真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第115話 キジも鳴かずば

「忍……お願いやめて……助けて」

 

 アスタロトはなおも食い下がる。

 だが

 

『ダマレ! イキガクサイ!』

 

 その顔面に拳を叩きつけ、その鼻と前歯を全損させる。

 殴られたアスタロト真月の口から「プギャア」という悲鳴が洩れる。

 

『マツキノフリヲスルナ!』

 

 手刀が肩に食い込み、肩が砕ける。

 

『メノヒカリガキタナイ!』

 

 再びローキック。

 今度は足の骨がへし折れる。

 

 立てなくなり、その場に崩れ落ちる真月の姿に変化した、満身創痍のアスタロト。

 

『オマエノソンザイガマツキヲブジョクシテイル!』

 

『ブチコロシテヤル! カクゴシロ!』

 

(……無理だ。殺される……!)

 

 佐上真月に変身しても、アスタロトに理解できないような違いを察知され。

 

 見抜かれ。

 

 攻撃される。

 

 そこでふあああ、と再び欠伸交じりにアモンは言った。

 

「あきらめろ。お前はもう終わりだ」

 

 こんなつもりではなかった。

 人間の精神など脆弱で、それは悪魔人間とてたかが知れている。

 そう思っていたのに。

 

 身体中をボロボロにされ、脚の骨まで叩き折られ

 

 アスタロトは一部変身を解き、その背中に黄金の翼を出現させた。

 

 だが

 

 もう、遅かった。

 

『トリスインパクト!』

 

 その言葉はアスタロトに対する処刑宣言で。

 それと同時に

 

 拳では無く、脚が飛んで来た。

 

 魔力の籠った蹴り足が。

 振り蹴りであった。

 

「ぎゃああああああああ!」

 

 それをまともに脇腹に食らい。

 悲鳴をあげ、ぶっ飛ばされ。

 同時にアスタロトの変身が解除される。

 

「おお……! すごいな。蹴りでも鎧通しが出来るようになったのか。面白いな、人間……!」

 

 その様子を見物していたもう1人の魔王……魔王アモンは感嘆の声をあげる。

 理解できないのかもしれない。

 どのようにして足で鎧通しをやったのかを。

 

 トリスインパクト。

 アスタロトは理解していた。

 

 アリオクを倒したのもこの技であることを。

 

 そしてこれが究極合体魔法であることを――!

  

 その次の瞬間だった

 

「あああああ?」

 

 アスタロトの身体が燃え上がり、瞬く間に火だるまになる。

 魔法を吸収できるアスタロトが、無効化できない恐るべき一撃――!

 

「ではなアスタロト。お前とは長い付き合いであったが、悪魔の世界では別れも突然」

 

 アモンはそう、燃える魔王を冷たく見つめ

 

「さらばだ」

 

 完全に他人事。同情の欠片も見せず。

 アモンは炎上するアスタロトに向けて別れの言葉を口にした。

 

「ぐあああああああ!」

 

 アスタロトは地を這う姿勢で叫び続けた。

 

 

 ここでアスタロトの意識が途切れ……

 

 

 魔王は佐上忍の精神世界から、現実世界に戻って来ていた。

 

 だがその身体は燃え上がり続けている。

 

 魔法の炎のためか。

 館には全く何の影響も与えずに。

 

 そんな苦しむ魔王の目の前で

 

 佐上忍が何の問題も起きてないような顔で、寝息を立てている。

 

 

(……こいつに手を出さなければ良かった)

 

 

 こみ上げる後悔。

 負の感情。

 

 魔王である自分が

 人間にゴミのように倒されるだと……!

 

 魔法の炎は激しくなる。

 もう、自分の命は数秒持たない。

 

 

 それを自覚したとき

 

 

「ち……」

 

 

 魔王の喉から叫びが迸った。

 

 

「ちくしょおおおおおおおおお!!」

 

 

 それが魔王の最期の言葉になった。

 

 叫び声を残し魔王は一瞬の輝きになり

 そして跡形も残さずに世界から消滅した。

 

 

 

 そして次の朝が来た。

 佐上忍は普通に何事もなく朝を迎え。

 

 朝食をいただくために大部屋に向かうと。

 そこには真月しかおらず。

 

(あのクソ女どこに行ったんだ?)

 

 クソ女・留井がいつまで経っても姿を見せなかったのだ。 

 

「留井さん、どこに行ったんだろうね?」

 

 忍の隣で、野菜と味噌汁と魚と白飯の朝食を食べながら。

 真月は心配そうにそう呟く。

 

 気になったのでテングやヤクシニーに訊ねたら

 

「寝室がもぬけの殻ですワイ」

 

 そんな軽い返事が返って来た。

 

 もてなしを受けているから勘違いしてしまいがちだが。

 彼らにとっては別にどうでもいいということなのか。

 

(……何があったんだ?)

 

 出発の準備をしながら、忍は少し考えた。

 何故留井がいなくなったのか。

 

(俺の視界にいるのが気まずいから、夜の間にこの館を抜け出していったのか……?)

 

 まあ、それなら別に良い。

 自分も留井は嫌いである。

 二度と会いたくない気持ちだ。

 

 彼はそう思った。

 でも……

 

 もし、所謂神隠しのような目に遭ってしまった結果だとしたら。

 この館は空間を歪めて作っているとテングたちは言っていた気がする。

 ならばその可能性もあり得るのではないか?

 

 作られた空間の歪に、運悪く吸い込まれた……?

 

 それに関しては彼は「ざまあみろ」とは言えなかった。

 神隠しで次元の狭間に迷い込み、そこで一生を終えるなんて。

 

 人の死に方ではない気がしたから。

 

 いくら嫌いな人間であろうと、それを喜ぶのは何か違うだろう。

 

 

 

 そんな風に考えながら

 

 

 

「さあ、行こうか」

 

 彼はここまで乗りつけて来たサイドカーの準備を終えた。

 バイクに接続されている側車には、すでに真月が乗り込んでいる。

 彼女は言った。 

 

「OK、出して」

 

 今日は快晴である。

 絶好のツーリング日和だ。

 

(まあ、ツーリングじゃないけどな)

 

 そう独り思い。

 彼は運転に集中モードに移行し、エンジンをスタートさせ。

 六本木に向けて出発した。

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