
そしてそのリュックから、純白の翼が2つ、生えていた。
一般的なモー・ショボーの姿からかけ離れている。
共通点は少女である、ということくらい……
「ええと、ガラ吉さんから変わった新しいご主人様だね。よろしくお願いします。うぐぅ」
モー・ショボーはそう言って頭を下げる。
「こちらこそよろしくお願いするわ」
真月は契約主としての挨拶返しをし。
続いて
「ねぇ、モー・ショボー……ちょっと聞きたいんだけど」
少しだけ、聞きにくいことを訊いた。
「あなた、心残りがあるそうだけど……今の世の中について知ってる?」
ガラ吉の仲魔ストックで登録されている間。
世界は大きくその姿を変えてしまった。
真月の問いに首を左右に振るモー・ショボ―。
それを見て、真月は言う。
「今の世の中、あなたが人間だったときとは全然違う世界になっているわ……」
世界は変わり果ててしまった。
昔とは違う。
そこから思うことを、続けて訊ねる。
「そんな状況で、本当にあなた、自分の心残りをハッキリさせたい? 絶望してしまうかもしれないわよ?」
そんな世界で、変わる前の世界で抱えていた心残り。
それをハッキリさせることに果たして意味があるのだろうか?
何かを守りたかったという心残りなら、その守りたいものが無惨に壊れてしまったことを知ることになるかもしれないし。
大事な誰かの幸せを見届けたいって思いだったら、その誰かの悲惨な最期を知ってしまうかもしれない。
だから訊ねたのだ。
この世には、知らない方が幸せなこともあるのだ。
モー・ショボ―は真月の言葉を受け止めて、悲しそうな顔をした。
そして俯き、しばらく考えて
「ひとつだけいい? ご主人様?」
顔を上げた。
「何かしら?」
真月はモー・ショボーの要望は基本的に聞いてやるつもりであった。
説得で口にした言葉は本心ではあるが、それが「自分のやりたい悪魔合体の素材確保」という事情から出て来たことに違いは無いのだ。
自分の都合も多分に含まれている以上、それを聞き入れてくれるのであれば交換条件で大概の要望は叶えてやろうと思っていた。
そんな彼女を前にして、モー・ショボーは自分の要求を口にする。
それは……
「ボク、今の世の中を見てみたい! 外に連れて行って欲しい!」