真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
ネビロスは彼の使い魔たるゾンビ兵たちが倒されたことを知った。
彼はそのとき、己の血が凍る感覚というものを初めて実感する。
(まずい! アリスが六本木の外に出てしまう!)
アリスは彼が命を与えたアンデッドで。
アリスの命は六本木の中でしか永らえることが出来ない。
仮に出たとしたら、アリスは数分で死体に戻る。
そういう風になっているのである。
だから出してはいけないのだ。
死んでしまっても、また蘇生させればいいのではないか?
前に、ベリアルが彼にそう言ったことがある。
アリスが前に「どうしても外に出たい」と言い出したときだ。
そのとき彼はこう言った。
蘇生して蘇るアリスは、今のアリスとはまた違う別のアリスだ、と。
アリスは元々、名も知らない白人の少女の死体をベースに、足りない部品を他の死体から補って作り出したアンデッドなのだ。
名前も彼らがつけた。
普通のアンデッドには生前というものがある。
だが、アリスにはそんなものは存在しない。
アリスはいわば、生まれたときからアンデッドである。
なので蘇生を掛けたとしても、蘇るのは同じアリスではないのだと。
彼はそのとき熱弁し。
ベリアルを納得させ、アリスの我儘を一緒に諦めさせてくれた。
(どこの誰だ!?)
ゾンビたちの言葉では、それは男と女らしい。
それ以上の情報は、今は考えている時間が無い。
速やかに彼は、ベリアルに念話を飛ばした。
『……なんだネビロスよ』
すぐさま返信がある。
ネビロスは速やかに要件を伝える。
『大変だ! アリスが六本木を出てしまう!』
必死である。
その彼の言葉は
『……なんだと!?』
すぐさまベリアルに伝わった。
ベリアルの動揺と、焦りと、恐怖が伝わってくる。
それが意味することを彼は十分に理解していた。
『すぐに私が追いかける! 何か不都合が起きるかもしれないが、後のことはよろしく頼むぞ!』
『場所はどこだ!?』
『西側出入り口周辺だ!』
あまりグダグダ念話している時間など無い。
彼はその、最低限の情報だけ伝え念話を切った。
西側出入り口……
この街は、そこに限ったことではないが
地下道を通らねば外に出ることはできない構造だ。
ならば、やることは決まっている。
……彼は地下道に存在しているアンデッドたちに、侵入者の足止めを命じ。
それと並行して……
この六本木の街を覆う結界を解除した。
六本木入りに使った地下道は、来るときは屍鬼コープス1体に遭遇しただけであったが。
今は
「オオオオオオオオ」
「トオサナイ……トオサナイ……」
真月が手に持つライトの先。
そこに犇く人影。
拳銃やライフル銃などの銃器を握った、ほぼ白骨化した警官や兵士たち。
屍鬼ゾンビコップに屍鬼ゾンビアーミー。
彼らは銃器をこちらに向けてくる。
だが
(撃てるわけ無いわよね)
そう。
彼らは銃口を向けるだけで撃って来ない。
撃てばアリスに当たるかもしれない。
だからこれは脅しなのだ。
なんのための?
それは……
「イザナミ様!」
「任せい!」
真月の言葉に応じ。
イザナミはゾンビコップとゾンビアーミーの集団に突っ込んでいく。
そしてそこで
黒い稲妻が閃いた。
その稲妻でゾンビたちが全て倒されるのに掛かる時間が僅か数分。
そしてその間
「……どうしてあの人たち、アリスの邪魔するの?」
困惑するアリス。
「さあ、どうしてかしらね?」
真月はその彼女にそう返す。
アリスはゾンビたちを目にしても、怯えもせず、パニックにもならず。
平然としていた。
この幼女が普通では無いことが見て取れた。
(この子にとってはゾンビが普通なのね)
真月は自分が手を引いている幼女の正体を肌で感じ取る。
この幼女は……
「あの人たち、アリスの友達なんだよ……? アリスのためにおじさんたちが作ってくれたアリスのお友達……」
ゾンビが友達。
真月はそこで、この幼女の認識を理解した。
見た目は愛らしい幼女であるが。
中の魂はそうではない。
それを自覚しつつ真月は
イザナミがゾンビを一掃して通りやすくなった地下道を
「……出口よ。ここから先は、六本木じゃない」
突き進み、そして階段を駆け上がり……
その先で
「……そうはさせませんよ。人間ども。よくもやってくれましたね」
階段を上がった先に。
悪魔たちが居た。
赤いローブを身に纏った、灰色の骸骨みたいに痩せた男性型悪魔が。
堕天使ネビロス。
そして
「貴様たち……絶対に許さぬぞ」
身長は4メートルくらい。
人型の、直立歩行をしている人面の赤い恐竜。
手には三又の矛を持ち、背中には恐竜の背びれみたいな2枚の翼を生やしている悪魔。
魔王ベリアル。
魔王ベリアルはやせ細っていた。
明らかに。
魔王にしては明らかに貧相だった。
これはおそらく、六本木を出た代償であると真月は考えた。
六本木に居る限り無敵になるなら、六本木を出た場合に弱体化が掛かるのは当然のことである。
「……我々はその子のために、破壊された六本木を復興させ、人々の魂を集め、アリスの活力と街の繁栄を維持し……必死に努力を重ねて来たのですよ」
「すべてはアリスの幸せのため……その我々の真の愛を壊そうとする痴れ者め。思い知らせてくれる……!」
悪魔たちの声は純粋な怒りと憎悪。
そして自分たちの力への自信。
身の程知らずの人間への侮蔑と加虐心に満ちていた。
だが真月は平然と
「何が真の愛よ。人の魂を奪い、人間を踏みにじっておいて冗談を言わないで」
そう、きっぱりと言い返した。
人を殺し、踏みにじる愛など
人間が認めるわけにはいかない。
だがベリアルはその言葉に
「何を言った土塊ェ……? 我らの愛を、アリスへの真の愛を侮辱するのか貴様……? くだらぬ、同じ種族間で憎み合い、ときには肉親でも蔑み合うような愚かな生き物の分際で」
怒りに身を震わせる。
下等生物に自分たちの愛を否定された。
それは魔王にとって我慢ならないもので
だが、しかし
「そんな愚かな生き物の信仰や命を何より欲しがる害虫の分際で吠えるわね。それに生憎、私の世界ではそういう争いは無縁なの。だから私は……」
真月は一歩も引かなかった。
一歩も引かず、イザナミにそっと左手を差し出す。
後ろ手にならないように気をつけて。
後ろ手は運気を下げる。
それは駄目だ。
そんなこと……
これから行われる、人から悪魔に対する裁きに相応しくない!
彼女はイザナミが自分から不足分のマグネタイトを吸い出すのを感じながら
「あなたたちを、排除するッ!」
そう宣言し。
同時に。
真月はアリスの手を握っていた右手を離し、流れるようにアームターミナルにコマンドを打ち込んだ。
『DEMON KING SUMMON』