真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第118話 鴨志田という男

「……気持ち悪い人だったね」

 

 鴨志田の姿が見えなくなってから。

 真月はポツリと呟いた。

 

 それに対して忍は

 

「怒った方が良かったか?」

 

 キミを触ろうとしたときに。

 その意味で問いかけたのだが

 

 真月は首を左右に振り

 

「……今の時代、意味もなく恨みを買うのは避けた方が良いでしょ。警察も法律も基本無いんだから」

 

 そう言って、夫の言葉を否定した。

 

 この時代は他者の恨みを買うのは命懸けである。

 肩が当たったからという理由でいきなり撃ち殺されても、罰するものがいないのだから。

 

 暫定政府が支配する京都は兎も角、ここはそういう世界なのだ。

 

「そうか。キミがそう思うならそれでいいよ」

 

 忍はそれでもう、このことについては触れないことに決め

 

 内心。

 

(……あのクソ野郎。大喜びで行ったけど)

 

(死ななきゃいいよな。さすがに)

 

 ……そう思った。

 

 この死者の街を支配する存在に嬉々として接触を試みていた男……鴨志田の身の安全を危惧したのだ。

 あの男はクズという直感に疑いは無いし、おそらく間違っていないだろうが。

 

 あまり人に対して「死んで当然だ」とは言いたくなかったから。 

 

 

 

 その鴨志田……鴨志田卓は。

 今、1人この街の支配者に取り次いでもらうため。

 

 この街の支配者たちの娘……アリスという金髪の幼女に会いに行っていた。

 

 アリスはどう見ても白人種の幼女で。

 容姿の整った子供であった。

 

 彼は偶然この六本木の街でアリスに出会ったとき、この子供こそ街の支配者の養女に違いないと見て

 

 どうか自分がこの街に永住できるように街の支配者にお願いして欲しい。

 そう頼み込んだ。

 

 そしてその幼女から「ヒランヤちょうだい!」と言われたとき。

 彼は自分は運が良いと思った。

 

 彼はヒランヤを売っているところを偶然知っていたのだ。

 新宿の街のジャンク屋で、商品として並んでいて。

 値段も常識外れでは無かったと知っていた。

 

 

 彼……鴨志田卓の大破壊前の人生は散々なものであった。

 

 

 彼は元々、バレーでオリンピックに出場し、金メダルを取得したアスリートであった。

 金メダルを取った彼は、その後しばらくテレビのバラエティ番組でトークの話を与えられていた。

 そこで、本職の芸人に及ばないもののその堂々とした態度である程度の数字を出し。

 

 数合わせのレベルは出ないものの、たまに呼ばれる程度の需要は確保していた。

 しかし

 

 あるとき、成り行きでテレビ局のADをやっていた女性と飲む機会があり。

 彼はそのADの女性を泥酔させて無理矢理関係を持ったのだ。

 

 その女性が、童顔で女子高生に見えたからだ。

 

 彼は女子高生が好きであった。

 高校時代の彼は、バレー一筋で恋愛をする時間が無かった反動かもしれない。

 女子高生を恋人にして、セックスしたいという欲望があったのだ。

 

 一晩明けて我に返った彼は、もう自分は終わりだと思った。

 

 けれども。

 

 ……なんと、テレビ局はそのことを揉み消したのだった。

 

 それは

 

 彼の出ていた番組は超人気番組で。

 その番組が「強姦魔が喋っていた番組」になると、下手すると終わってしまうかもしれないからだ。

 

 ADごときが泥酔レイプされたくらいで、そんな危険はおかせない。

 無かったことにすべき。

 

 それが、あまりにも腐った、テレビ局の判断であったのだ。

 

 その後の彼は番組から干されたが、その知名度だけは高かったので。

 そのツテで、今度は高校の体育教師の職を得た。

 

 そこで彼はバレー部の顧問を務め、あっという間にそのバレー部を強豪に育て上げた。

 

 すると、全国から優れた高校生が学校に集まるようになった。

 その中には女子高生も含まれていて。

 

 中には、抜群に可愛い子も当然いた。

 

 その結果――

 

 彼は立場を悪用し、数人と無理矢理関係を持ち。

 それが発覚。

 

 結果今度は彼は逮捕され、破滅するに至る。

 

 忍が彼のことをなんとなく聞き覚えがあると思ったのはこのせいであろう。

 元アスリートが犯罪を犯したと、当時は週刊誌のネタになったのだ。

 

 そんなこれまでの人生を振り返り、彼は思った。

 

(……俺様は全くツイていなかったが、逮捕されたお陰で東京におらず、その結果大破壊を生き延びた)

 

 そう。

 彼は東京の外の刑務所に収監された。

 そのせいで、彼は大破壊を免れた。

 

 元々彼は東京で住んでいた。

 もし女子高生を強姦しなければ、今の彼はここにいなかったかもしれない。

 

 あまりにも理不尽な。

 皮肉な結果であった。

 

 彼は笑みを深くする。

 ヒランヤの鎖を握りしめながら。

 

(そして今、こうして六本木で天国への階段を昇るチケットを手に入れた)

 

(塞翁が馬って奴だ。大破壊前は散々だったが、あとは登っていくだけだ)

 

 ニヤニヤしながら彼は歩く。

 さっき、極上の女を見かけたからちょっと触ろうとしたのに。

 旦那に邪魔された。

 

 ムカついたが、この自分が手にした幸福のチケットを思えばそんなことはどうでも良かった。

 

 そうこうしているうちに

 教えられた住所にあるビルを登り。

 

 辿り着いた。

 高級な装飾が成された扉の前に。

 

『アリスの部屋』

 

 とうとう、彼は辿り着いたのだった。

 彼に幸福のチケットをくれた、幸福への案内人のいる場所に。

 

 彼は息を吸い込み。

 気合を入れてノックした。

 

 すると

 

「入っていいよー」

 

 子供の明るい声がした。

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