真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第117話 六本木の支配者は

(危なかった)

 

 2人は我に返った。

 都会オーラにやられて、一瞬浮かれそうになったが。

 自分を取り戻した。

 

(これが東京の魔力ってやつか)

 

 東京はすごい。

 田舎者には刺激が強すぎる。

 

 建物の規模は日本一だ。

 

 日本には他にも大都市はあるが、東京はその比では無いのだ。

 

(気をつけないと)

 

 そう彼が自分に言い聞かせていると

 

「イザナミ様」

 

 真月がイザナミに何かを訊ねようとしていた。

 その言葉にイザナミは真月に視線を向ける。 

 

「なんじゃ?」

 

 真月がイザナミに訊ねようとしていたこと。

 それは

 

「……当面、この街で気を付けるべきことは?」

 

 確かに、一番に聞いておくべきことであった。

 この街が死人の街である以上は。

 

 イザナミは 

 

「そうじゃなぁ……」

 

 顎に人差し指を当てながら、注意点を列挙していく。

 

 それは

 

 

①ここの食べ物飲み物を口にするな。その土地の食物を口にするという行為は、そこの住人になるという魔術的意味合いが発生する。

 

②他人と会話するときは、意味合いに気をつける。特に「許可」を出すときは注意が必要。

 

 

「……パッと思いつくのはこのくらいかのう……すまぬな」

 

 腕を組みつつそう言うイザナミ。

 特に気をつけるのは①とのこと。

 

 なぜそうなのかは、古事記を知っていれば自明のことである。

 

「いえ、充分です。ありがとうございますイザナミ様」

 

 イザナミの言葉に頭を下げる真月。

 それに合わせるように、忍も続けて頭を下げる。  

 

「何。このくらい何でも無いわ」

 

 そして2人に頭を下げられたイザナミは、そう言って2人に堂々とした態度を見せた。

 

 

 

(まあ、とりあえずは情報収集だな)

 

 2人は六本木入りした後、まずディスコに入った。

 他の街で六本木の話を聞いたとき、ディスコが大盛況であるという話を聞いたのだ。

 行かない理由は無い。

 

 そして実際に中に入ってみると。

 凄まじい音量の音楽が鳴っていた。

 望まない人間を不快にするレベルの。 

 

 2人は顔を顰めていた。

 そこに

 

「……お前らこういうのは楽しまんのか?」

 

 イザナミがやって来た。

 イザナミは、何やら牛肉っぽい串焼きを食べていた。

 

(……その土地の食べ物を食べてはいけないのでは?)

 

 忍はその様子を見て思った。

 その思いが伝わったのか

 

「我は良いんじゃ。厳密に言えば死んでる状態じゃからな」

 

 そう言いつつ、ムシャムシャと美味しそうに食べている。

 

 確かにそうかもしれないが、複雑な思いであった。 

 

 ちなみにここ、フリードリンク、フリーフード制であり。

 希望者は自由に酒や肉が貰えるそうだ。

 

 もしかすると罠の意味があるのかもしれない。

 不用心な生者を死の世界に引き込むための――

 

 

「ぷはー、美味いのう」

 

 

 そんなことを考えている2人の傍で

 イザナミは幼女の姿のままで、ビールジョッキを干していた。

 

 大破壊前の世界だったら大問題である。

 

 

 

 さすがの真月も複雑な表情でイザナミを見る。

 ビジュアル的によろしくないために。

 

 だが、まあ

 

(……まあ、気にしないでおこう)

 

 別に咎めるものが居ないのだ。

 気にしなければ良い。

 

 

 2人は踊り狂ってる人や、壁際のトークスペースで会話に勤しんでる人に話しかけた。

 

 

「六本木は素晴らしい街よ! かつての幸せが全部ここにあるわ!」

 

「新宿のオザワの支配から逃げてきて正解! 税金も取られないしここは天国よ!」

 

「ここは赤と黒の2人の男性が支配しているの。その2人がこの街を復興させて、結界を張り、この素晴らしい街を作ってくれたのよ!」

 

「赤と黒の男性? ああ、赤伯爵と黒男爵のことね。赤伯爵は小太りのおっさん。黒男爵はガリガリのおっさん。で、ともに幼女趣味の変態。この一点でもうアレだよな」

 

「幼女?……ああ、あの2人な、金髪の外国人の幼女を自分たちの娘として可愛がっているんだよ。何なのかねぇ? 愛玩動物として人間の子供を飼ってるのかねあのペドたち? キモ」

 

 

 ……一部、散々なことを言われてる気がするが。

 

 まとめると。

 

 この街の権力者は赤伯爵と黒男爵という、2人の人物で。

 

 次の目的地……銀座に行く方法を訊ねるなら、この2人に会うのが一番良さそうである。

 

(さて……どうすれば会えるんだろうか?)

 

 そう思い、忍は

 

「真月、君はどう思う?」

 

 妻の意見を聞こうとする。

 真月は夫のその言葉に

 

「そうねぇ……」

 

 腕組し、真剣に思案して。

 

「まずは」

 

 彼女が思うところを夫に話そうとしたそのとき。 

 

「やあ、キミらも旅行者、それともここに移住希望者かな?」

 

 2人に、体格のいい男が声を掛けてきた。

 

 それは……

 

 モジャモジャした黒髪と太い眉。

 高身長で筋肉質。

 一目で元スポーツマンだったんだな、というのが分かる逞しい身体。

 顔は四角くて、特に顎が長方形と形容するのが良い感じの作りで。

 見るからに男臭い男。

 

 そんな男だった。

 

 男はにこやかに

 

「俺は鴨志田って言うんだけど、キミらは?」

 

 そう名乗る。

 

(……鴨志田……)

 

 忍はその名前に少し聞き覚えがあった。

 どこかで聞いた気がする。

 

 あまりよくある名字では無いのに。

 

 どこだろう、と少し考えたが

 

(……まぁ、今更どうでもいいか)

 

 そこは重要な事ではないはずだ。

 もしかしたら、犯罪者かもしれないが、違うかもしれない。

 今はそこをハッキリさせることは重要では無いだろう。

 

 なので

 

「あ、俺たちは夫婦で、佐上って言います。旅行者です。俺が忍でこっちが妻の」

 

「真月です」

 

 普通にそのまま、夫婦で名乗り返す。

 

 すると鴨志田は

 

「へぇ、綺麗な奥さんじゃん」

 

 そう言って、真月を褒めた。

 その言葉に忍は不愉快なものを感じる。

 

 男なので嗅覚が働いた。

 この男、真月に女を見ているな、という。

 

 男だからこそ感じる、自分のパートナーを狙う牡の気配を感じたのだ。

 

 だが

 

(実際に手を出そうとしていないわけだし)

 

 不快ではあったが、そう思って自分を納得させ

 

「……あなたは?」

 

 なるべく冷静に、そう訊ねた。

 情報は多い方が良い。

 

 その問いに鴨志田は

 

「俺は移住希望なんだよね。ここの住人になりたいんだよ。そのために……」

 

 じゃら、と彼は懐のポケットから何かを出して来た。

 

 それは……

 

「このヒランヤを、新宿に行って買ってきたんだ。これをあの子に差し出せば、この街の支配者に移住の件を取り次いで貰える」

 

 それは、六芒星のペンダントで。

 

 彼曰く、それがこの街の支配者……赤伯爵と黒男爵と会うためのキーになるらしい。

 

(なるほど)

 

 重要な情報である。

 

 あの子……なんとなくだが。

 赤伯爵と黒男爵が大切にしているという、金髪の幼女のことの気がした。

 

 新宿で買えるというヒランヤ。

 

 あの街では色々したから、どうしても必要になったなら引き返して買ってくるのも十分アリな選択である。

 

「ははぁ、なるほど」

 

 真月が感心したような声をあげる。

 鴨志田はそれを気を良くしたのか。

 

「キミらも移住希望なら、ヒランヤを買って来るんだな。決断は早い方が良いと思うぜ」

 

 そう言って、真月の肩に手を置こうとした。

 だがその前に

 

「ご親切にどうも」

 

 忍が事前に察知し、その邪魔になるように自分の立ち位置を変えた。

 鴨志田はそれに小さく

 

 チッ

 

 舌打ちをする。

 

(……いかれてんな、こいつ)

 

 他人の嫁に触れようとすることだけでも大問題なのに。

 それを果たせなかったからと不機嫌になるなんて。

 

 内心そう思いつつ

 

「それでは移住が上手く行けば良いですね」

 

 社交辞令でそう事務的に口にし。

 

「相手は魔法使いですから言動には気をつけてくださいね。こんな時代なんですから」

 

 真月も夫の後ろに隠れるように立ち。

 そう、一応の気遣いを口にして。

 

「じゃあそっちはそっちで頑張ってくれ」

 

 そう言って去っていく鴨志田を見送ったのだった。

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