真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「雨宿りでこんなところで待つのもアレではないですかな?」
テングのこの一言で。
彼らは奥に案内された。
「ここは一体どういうものなんだ?」
忍は歩きながら訊ねる。
先行するテングは答えた。
「ここは鬼神ゾウチョウテン様がいらっしゃる四天王の館ですワイ」
廊下を歩きながらのテングたちの話によれば。
ここは東京を守護する四天王の館らしい。
東京を守護する4柱の鬼神が、東京4カ所で東京を守っているそうだ。
核ミサイルが落ちたとき、完全に東京が失われないようにその神力で守ったらしい。
なので東京の街は、一部失われずに不自然に生き残った建物があるのだとか。
ひょっとしたら皇居や東京駅、スタジオアルトの街頭テレビがほぼ破壊されずに残っていたのは、そういう理屈なのだろうか?
四天王たちは可能な限りICBMの洗礼から東京を守り。
今は力を回復させるために、自らを封印して休眠中とのこと。
その封印を解くには、少なくともあと30年の時間が必要だそうだ。
「30年経ったら再び東京を守るために復活するの?」
真月がその話に参加する。
テングは頷き
「その通りですワイ。そのときを待ちわびております」
なるほど。
2人はこの館について理解した。
だが、それでも疑問が残る。
それは……
「しかし……こんな建物が、大破壊前からあったのか?」
周囲を見回しながらの忍の言葉。
この館はかなり大きな建物で。
こんな建物があったなどと聞いた覚えが無かった。
「ああ、それは……」
それについてテングたちが説明する。
この建物は一種の異空間みたいなもので。
四天王の復活を早めるために作り出したらしい。
この世界に四天王を深く結びつけることで、より多く復活のための力を得る。
元々四天王を祀る祠があった場所に、魔術的な手法で空間を歪めて作り上げた建物らしい。
「この館の中は一種の異界ですじゃ」
そうだったのか。
彼ら2人は、テングの説明に膝を打つ思いであった。
そして一行は奥に通された。
そこは畳の部屋だった。
ゆうに、20畳以上ある大部屋である。
「少し待っていてくだされ」
テングは一行を完全に客として扱っていた。
テングは一行を見て、一言。
「湯の用意があります故」
湯……
風呂のことだろう。
雨に濡れた留井を見て、思ったのか。
風呂に入って貰った方が良いと。
「それはありがたいです」
真月の方も、まともな風呂に入れるのは嫌なわけがない。
少し弾んだ声でそう言った。
テングたちはその言葉で迅速に動く。
そして
「こいつが、館のお風呂について教えますゆえ」
紫色の肌を持った、半裸の女の姿をした鬼を連れて来た。
半裸の女の姿の鬼はヤクシニーといった。
そしてヤクシニーは先に女性陣を連れていく。
雨に濡れて厄介なのは、女性陣の方が酷かったからだろう。
忍はひとり畳の部屋に放置される。
(……暇だ)
忍は今更しょうがないし我儘なのは分かってるが、と1人で前置きし
(ここで、留井さんがここに居なければ、お風呂は多分真月と一緒に入れたはずだ)
そうだったならすぐにでも温まれたはずなのに。
自分たちは運が悪い、と思った。
あまりにも自分本位なので本人にはとても言えない事だが。
まあ、それよりも
(雨……)
外の雨はかなり激しかった気がした。
最後に外を見たときの印象であるが。
雨を突っ切っていくのを避けたい以上、今日はここに泊まった方がいいのかもしれない。
テングたちが許してくれるのを前提にしての話であるが。
座って腕を組む。
自分達はテングたちを殴り倒して今の状況に持って行っている。
この上、宿泊を頼むのはあまりにも図々し過ぎないか?
そこについて悩んでいると
「お待たせ~」
真月の声がした。
ハッとする。
だいぶ長いこと悩んでいたようだ。
女性が入浴を終えて出てくるまでの時間が経つほどの。
留井と真月の2人は浴衣を着ていた。
薄い青色の、普通のあるあるな浴衣。
「次は殿方がどうぞ」
ヤクシニーがそう促す。
彼とて早く入浴したい気持ちはあったから。
「じゃあ、風呂に入って来るから」
そう言い残し。
彼は大部屋を出て、ヤクシニーの案内で風呂場に向かった。
ヤクシニーに案内された風呂場は。
広さはちょっとした銭湯ほどあった。
これだけの規模の建物の浴室であるから、当然かもしれない。
忍は脱衣所で手早く服を脱ぐ。
真月がどこの脱衣籠を使ったのかと考えつつ。
脱衣籠が入ったロッカーがたくさんある。
10個以上ある気がする。
そして服を脱ぎ、スラリとした筋肉がついたその身体をさらして
彼は浴室のドアを開けた。
そこには……
「ああ……これは広いな」
檜造りの湯船に。
板張りの床。
日本的浴室である。
浴槽は10人くらい一緒に入れそうなくらい大きい。
洗い場も複数ある感じで。
真月と2人だけだったら、一緒に入っても何も問題なかった。
ここの備品についてはタオルと石鹸があっただけでなく。
……どういうわけか設備として、水道とシャワーまであった。
彼としては便利なことが都合が悪いことはなく。
驚きはしたが、彼はそのまま近場にあった木の浴室椅子に腰を下ろし。
そのまま自分の身体を洗い始める。
そしてそのまま身体を洗い終え、髪を洗おうとしているときだった。
突如
「……佐上さん?」
脱衣所の方から、女の声が聞こえてきた。
その声に彼は聞き覚えがあった。
というより……
「留井さんですか?」
その声はどう考えても
自分達夫婦2人以外の3人目の人間。
留井の声であった。