真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
「えっと、あなたは人間ですか?」
少女の問いに真月はまずそこを訊ねた。
質問を質問で返すのは良くないのだが、どうしても先に知りたかったのだ。
彼女は真月の言葉に首を左右に振り
「いいえ違うわ」
ハッキリとそう返答した。
それには薄々と気づいてはいたが、言葉にされると衝撃がある。
目の前のこの少女は、ヒトに見えるがヒトではないのだ。
真月は次にこう訊いた。
「閉じ込められているのはそのせいですか?」
外では頭が悪魔のせいでおかしくなった、とは聞かされていた。
だがこの状況でそんな話を鵜吞みにするわけにはいかなかった。
目の前の少女は頭がおかしいとは思えない。
狂っているのは彼女ではなく、環境の方だろう。
真月のその問いには
「ある意味そうね」
少女は悲しそうにそう答える。
(……ある意味?)
どういうことだろうか……?
しかし
ここで真月は少女にある程度の安全性を見た。
なので
「私は佐上真月。日本の暫定政府の職員です」
「俺はその夫の忍です。よろしく」
その場の2人はようやく名を名乗る。
名前というものは重要である。ある程度の安心が無いのであれば、開示などできるはずがない。
だがその場にいるもう1人、イザナミはそれをじっと静観していた。
自分が口を出す問題では無いと思っているのか、何か迷いがあるのか。
そして
牢の中の少女はその2人の名乗りを聞き、2人の顔を見回して
「……暫定政府……核ミサイルが落ちたのに、まだ日本あるんですか?」
少しだけ、驚いた様子を見せた。
真月は頷き
「ええ。京都に中枢を移して限定的ですがキチンとした社会を復活させてます」
日本はまだ終わっていない。
そう返すと
少女は
「そっか……」
そう言った。
その顔には少しだけ、喜びが見えた気がした。
そして
「あたしは
それが彼女の名前で。
元々は、東京で高校生をしていた少女だったそう。
しかしあの日。
彼女は東京のど真ん中で大破壊に巻き込まれた。
そのとき彼女は
「……あたしは大破壊の日に、核ミサイルで黒焦げになって死んだんです」
それが彼女の真実であった。
「死んだ……?」
真月はその答えを繰り返すと
フツコは頷く。
そして続ける。
「この街の人間は全員そうなんです……全員死人」
この街の住人は全員死人である。
メシア教のニュースで既に聞いていたことであったが。
事実だと突きつけられると思うところはある。
表の人間たちは誰もかれも、本物の人間にしか見えなかった。
でも前情報、そしてこのフツコの話。
信じざるを得ない。
「それをやったのはこの街の支配者2人ですか……?」
真月はそこで、この死人の街を作り出した存在について訊ねる。
順当に考えて、この街の支配者がそうであるのが自然ではないか。
その真月の問いに
フツコは頷き。
「……この街を死者の街として復活させたのは、魔王ベリアルと堕天使ネビロスの2体の悪魔……この悪魔たちが、自分たちが死体から作り出した子供のアリスが寂しくないように作った街なんです……」
そう答える。
悲しみと怒りが籠った声で。
「あたしもそう……大破壊のときに死んだのに、あたしはここで屍鬼ボディコニアンとして蘇生されてしまったの」
屍鬼ボディコニアン……
生前生への執着が大きかった女性がゾンビ化したもので。
普通はゾンビ化すると大きく低下するはずの知能が、そのままにキープされている。
そして身体も腐敗せず、死んだときのままで存在し続けるのだ。
……ただ、ゾンビの宿命である人喰いの習性からは逃れられない。
そんな存在が「屍鬼ボディコニアン」なのだ。
「ボディコニアンなのはとても苦しい……他の人は全員人だったときのことを忘れてしまったのに、あたしは人としての記憶が消えなかったから……」
フツコはそう言って身を震わせる。
彼女は人が食べたくてたまらないらしい。
ボディコニアンの本能が、彼女に人肉を求めるのだ。
でも人として生きた記憶がそれを許さない。
だから彼女は、ここに監禁されることになったときに一切抵抗しなかった。
抵抗する理由が無かったからだ。
「……この街に来た人の何人かが、ここに辿り着いて私と話をした……」
彼女と会話した人間は真月たちだけではない。
これまでも何人か居たそうだ。
そのときに彼女はこの街の真実を教えた。
そして逆に
教えられたこともあった。
それは……
「反魂香……反魂香さえあればあたしは救われる」
メシア教の関係者がここを見つけたとき。
教えられたそうだ。
反魂香があれば、彼女は人として死に昇天することが出来ると。
反魂香とは、失われた人の命を冥府から呼び戻す力を持つお香だそうだ。
冥府から死者を呼び戻す力を利用して、冥府に旅立つ道を開くのだそう。
それだけが、彼女が楽になることが出来る唯一の方法なのだと。
メシア教の関係者がそう言ったらしい。
そんなことを彼女は苦しそうに語って
最後にこう言った。
「お願いあたしを楽にして」
とても、とても悲痛な表情で。