真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
フツコの話を聞き。
真月は酷い話だと思った。
ヒトの意識を持ったまま、人喰いゾンビにされてしまうなんて。
地獄に決まっている。
腹が減ったからヒトを食べました。
衝動が抑えられなかったんだ。
仕方ないんだ。
で、済むわけがない。
だからこそ、彼女はこの牢獄への幽閉を望んでいるのだ。
その証拠に彼女は「この牢屋から出してくれ」とは一言も言わなかったではないか。
真月は思う。
(この子から役立つ情報をたくさんもらった)
(正直、この子をここに置いていくことには抵抗があるわよね)
自分達は反魂香なんてアイテムを持ってはいない。
だから彼女の願いを叶えることはできない。
とはいえ……
それを理由に、彼女を放置して先に進むのは許されない気がした。
何か無いだろうか……?
他に方法は、何かないのだろうか……?
1つの事象について、解決策はたった1つしかないなんて。
そんなわけはないのだ。
(考えろ……考えるのよ私)
そう思いながら、腕を組み思考を巡らせる。
そのとき。
ふと、彼女の脳裏に。
あのガイア教徒の夫婦のことが思い出された。
あの夫婦の夫は凄腕の悪魔使いで。
頻繁に召喚しているのは霊獣コウである。
霊獣コウは神仏の乗り物を務める強力な悪魔であるが
コウは人喰いの化け物であるキョウシの成れの果てなのだ。
屍鬼から霊獣に進化してもそこは変わらない。
なのでコウ自身も、本来は人を好んで食べる。
あの夫婦の夫は、そこをどうクリアしているのか?
やはり「人を襲ってはいけない」と言っているのだろうか?
真月はそれは無いような気がした。
何故なら、そんな命令をすると対人戦のときに困ることになる。
攻撃できなくなるではないか。
でもだからと言って
好きなだけ好きに人を喰え。
……そんなことを言っているわけがない。
あの男はそういう男には見えなかった。
京都を攻めたときも、犠牲者が出ないように配慮をしていた男なのだ。
ここでさらに真月は気づく。
自分の仲魔である魔王マーラのことを。
あの魔王は人間を性的に玩具にすることにたまらない喜びを感じる邪悪な悪魔だ。
だが、真月の仲魔になってからは勝手な振る舞いをしたことが無かった。
勝手に洗脳を使用して、人間を玩具にするようなことはせず。
真月が命じたこと以外、余計なことをしなかった。
つまり、何も問題を起こしていないのだ。
悪魔召喚に関わる契約同意書には、その契約内容に「召喚者に絶対服従」とあるのみで、人間を傷つけるな、とは書かれていない。
彼女は今の今まで、そこを真剣に考えては来なかった。
しかし、召喚者に絶対服従を誓っているのだ。
ならばそれが意味するところは……
閃くものがあった。
「あのさ」
そこで真月は彼女……フツコに切り出した。
ひとつ、思うところがあったのだ。
それは
「……はい?」
牢獄の中のフツコは何だろう? と言う感じで返事をする。
真月は切り出す。
「……私と悪魔召喚契約をしてみない? 多分、その食人衝動、だいぶ楽になると思う……」
――悪魔召喚契約を。
彼女の見解はこうであった。
悪魔召喚契約を結ぶと、悪魔が召喚者にとって都合の悪いことはできなくなるのではないか?
勝手に人間を襲うとか、洗脳を仕掛けるとか。
何故なら、それで召喚者の都合が悪くなると、絶対服従とは呼べないからだ。
言われた以上のことはしてはいけない。
それが絶対服従ということではないのか?
だとすれは、ボディコニアンの食人衝動も抑えることができるかもしれない。
勝手に人を喰らうようでは、召喚者に服従しているとは呼べないでは無いか、と。
その説明はフツコに希望を与えた。
彼女とて、本当は死にたいわけではない。
死なずに問題解決できるなら、当然そっちの方が良いに決まってる。
だから
「お願いします」
フツコはそう言って、真月に頭を下げた。
真月はその言葉を聞き、素早くアームターミナルのキーボードを叩き、その場に悪魔召喚契約の契約同意書を映像として牢獄内の空中に投影する。
「ここの欄にあなたの名前をサインして」
真月はそこで、契約同意書の空欄の位置を指差し示す。
フツコは頷き、そこに「
その瞬間だった。
(あっ)
彼女が内心感じていた、目の前の人間たち……忍と真月に対する食欲が急激に収まっていくのを感じた。
まるで燃え盛っていた炎が、鎮火していくように。
さっきまでは真月を見て「なんて美味しそうな女の人」って思っていた気持ち。
彼女の腕や太腿を見て「良い感じの肉付き」「食べたら止まらなくなりそう」なんて
恐ろしい妄想が消えて行く。
それを感じたとき
フツコは涙を流していた。
「えっと」
彼女のこれからの主人である真月が、彼女の涙を見て困惑していた。
何故彼女が泣いたのか理解できなかったのかもしれない。
彼女の言葉、話し方から考えて、相当知的レベルの高い女性だと思ったのだが。
そこが何だか少しおかしかった。
そして彼女は微笑み
「あたしは
真月の仲魔として。
その最初の挨拶を口にして。
牢獄の中で一礼したのだった。