真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

114 / 114
第114話 こんなはずでは

「何故お前がここに居る!?」

 

 アスタロトは声をあげていた。

 魔王アモンは人間界で、人間の手で封印された。

 そんな話を魔界で聞いた覚えがある。

 

 その後、解放されたという話は聞いてはいない。

 もしそうであるならば、魔界にそんな話が届くはず。

 

 すると、この異形の魔王は

 

「何故って……ここの精神の持ち主と今一体化しているからよ」

 

 さも当たり前の様子で、言ってのけたのだ。 

 

(……え?)

 

 全く予想していなかった。

 

 佐上忍は、魔王と合体を果たしたというのか……?

 

 魔王。

 悪魔の中で、最も強力な種族として数えられる種族の1つ。

 そんな悪魔と合体し、人としての意識を残す……

 

(あり得ない)

 

 彼は佐上忍が悪魔人間であると予想はしていたが、その合体相手は

 

 妖魔、妖精、魔獣、妖鬼

 

 そのあたり。

 比較的下位の悪魔を予想していたのだ。

 

 それが……魔王だという。

 

(馬鹿な……ヒトの精神が、最高位の悪魔の1つ『魔王』の精神に勝ったというのか……?)

 

 信じられなかった。

 だが

 

「動揺しているな? あり得んと思うか?」

 

 アモンは何故かやけに愉しそうにそう返して来る。

 だが、この場にアモンがいる理由はそれ以外、アスタロトには思い浮かばなかった。

 

 そのアモンの言葉に何も返せないアスタロト。

 アモンはさらに

 

「だからこそ愉しいのよ」

 

 ククク、と梟の顔で笑う。

 いや、嗤った。

 

 まさかそんな。

 いや、だからなのか……

 

 この精神世界最奥で、一切の改変が出来ないのは。

 

 その辺の一般悪魔ではない。

 魔王の精神に勝るような人間の精神世界だから……

 

 だから改変できないのか。

 

(まずい)

 

 アスタロトは危機感を感じていた。

 目論見と違っていた。

 

 悪魔人間は強力な存在である。

 人間の歴史上、神懸かり的力を持つ英雄、宗教家が存在した。

 それらの正体は実は悪魔人間。

 悪魔との合体に成功した人間だったのだ。

 

 だがそんな彼らも、合体相手になった悪魔はそれほど強力な悪魔では無かったはずだ。

 アスタロトは知らないのだから。

 

 だからこんなケースは考えていなかった。

 

 いくら強力な存在でも、精神世界に入ってしまえばこっちのもの。

 自分が危なくなることはあり得ない……

 

 そう思っていたのに。

 

(逃げなければ)

 

 そのとき

 

「お」

 

 アモンが何かに気づいた声を出した。

 アスタロトの血が凍った。 

 

 心当たりがあったからだ。

 それは…… 

 

「ひっ……」

 

 アスタロトが振り返った先。

 そこにはあの、緑色の戦士……佐上忍がいた。

 

 明らかに、アスタロトへの敵意を燃え上がらせながら。

 

 

 悪魔人間の強さは掛け算で、そして総合力である。

 掛け算である故、さほど強力ではない悪魔と合体を果たした人間であっても英雄や神の使いと称えられる存在になれる。

 

 この男の場合は……

 

 魔王と、空手の達人だ。

 

 掛け算の数字が双方大きすぎる。

 

 そんなものを相手にして、勝つ自信などアスタロトには無かった。

 

 だから 

 

「待て! 話し合おう!」

 

 アスタロトは手を前に突き出し、なんとかその敵意を納めようとする。

 思えば、何故この精神世界に兵隊が居ないのか?

 その理由が分かった。

 

 精神本体1人がいれば、それで十分だからだ。

 侵入者の撃退は、彼1人で事足りるからだ。

 

「勝手に踏み込んで悪かった! すぐに出ていく! 何ならお前の仲魔になってもいい!」

 

 そんな必死なアスタロトの言葉を。

 アモンはせせら笑うように 

 

「無駄だと思うぞ? この男は悪魔を基本的に憎んでて、見逃す理由がまず無いな」

 

「ここに踏み込んだ時点で、悪魔であるというだけでこの男の中では殺す理由になる」

 

 そう横から口を挟んでくる。

 文字通り、横になりながら。

 完全に他人事の調子で。

 

 戦って勝つことは難しい。

 そして会話による説得も不可能。

 ならばどうすればいいのか……?

 

 焦るアスタロトを前に。

 無情にも戦士は足を踏み出す。

 

 アスタロトに向かって。

 

 そのとき。

 アスタロトに閃くものがあった。

 

 追い詰められたその魔王は即座に行動を起こす。

 それは 

 

「忍! 私よ! やめてよ!」

 

 ……佐上真月の姿である。

 魔王は佐上真月に、彼の妻に変身したのだ。

 

 それは高校時代の彼女を意識しているのか。

 

 黒いセーラー服を身に纏っていた。

 高校生時代の真月。

 

 今とは違う輝きを備えたその姿。

 長く艶やかな黒髪。

 知性を感じさせる目。

 

 文句なしの美少女だ。

 

 アスタロトは思った。

 この男が妻を愛することは尋常なレベルではない。

 ならば妻の姿に変化すれば、やり過ごせるのではないか――?

 

 しかし

 

「……それも無駄だな」

 

 アモンは欠伸をしながらそう言った。

 そんな絶望的なこと……

 

 いや

 

「というより」

 

「それはもう、死にたいとしか思えん」

 

 ――死刑宣告を。

 

「ぐげえっ!」

 

 いきなり拳が飛んで来た。

 顔面、左頬に拳が食い込み。

 左側の歯が残らずへし折れたのを感じた。

 左フックの後、右のローキック、左ボディブロー、右の裏拳打ち下ろし――

 

 佐上忍は、高校生時代の妻の姿をしたものを一切の情け容赦なく殴り、蹴り、打ち付けた。

 

(どうしてだ……? お前は妻がとても大切なはず……!)

 

 理解できず。

 激しい嵐のように殴られ続けているアスタロトに

 

 目の前の緑の戦士・佐上忍は

 

『マツキノフリヲスルナゴキブリ! クセエンダヨガイチュウガ!』

 

 無機質だが、明らかな怒りの言葉を発した。

 

 その言葉で、アスタロトは理解するに至る。

 

 臭い……?

 私の変身魔法は完璧なはず……!

 

 佐上真月そのものの姿に変身できたはずなのだ。

 なのに何故、この男はそれを判別できるのだ……?

 精神体には、この自分の姿の見分けはできないはずなのに……!

 

 ここは精神世界。

 この世界の主にとっては、今の自分は佐上真月そのものなはず。

 だから目の前で変身したことがデメリットになったりはしないはずなのに――!

 

 何故だ、何故だ――!?

 

 魔王は確実に、破滅へと追い立てられていた――!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

真女神転生VV二次創作 牛蛇相克(作者:dwwyakata@2024)(原作:真・女神転生VVengeance)

既に滅びていた東京▼繁栄しているように見えるのは偽りの世界▼真の東京は砂漠に沈み▼そこでは敗戦処理と新たな世界の創造を巡る戦いが始まっていた▼長く覇権を握り続けた牛の系統▼長く辛酸をなめ続けた蛇の系統▼今その二者が、新たな時代の覇権を巡り動き出す。▼真女神転生VV二次創作▼牛蛇相克▼※感想評価などよろしくお願いいたします。励みになります。▼※自分の個人HPで…


総合評価:431/評価:8.82/連載:83話/更新日時:2026年06月25日(木) 19:00 小説情報

起きたら仁義なき転生、それから。(作者:函南)(原作:仁義なき戦い)

起きたら仁義なき戦いの世界にいた。そんな話。


総合評価:1922/評価:8.97/連載:28話/更新日時:2026年06月26日(金) 04:15 小説情報

ハスターなオリ主とドラゴンボール(作者:ラムセス_)(原作:ドラゴンボール)

旧支配者ハスターになった転生者が、ドラゴンボール世界に紛れ込んで滅びがちな人類の守護を頑張る話。▼拙作「ハスターなオリ主と米花町」のスピンオフ。▼なるべく本編を読まなくても読めるようにするつもり。▼本編「ハスターなオリ主と米花町」▼https://syosetu.org/novel/384972/


総合評価:7765/評価:8.13/完結:52話/更新日時:2026年06月07日(日) 20:41 小説情報

血しぶきハンター(作者:みこみこみー)(原作:HUNTER×HUNTER)

幾万もの悪夢の夜を繰り返したその果てに、月の魔物を屠り上位者と成った狩人は、流星街で目覚める。


総合評価:4910/評価:8.01/連載:11話/更新日時:2026年04月23日(木) 15:00 小説情報

東方仗助の能力を持って呪いの世界を生きる(作者:大腿四頭筋)(原作:呪術廻戦)

『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する東方仗助。そのスタンド能力「クレイジー・ダイヤモンド」によく似た術式に目覚めた転生者が闇を祓って闇を祓ってするお話。▼主人公最強ではないですが、対呪霊においては五条悟以上のチートになります。


総合評価:8516/評価:8.05/連載:11話/更新日時:2026年05月12日(火) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>